先日の記事 Google検索の「AI Overview」とは？ 検索流入の減少やコンテンツ制作面の変化に対応しよう では、AI Overview（AIによる概要）の全体像を解説しました。

ウェブコンテンツの制作上、AI Overviewへの有効な対策のひとつとして、対話形式やQ&Aコンテンツの活用を挙げましたが、「音声検索への対策と共通するのではないか」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか？

AI Overviewと音声検索は、どちらも検索体験の変化、つまり、ユーザーが検索を通じて情報を得る方法が大きく変わってることを示すものですが、これらの対策には多くの共通点がある一方で、異なる点も存在します。

以下では、AI Overviewと音声検索の共通点と異なる点を解説します。

AI Overviewと音声検索の共通点

1. 直接的で簡潔な回答

• AI Overview
  ユーザーのクエリ（検索キーワード）に対して、もっとも関連性の高い情報を抽出し、簡潔に要約して提示します。回りくどい表現は避けられ、直接的な回答が求められます。

• 音声検索
  ユーザーが口頭で質問するため、要点を押さえた端的な回答が好まれます。長い説明や複雑な構造は音声アシスタントには不向きです。

• 共通点
  どちらも、ユーザーの疑問に対して、相手を迷わせることのない明確な答えを提供することを志向しています。たとえば、コンテンツの冒頭で結論を示したり、対話形式やQ&Aコンテンツを活用したりすることで実現できます。

2. E-E-A-Tの強化

• AI Overview
  Googleは信頼性の高い情報源を重視しており、AI Overviewが生成する要約も、E-E-A-T（経験・専門性・権威性・信頼性）の高いコンテンツから抽出される傾向があります。

• 音声検索
  音声アシスタントは、特に健康や金融などのYMYL（Your Money Your Life）分野において、信頼できる情報を提供することを重視します。そのため、信頼性の高い情報源が優先されます。

• 共通点
  コンテンツのE-E-A-Tが高ければ高いほど、どちらの回答としても利用されやすくなります。たとえば、執筆者のプロフィールを明確にする、引用元を明記する、専門家によるレビューを掲載するといった方法で強化できます。

3. 自然言語処理（NLP）への最適化

• AI Overview
  複雑なクエリや意図を理解するために、高度なNLP技術が用いられています。コンテンツは自然な言葉づかいで書かれている方が、AIに理解されやすくなります。

• 音声検索
  ユーザーが日常会話のような自然な言葉で質問するため、キーワードの羅列ではなく、より口語的で会話的な表現が重要です。

• 共通点
  どちらに対しても、単なるキーワードの詰め込みではなく、人間が話すような自然な文章でコンテンツを制作することが求められます。これは、ロングテールキーワードや共起語（ある言葉と一緒に使われやすい言葉）を自然に含めることにもつながります。

4. 構造化データの活用

• AI Overview
  構造化データ（スキーママークアップ）は、検索エンジンがコンテンツを正確に理解するのに役立ち、AI Overviewが情報を抽出しやすくなります。

• 音声検索
  音声アシスタントは、構造化データから情報を取得し、迅速かつ正確な回答を生成することが多いため、特に「FAQ」や「HowTo」のスキーマなどが有効です。

• 共通点
  コンテンツの内容や形式に応じた適切な構造化データを各ページに実装することで、Googleがコンテンツをより深く理解し、さまざまな形式で利用しやすくなります。

5. ユーザー体験（UX）の重視

• AI Overview
  ユーザーがAI Overviewで情報を得た後、さらに詳細を知りたい場合に、参照元ページにアクセスした際の体験が重要になります。読み込み速度の高速化、モバイルフレンドリー対応、わかりやすいナビゲーションなどによって、ユーザー体験を高められます。

• 音声検索
  音声アシスタントが提示する回答が簡潔であるため、ユーザーがさらに詳細な情報を求めてウェブサイトにアクセスする可能性があります。その際のユーザー体験がよいことは非常に重要です。

• 共通点
  どちらでも、サイトやページにアクセスしたユーザーに対して、スムーズで快適な体験を提供することが、エンゲージメントを高め、再訪問を促す上で不可欠です。

AI Overviewと音声検索で異なる点

1. 回答の形式や長さ

• AI Overview
  テキストベースの要約が中心で、複数の情報源から統合された、比較的まとまった情報を提供する傾向があります。視覚的な要素（画像や表など）が含まれる可能性もあります。

• 音声検索
  音声による回答が中心で、通常は非常に短く簡潔です。一問一答形式が基本となり、ユーザーがすぐに理解できるような表現が求められます。

• 異なる点
  AI Overviewは「読む」ための情報を提供するのに対し、音声検索は「聞く」ための情報を提供するため、その情報量は大きく異なります。音声検索で求められるのは「要約情報をさらに短くしたもの」と考えられます。

2. 対話性

• AI Overview
  現状では一方的な情報提供を提示する形式です。ユーザーがさらに質問をする場合は、別途クエリを入力する必要があります。

• 音声検索
  ユーザーとの対話が前提となっており、続けて質問をしたり、文脈を維持したまま会話を進めたりすることができます。

• 異なる点
  音声検索は対話的な特徴を持っており、ユーザーは質問を繰り返したり、情報を絞り込んだりすることができます。この意味で、音声検索はAI Overviewよりもテキスト生成AIの利用方法に近いといえます。

3. ユーザーのデバイスと利用状況

• AI Overview
  主にデスクトップやスマートフォンの検索結果ページで利用されます。ユーザーは画面を見て情報を確認します。

• 音声検索
  スマートフォン、スマートスピーカー、スマートディスプレイ、車載システムなど、多様なデバイスで利用されます。ユーザーは手が離せない状況（運転中や料理中など）で利用することが多いといえます。

• 異なる点
  音声検索は「アイズフリー（画面を見ない）」環境での利用が多いため、情報の提供方法がさらに制約を受けます。また、すでに説明したとおり、一問一答形式での短い回答が求められます。

4. ローカル検索への影響

• AI Overview
  特定のローカル情報が要約される可能性はありますが、音声検索ほど影響は大きくありません。

• 音声検索
  「近くのレストラン」「〇〇までの道順」といったローカル検索と非常に相性がよく、音声アシスタントはGoogleビジネスプロフィールなどのローカル情報を優先的に提供することがあります。

• 異なる点
  音声検索はローカルビジネスにとって顧客との重要な接点であり、正確なGoogleビジネスプロフィール情報が不可欠です。

まとめ

AI Overviewと音声検索対策は、どちらもユーザーの意図を深く理解し、簡潔で信頼性の高い情報を提供することに焦点を当てています。コンテンツに直接的で簡潔な回答を含めること、E-E-A-Tの強化、自然言語処理への最適化、構造化データの活用、優れたユーザー体験の提供は、両者に共通するベストプラクティスです。

一方で、音声検索は「聞く」ことを前提とした短く対話的な情報提供が求められるのに対し、AI Overviewはより広範な情報を「読む」ために要約するという点で異なります。特に、回答の形式や長さ、対話性、ユーザーのデバイスと利用状況、ローカル検索への影響といった面で、両者には違いがあります。

これらの共通点や異なる点を理解し、それぞれの特性に合わせた対策を立てることが、今後のウェブコンテンツ制作で非常に重要になると考えます。