ホーム ビジネス 週15時間労働で済むのはいつ? 世の中が便利になっても仕事が減らないのはなぜか?

週15時間労働で済むのはいつ? 世の中が便利になっても仕事が減らないのはなぜか?

この記事のサマリー

  • 100年前、ケインズは「2030年ごろには週15時間労働が標準になる」と予言
  • 先進国のGDPは100年で10倍以上に飛躍しているのに、労働時間は変わらない
  • 労働時間が減らない原因は、管理業務の肥大化、消費主義、仕事の境界崩壊など
  • 週15時間労働を叶えるには、労働に対する抜本的な価値観の再構築が必要

目次

経済学の巨人、ジョン・メイナード・ケインズは、1930年に行った講演の中で「技術革新により2030年頃には週15時間労働が標準になる」と予言しました。しかし、その予言から約一世紀が経過した今、私たちは依然として長時間労働の枷(かせ)から解放されていません。

なぜケインズの楽観的な未来像は実現せず、私たちはますます「忙しさ」にとらわれているのでしょうか?

この逆説的な状況を紐解くことで、現代社会が直面する根本的な課題が浮かび上がってきます。

技術革新と生産性の飛躍的向上。でも労働時間は?

過去100年で、私たちの生産性は驚異的に向上しました。洗濯機や食洗機の発明により、かつては数時間を要した家事が数分で済むようになっています。ほかにも、家庭には冷蔵庫、エアコン、自動車、外に出ればスーパーマーケットやコンビニ、高層ビル、大型商業施設、職場にはコピー機、パソコン、3Dプリンタなど、生活や仕事に大きな変化を与えるものが生まれ続けてしました。

産業のあらゆる分野で機械化やAIが導入され、100年前には想像もつかなかったレベルの効率化が実現しています。実際、現代の先進国のGDPは、1930年代と比較して実質的に10倍以上に膨れ上がっています。

しかし、飛躍的に生産性が向上しても、なぜか労働時間の短縮には結びついていないというのが実感としてあるのではないでしょうか。むしろ、多くの国で労働時間は横ばいか増加傾向にあり、「過労死(Karoshi)」や「バーンアウト(燃え尽き症候群)」といった言葉が世界共通語となっています。

何が現代人の時間を奪っているのか?

さまざまな発明により、ひとつの作業に必要な時間が短縮されてもなお、労働時間は減っていません。
この矛盾の背景には、複雑に絡み合う要因が存在しており、代表的なものは次の5つです。

1. 管理業務の肥大化

組織の複雑化に伴い、「管理のための管理」が爆発的に増加しています。「知識労働を妨げ、生産性を低下させる無駄を回避しなければ、生産性は破壊される」と、「マネジメント(management)」という概念の発明者であるピーター・ドラッカーが警告しているように、現代の知識労働者の多くが、実質的な価値創造ではなく、書類作成や会議といった「管理業務」に時間を費やしています。

2. 労働の美徳化と自己実現の歪み

プロテスタンティズムの倫理(マックス・ウェーバー著『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』)に端を発する「労働の美徳化」は、現代社会においてさらに強化されています。「勤労(心身を労して仕事にはげむこと)」という言葉がよいものとされるように、特に日本では労働について生産性よりも費やした時間や姿勢を評価する価値観が多く見受けられます。

近年では、SNSの普及によって「忙しさ」が社会的ステータスとなり(いわゆる「忙しいアピール」)、個人のアイデンティティを仕事と密接に結びつける人も多くいます。その結果、労働時間の短縮が自己否定につながるという心理的障壁が、一部の人に生まれているのです。

3. 格差の拡大と消費主義の加速

生産性向上の恩恵が一部の富裕層に集中する中で、中間層は社会的地位を維持するために、より多くの労働と消費を強いられています。また、アメリカの経済学者、ソースティン・ヴェブレンが指摘した「見せびらかしの消費(顕示欲を満たすために高額商品を購入するという心理効果)」が、デジタル時代においてさらに先鋭化していることも消費主義を加速させている要因といえるでしょう。

4. テクノロジーによる仕事の境界崩壊

スマートフォンとクラウドの普及により、「いつでもどこでも仕事ができる」環境が整備されました。しかし、これは同時に「いつでもどこでも仕事をしなければならない」というプレッシャーを生み出し、ワークライフバランスを著しく損なっているともいえるのです。

5. 経済成長への執着

多くの国が経済成長を国家の最重要課題としており、それが個人レベルでの過剰労働を正当化する論理となっています。しかし、GDPと幸福度の相関性は低いことは、さまざまな研究が示しています。

具体的には、 GDPはある程度までは国の平均的幸福度を上昇させる効果があるとしても、GDPが向上したときにいっそう幸福度が高まるかという点では、必ずしもそうではないという矛盾が存在します。また、GDPランキングと幸福度ランキングで上位に掲載されている国が異なる点も、このことの証左です。

社会全体で「労働」を考え直すときが来た

こういった状況を打破するには、単なる労働時間の規制ではなく、社会全体における労働に対する認識の抜本的な改革が必要です。
たとえば次の5つの観点から、労働についてあらためて考え直す必要があるでしょう。

