ホーム ビジネス トランプ陣営の意向を受けて、Facebookなどのファクトチェックと多様性プラグラムを方針転換

トランプ陣営の意向を受けて、Facebookなどのファクトチェックと多様性プラグラムを方針転換

この記事のサマリー

  • メタ社がファクトチェックの廃止と多様性プログラムの中止に方針転換
  • アマゾンやマクドナルドなど有名企業が続々と多様性への取り組みを縮小
  • 多様性やLGBTへの取り組みによっては、不買運動や炎上騒ぎにつながるケースも

目次

画像出典:RNZ News “Meta dumps fact checkers, Zuckerberg admits more harmful content on the way”

2024年11月の大統領選を勝ち抜き、2025年1月20日に第47代アメリカ大統領として二期目をむかえたドナルド・トランプ氏。

トランプ新政権が発足する直前の1月上旬に、FacebookやInstagramを運営するメタ社は「ファクトチェックの廃止」と「多様性(ダイバーシティ)プログラムの中止」という、いわばトランプ陣営にすり寄るような方針転換を行いました。

以下、上記2つの方針転換について解説したあと、多様性をめぐる他の企業の動きを見ていきましょう。

画像出典:PBS News “Live updates: Donald Trump’s 2025 Inauguration Day”

ファクトチェックを廃止に

メタ社は2025年1月7日、FacebookやInstagramで投稿内容の正確性を調べるためのファクトチェック(外部のファクトチェック団体による検閲のしくみ)を廃止すると発表しました。今後はアメリカを皮切りに、X(旧Twitter)で用いられているような正確性に関するコメントをユーザーに委ねる「コミュニティノート」というしくみに置き換えるとのことです。

以前からトランプ陣営は、メタ社のファクトチェックは右派の声に対する検閲だと批判してきました。メタ社のCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏はトランプ氏との関係改善を模索していることから、今回の方針転換がなされたものと考えられます。トランプ氏もこの決定に対して、メタ社が「大きな進歩を遂げた」と発言し、歓迎の意を示しました。

トランプ氏とザッカーバーグ氏との因縁は、2021年1月の議事堂襲撃事件を受けて、当時大統領だったトランプ氏のFacebookとInstagramのアカウントが凍結されたことにはじまります。2年後の2023年1月に凍結は解除されたものの、規約に違反すると最大2年間、再び凍結される恐れがあるなど、厳しい制限が残っていました。

その後、2024年7月にトランプ前大統領のアカウントにかけている制限を解除すると発表。11月の大統領選に向けて、候補者を平等に扱うべきだと判断したことが理由でした。しかし、これは表向きであって、トランプ勝利の予想が大きくなる中で、「もしトランプ氏が大統領になったら、メタ社に対して強い圧力がかけられるのでは」ということを懸念したのが本音だと考えられます。

実際に、トランプ氏は「終身刑」をちらつかせてザッカーバーグ氏を威嚇した経緯があります。ザッカーバーグ氏は8月に、バイデン政権から新型コロナ関連のコンテンツについて「検閲の圧力」があったと主張。さらに、大統領選後にトランプ氏の大統領就任式の基金に100万ドルを寄付することを明らかにしています。

多様性(ダイバーシティ)プログラムを中止に

さらに、メタ社の人事担当副社長であるジャネル・ゲイル氏は1月10日に、社内で多様性を促進するための取り組み(ダイバーシティ・スレート・アプローチ)を中止することを、従業員向けの社内メモで発表しました。

ダイバーシティ・スレート・アプローチは「多様性を考慮して候補者をえらび、さらなる多様性につなげていく」ことで、採用担当者が女性やマイノリティである候補者を提案できるようにするプログラムでした。ゲイル氏はこのプログラムを廃止と、DEI(多様性、公平性、包括性)に特化したチームの廃止を伝えました。

理由として「DEIの取り組みを取り巻くアメリカの法的および政策的状況は変化している」と説明していますが、これはトランプ氏が1月20日に大統領に就任し、これまでとは異なる政策を進めることを想定したものでしょう。

企業には「多様性」へのスタンスが問われる時代に

Facebookの方針転換に先立つ2024年12月に、アマゾンでは包括的体験と技術を担当するキャンディ・キャッスルベリー副社長からの社内メモで、社内人材の多様性を確保するためのDEIプログラムを2024年末までに終了すると伝えました。

