ホーム ビジネス アメリカでTikTokが利用禁止に! 政治とSNSの関係と、SNSをめぐる国際的な影響を考える

アメリカでTikTokが利用禁止に! 政治とSNSの関係と、SNSをめぐる国際的な影響を考える

この記事のサマリー

  • アメリカでは2025年1月19日以降、TikTokが実質的に利用禁止に
  • 過去数年にわたって、アメリカ政府はTikTokに対して厳しい姿勢だった
  • 各国のプライバシーに対するスタンスの違いが、国際問題の原因となることも

目次

日本のメディアでも、アメリカで中国発の動画投稿アプリ「TikTok」が利用禁止になったことが話題となっています。

共和党のトランプ新政権による中国への強硬路線の表れと思いきや、実はバイデン政権の時代から過去数年にわたって、TikTokに対して厳しい姿勢を保ち続けています。

それでは、アメリカでのTikTok禁止までの経緯を見たあと、政治とSNSの関係をあらためて整理しましょう。

アメリカでのTikTok禁止までの経緯

TikTokは、アメリカで若年層を中心に1億7,000万人を超えるユーザーがいるとされます。アメリカ国民の情報が中国政府と共有される恐れがあるなどとして、TikTokに対する警戒感が年々強まっていました。

2020年代に入り、アメリカでは中国製の電子機器(ファーウェイなど)の利用禁止を進めてきましたが、同様にTikTokについても一般ユーザーを含めて実質的に利用禁止となりました

以下、これまでの経緯を見てみましょう。

2023年2月、公用端末で利用禁止に

中国が法律で企業などに情報収集活動への協力を義務づけていることから、2023年2月27日以降、米連邦政府職員に対し、政府支給の携帯電話などからTikTokを削除するよう命じました。米下院は2022年12月に、TikTokの利用禁止について政府に60日以内にその旨の命令を出すよう定めた法案を可決。それを受けての公用端末での利用禁止措置でした。

同様に、カナダは2月28日から、政府端末でのTikTokの利用を禁止。EUの欧州議会も職員の携帯電話でのTikTokの利用を禁止しました(欧州委員会とEU理事会ではすでに前週に禁止)。

2024年4月、国内事業を売却しなければ利用禁止に

米議会では2024年4月に、TikTokの親会社「バイトダンス」が、アメリカでの事業を期限内に売却しなければ、国内でのアプリの配信などを禁止するとした法律が超党派の賛成多数で可決され、バイデン大統領の署名を経て成立しました。

バイトダンス側は、表現の自由を侵害し、憲法に違反しているとして差し止めを求める訴えを起こしましたが、12月上旬、連邦控訴裁判所は、法律は憲法と照らしあわせても問題がないという判断を示し、訴えを退けました。その後、連邦最高裁判所に法律の発効を一時的に差し止めるよう求めたものの、2025年1月17日に退けられました。

2025年1月、法律が発効。アプリが利用できない状態に

上記の法律が2025年1月19日に発効。TikTokは前日の1月18日、アメリカ国内の利用者に向けてアプリの運用を一時的に停止すると通知し、アメリカ国内では実質的にアプリをダウンロードできない状態となっています。

アプリの配信プラットフォームであるAppleやGoogleは、TikTokをダウンロード可能な状態にし続けていると、巨額の罰金を科されることになります。実際にそれぞれのストアで検索しても、TikTokは表示されなくなっています

画像出典:NHK WEB「TikTok “米国内でアプリ利用できない状態” 現地メディア」

あらためて考えたい、政治とSNSの関係

SNSの普及によって、各国政府は情報の拡散、国民の意見形成、政治活動について大きな影響を受けるようになりました。政府側はSNSに対して規制や監視の必要性を検討する一方で、SNSを政治的な目的のために活用することもあります。

具体的に、次の6つの観点から政府とSNSの関係を考えてみましょう。

1. 情報統制と検閲

政府は、SNSを通じて拡散される情報を管理しようとすることがあります。特に反政府運動や過激派の活動について、政府は情報を監視・制限したり、特定のアカウントの削除を要請したりすることがあります。中国の「WeChat(微信)」や「Weibo(微博)」などのSNSに対する中国政府の規制は強く、言論の自由が制限されています。

2. 選挙活動と政治的利用

SNSは、政府や政治団体、政治家個人にとって、政治活動、選挙活動、政策をアピールするのための重要な手段となっています。SNSは有権者に直接リーチできること、拡散力が高いことが、上記のような目的でSNSを利用する理由です。同様に、YouTube動画の配信や番組出演にも積極的な政治家が増えています。