1. 価値創造の再定義

労働の価値=労働時間ではなく、「実質的な成果や社会的インパクトを評価する」といった、新たな指標の開発と普及が必要です。

2. 最低限所得保障(UBI)の検討

AIやロボットによる労働代替が進む中、すべての国民に最低限の生活を保障するUBI(Universal Basic Income)、いわゆる「ベーシックインカム」の導入が、労働に対する考え方を根本から変える可能性があります。UBIが導入されると、多くの国民が金銭面の不安から解放されます。 また、ベーシックインカムは無条件かつ所得制限がないため、ワーキングプアと呼ばれる人びとの収入の底上げにもつながると予測されています。

しかし、ベーシックインカムによって国民1人あたり月7万円を支給すると仮定した場合、年間約100兆円分の財源確保が必要と計算されています。この金額は年間の国家予算と同規模となり(令和6年度の日本の国家予算は112兆717億円)、財源確保がもっとも大きなハードルになるでしょう。

3. 教育システムの刷新

教育は「生涯学習」「クリエイティビティ」「批判的思考(クリティカルシンキング)」を重視したカリキュラムへの転換が求められます。

社会全体で労働を見直すためには、通例化した物事に疑問を持ち、積極的に仕組みを考え直せる人材が求められるようになります。教育の場も受動的なものから能動的な仕組みに切り替え、物事の手順を学ぶだけに留まらず、「あたりまえ」に流されずに、新しい視点から考え続けられる人を育てる教育に変わる必要があります。

これにより、単純作業から解放された人々が新たな価値を生み出す土壌を整えられるようになるのです。

4. 「脱成長」経済モデルの探求

フランスの経済学者、セルジュ・ラトゥーシュが提唱する「脱成長」の概念を検討し、GDPに代わる新たな社会的進歩の指標を模索する必要があります。すでに触れたとおり、GDPが高い国のランキングと、幸福度が高い国のランキングは同じではなく、GDPと幸福度との相関性は低いと指摘されれいます。

脱成長論では、GDPを自己目的化すると、成長至上主義的な「際限のない消費」を生み出し、再生産不可能で不可逆な自然資源の「際限のない収奪」や、ゴミと環境汚染の「際限のない生産」をもたらしていると指摘しています。脱成長論では、自己制御、分かち合い、贈与の精神、自立共生を基礎とした「節度ある豊かな社会」が構想されています。

実際に、欧米各国が移民を大量に受け入れているのは、人口を確保し、経済成長を維持したいことが理由のひとつです。しかし、人種間の争いやコミュニティの分断、犯罪率の上昇、社会保障の負担増などが引き起こされ、社会的な混乱状態に陥っていることは周知の事実です。また、日本に目を転じても、SDGsや脱炭素という美名のもとに進められている山林へのメガソーラーパネルの設置が、結局は環境と景観の大規模な破壊になっている点は、まさにラトゥーシュの指摘どおりといえます。

5. テクノロジーの人間中心設計

インターネット、ひいては仕事への「常時接続」から人々を解放し、真の意味で生産性を高めるテクノロジーの開発と普及が必要です。

スマホが普及し、われわれは心を休める時間が奪われています。インターネット上の情報は、「いかに注意を引くか」を競い合っており、巧みに消費者の時間を奪います。また仕事においても、スマホのない時代では、たとえば「移動時間は移動をするだけ」でしたが、「出勤中でも客先へ向かう途中でも、連絡をすれば対応してくれるだろう」と当然のように考える人がいたり、チャットツールを常にチェックし、自分へのメンションがあればすぐに返答しなければと考えてしまったりと、気が休まりません。

マルチタスクは脳を疲弊させます。また、休みなく詰め込まれた情報は脳をパンクさせてしまい、ワーキングメモリーの低下を引き起こします。このように、常時接続は生産性を低下させる一因になります。ということは、常時接続から解放されることで高まる生産性もあるのです。

テクノロジー全体として、消費者の時間を奪い合うことを目標とせず、別の価値にもとづいて、いわば人間中心設計を念頭においた開発や普及が必要なのです。

週15時間労働を叶えるための「価値観」と「社会システム」の再構築

ケインズが描いた豊かな余暇社会は、技術的には十分に実現可能な段階に来ています。しかし、その実現を妨げているのは、私たちの内なる価値観と社会システムの惰性なのです。労働の意味を問い直し、真の豊かさとは何かを再考することで、ケインズの夢は初めて現実味を帯びてきます。

21世紀の私たちに求められているのは、技術革新と人間性の調和、効率と幸福のバランス、そして個人の自己実現と社会全体の持続可能性の両立です。この壮大な挑戦に、今こそ真剣に取り組むべきときが来ているのかもしれません。

まとめ

いかがだったでしょうか?
もし週15時間の労働で済むようになったら、あなたは何がしたいですか?

「管理のための管理」にかかる時間を削減する方法として、情報共有の効率化が挙げられるでしょう。
たとえば、長時間かつ頻繁な会議や議事録作成に手間取っていませんか?

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ぜひ「管理のための管理」にかかる時間を減らしてくださいね。

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