マクドナルドも1月6日にDEIプログラムの一部を中止すると発表しました。具体的には、供給業者に特定のDEI目標の達成を求めることや、企業の多様性を測定する外部調査への参加を中止するとのことです。ウォルマート、ボーイング、フォード、ハーレーダビッドソンなども多様性への取り組みを縮小または撤回しています。

アメリカでは、2020年に黒人男性のジョージ・フロイド氏が警察に殺害された事件を受けて各地で起きた「Black Lives Matter」運動を受けて、多くの企業が多様性への取り組みを開始しました。しかし、最近ではこうしたいわゆる「多様性プログラム」や「DEIプログラム」が「差別的」で、「言論の自由を侵害している」という批判が高まっており、司法の場でもそれを支持する判決が出されています。

たとえば連邦最高裁は2023年に、私立大学が入試の合否決定において受験者の人種を考慮する権利(アファーマティブ・アクション)に違憲判決を下しました。つまり、人種によって試験の点数を調整するなどの行為を禁じたことになります。また、巡回区控訴裁判所は2024年12月、大手証券取引所ナスダックが上場企業に女性やマイノリティーの取締役を少なくとも1人は求める多様性ルールは無効と判断しました。

民主党から共和党へと政権の担い手が変わり、グローバリズムから自国ファーストへ、多様性重視から伝統重視へと大きく舵が切られる中で、各企業の「多様性」へのスタンスがあらためて問われています。

多様性やLGBT問題は、企業の売上にも大きく影響

企業の売上不振にも多様性問題が影響しています。たとえば、次のような不買運動や炎上騒ぎがありました。

  • ビール会社大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)の主力ビール「バドライト」が、ビール市場で売上3位に転落。バドライトは2023年、トランスジェンダーのインフルエンサー、ディラン・マルバニーをTikTok広告に起用したことを理由に不買運動が起き、売上トップの座から陥落。この影響が依然として続いていることがあらためて浮き彫りに。
  • 小売大手チェーンのターゲット(Target)が、不買運動と嫌がらせに屈するかたちで、6月のプライド月間(各地でLGBTの権利を啓発する活動やイベントが実施される月)に合わせて用意していた関連商品の一部の販売を中止すると発表。
    ターゲットは2016年にいち早く「ジェンダーニュートラル」なトイレを作るなど、LGBTに寄り添う方針を明確にしていましたが、宗教右派や保守層のインフルエンサーなどが実店舗に押しかけ、客やスタッフに嫌がらせをするなどの事件が続いていました。
  • ディズニー創立100周年記念作品の実写版『リトル・マーメイド』では、主人公のキャラクターであるアリエルを、アフリカ系にルーツを持つ黒人歌手ハリー・ベイリーが演じたことが話題になり、一部で大きく批判されました。白人キャラクターを黒人に演じさせることは、ディズニー側の過度なポリティカルコレクトネスだとする意見が代表的です。
    ディズニーは、これまでもリメイク作品でキャラクターの人種変更「カラー・ブラインド・キャスティング」を行っています。しかし、黒人以外のキャラクターを黒人に演じさせることは「ブラック・ウォッシング」、白人以外のキャラクターを白人に演じさせることは「ホワイト・ウォッシング」と呼ばれ、かえって冷ややかな視線を向けられたり、批判の対象になったりしています。

このように、ある企業が多様性やLGBTに「過度に配慮している」と消費者が考えた場合、また、それらの方針によって自分たちの権利が侵されていると不満をつのらせた場合、不買運動や炎上騒ぎに発展し、ブランドイメージが大きく損なわれ、売上不振などに陥る可能性すらあるのです。

まとめ

以上、メタ社の「ファクトチェックの廃止」と「多様性(ダイバーシティ)プログラムの中止」という方針転換と、多様性をめぐるさまざまな企業の動きについて解説しました。

メタ社やアマゾン、マクドナルドなどが多様性プログラムを廃止する一方、アップルやコストコは継続を宣言しています。

保守系シンクタンク「全米公共政策研究センター(NCPPR)」がアップルやコストコの株主に対し、Appleの多様性プログラムは「ほとんどの企業と同様か、それ以上に過激だ」として打ち切りを提案していますが、両企業ともこれに反発。年次株主総会で反対票を投じるように推奨しています。

このように、各企業の多様性へのスタンスは一様ではありません。

トランプ政権の成立以降、政府としての多様性に関する施策と、各企業の対応の変化を注視していきましょう。

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