日本では2013年4月から「ネット選挙」が解禁され(公職選挙法の改正)、候補者が選挙活動にインターネットを利用できるようになりました。投票日の前日までSNSやYouTubeで情報発信できることはもちろん、普段から有権者に日ごろの活動や考え方をアピールしたり、情報収集や意見形成に役立てたり、といった活用が可能です。

3. フェイクニュースと情報操作

SNSでは情報が急速に広がるため、誤った情報やフェイクニュースが拡散されることが問題視されています。政府や政治団体は、SNSを情報操作やプロパガンダの手段として利用することもあります。また、特に選挙時などにSNSを通じて他国からの干渉が行われるケースもあります。

国内に目を向けると、2024年12月の兵庫県知事選挙では、斎藤元知事が再選を果たすことになりましたが、これにはSNSの影響が大きかったといわれています。選挙期間中もパワハラ疑惑でマスコミから叩かれ続けていた斎藤氏ですが、世間に流布された情報のうちかなりの部分が、実は誤りだったのではないかとSNSで話題となりました。

NHKから国民を守る党の立花孝志党首が、自身が立候補しながらも、「斎藤さんの応援をする、自分の当選を目指さない」と公言する異例の選挙戦を展開。このことがSNSでさらに話題となり、結果として斎藤氏が当選を果たしました。

4. 監視とプライバシー問題

SNSを通じて明らかにされる個人情報は、政府による監視やデータ収集の一環として利用されることがありえます。たとえば、テロ対策や治安維持の名目で、政府がSNSから得られる情報を監視・分析することがあります。これらが、個人のプライバシー侵害として批判されることもあります。

政府によるSNSの監視に関するスタンスは、国によって異なります。アメリカやヨーロッパ諸国では、プライバシー保護に関する厳しい法律(たとえばEUの「一般データ保護規則」、アメリカ各州の消費者データ保護法)が存在し、ユーザーの権利を守るために企業や政府に制限が課されています。一方、中国やロシアなど一部の国では、政府がSNSを厳しく監視し、反政府的な発言を取り締まる傾向があります。

5. 規制と法律の整備

多くの国では、SNSに対する規制を強化するための法整備が進んでいます。EUの「一般データ保護規則(GDPR)」では、SNSプラットフォームを含む企業が、ユーザーの個人データをどのように扱うかについて厳しいルールを求めています。さらに、SNSプラットフォームが違法コンテンツの削除を怠った場合に、罰則を科すような法律も増えてきています。

日本では「プロバイダ責任制限法」にもとづき、SNSプラットフォームの運営者に一定の責任が課されています。なお、プロバイダ責任制限法は、新たに「情報流通プラットフォーム対処法」として2025年5月から施行予定です。

6. 国際的な影響

SNSでは情報が国境を越えて伝播されるため、他国政府とプラットフォームの間での協力や摩擦が生じることがあります。たとえば、インターネット上の情報監視や検閲を強化したいという国々は、SNSプラットフォームに対して厳しい要求をするでしょう。一方、言論の自由を重視する国々では、過度の規制や監視・検閲に反対する声が強いといえます。

外交上、ある国が別の国をおとしめたいと考えている場合、自国民を使ってSNSにヘイト的な書き込みを大量にさせる、あるいは、自国民に対してその国に関するフェイク情報を大量に流す、といったケースもあります。

また、今回のTikTokのケースでは、アプリがスパイウェアとなって、アメリカ国民のスマートフォン内の情報を抜き取り、中国政府に送信している疑いがあるため、政府が規制に踏み切ったのが事の本質です。このように、各国の個人データやプライバシーに対するスタンスの違いから、SNSをきっかけに国際問題にまで発展することもあるのです。

まとめ

以上、アメリカでのTikTok禁止についてまとめたあと、政府とSNSの関係を考えてみました。

2025年2月3日、トランプ大統領は新たな政府系ファンドの創設を命じる大統領令に署名し、このファンドがTikTokのアメリカ事業の買収に関与する可能性に触れました。1月19日以降、TikTokの利用は停止されていますが、その法律の執行措置を75日間とらないように命じる大統領令にも署名。あらためて、TikTokの親会社「バイトダンス」に対して、アメリカ事業の売却などの対応を検討するよう促しています

このように、トランプ第二次政権の発足以降、対中国への姿勢がますます厳しくなっています。トランプ大統領は2月4日に、中国からの輸入品に10%の追加関税を発動。さらなる引き上げも検討するなど、米中の貿易戦争が再燃しています。

トランプ陣営の要職の中には、2022年10月にX(旧Twitter)を買収したイーロン・マスクもいます。まさに、アメリカ政府によって、SNSの勢力図が大きく変わろうとしています。

今後もトランプ新政権と、SNSプラットフォームの動向に注目しましょう。

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