2022年は、ロシア軍のウクライナ侵攻や安倍元首相の銃殺といった平和を揺るがす衝撃的で悲しいニュースから、冬季五輪過去最多のメダル数を獲得した北京オリンピック、日本代表がドイツやスペインに歴史的勝利を飾って大盛り上がりだったW杯(ワールドカップ)など、悲喜こもごもな年でしたね。
2019年12月の中国・武漢市で第一感染者が報告された新型コロナウイルスの流行から3年が経過し、みなさんの生活やビジネスシーンもコロナ禍のスタイルが定着しつつあるのではないでしょうか?
リモートワークやステイホームが当たり前となった人がいる一方で、コロナ禍以前の通勤・通学に戻ったという人も少なくないようです。
2022年は、日本国内のハラスメントに関する法令として、「中小企業に対するハラスメント防止措置の義務化」や、「育児・介護休業法の改正」による産休・育休の制度変更などの変化がありました。
以下では、
- パーソル総合研究所による2022年発表の国内ハラスメントに関する調査結果
- 国際労働機関(ILO)などによる共同研究での世界のハラスメント事情
の2つのデータをもとに、ハラスメント統計についてまとめていきます。
過去にハラスメントを受けたことがある人は、
日本34.6%、世界17.9%
2022年の日本のハラスメントによる離職は年間86.5万人、そのうち57.3万人が会社に伝えておらず、会社からはハラスメントの発生件数として把握されていない、という驚くべき結果が出ました。
業種別に見ると、宿泊業・飲食サービス業(17.9万人)、医療・福祉(14.4万人)、卸売業・小売業(12.6万人)の順に多いようです。
また、全就業者のうち34.6%が「過去にハラスメントをうけたことがある」と回答。
ハラスメントの被害内容としては、
- 自分の仕事について批判されたり、言葉で攻撃される(65.1%)
- 乱暴な言葉遣いで命令・𠮟責される(60.8%)
- 小さな失敗やミスに対して、必要以上に厳しく罰せられる(58.8%)
の順で高い結果となりました。
一方、世界でのデータでは、雇用されている就業者の17.9%が「過去にハラスメントをうけたことがある」と回答しており、日本(34.6%)の方が高い結果となっています。しかし、報告書によると、自身の被害経験を誰かに打ち明けた人は半数ほどとなっており、日本同様に被害を報告しない人も多いようです。
また、ハラスメントの被害内容としては、
- 精神的暴力と嫌がらせ(17.9%)
- 身体的暴力と嫌がらせ(8.5%)
- 性的な暴力やハラスメント(6.3%)
の順に高く、女性に限ると「身体的暴力と嫌がらせ」(7.7%)よりも「性的な暴力やハラスメント」(8.2%)が高いという傾向がありました。
世界のデータでは、「過去5年間でのハラスメント被害経験」は若年層ほど高い傾向にあるという結果も出ています。
年齢については、15歳〜24歳(23.3%)から55歳以上(12.0%)にかけて、つまり、年齢が上がるほどにハラスメント被害は減少傾向となるようです。性別については、15歳〜24歳の若い男性(20.8%)に比べ、同年代の若い女性(女性26.8%)の方がより職場でのハラスメントの被害にあっているようです。
※以降の国別データは引用元の資料をご確認ください。
日本の会社側の対応は
「認知していたが対応なし」が37.2%
ハラスメントに対する被害者自身や会社の対応についてをみていきましょう。
被害者自身の行動としては「特に何もしなかった」が約4分の1(24.4%)を占めており、会社側の対応も「認知しておらず対応なし(45.2%)」が一番高い割合を占めました。
しかし、相談を行った割合が約4分の3いるにもかかわらず、「認知していたが対応なし(37.2%)」が「対応あり(17.6%)」に比べ圧倒的に多い状態です。
2022年は「ハラスメント防止措置の義務化」と「育児・介護休業法の改正」が話題に
Voista Mediaでは、過去の記事でハラスメントに関連する法令改正もわかりやすくまとめています。
特に2022年は、
- ハラスメント防止措置が中小企業にも義務化
- 育児・介護休業法の改正(産休・育休の制度変更)
という話題を扱いました。
ハラスメントについて悩んでいる方だけでなく、ハラスメント防止措置が義務化されたことや、育児・介護休業法の改正を知らなかったというビジネスパーソンの方は、ぜひ目を通してみてください。
ハラスメント防止措置が中小企業にも義務化
上述のとおり、ハラスメントについて会社側に「相談しない」「相談しても対応がなかった」という悲しい調査結果ではありましたが、実は2022年4月から、改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)にもとづき、中小企業に対してもパワーハラスメント防止措置が義務づけられているのをご存じでしょうか?
事業主は次のようなハラスメント防止措置を必ず行わなければならず、罰則規定は見送られていますが、改善命令などに従わなかった場合、企業名が公表される可能性があるのです。
- 相談窓口の設置
- ハラスメントに対する企業のスタンスや方針の明確化
- 就業規則内や社内規定でのハラスメントの取り扱いの明記
- 全社員への周知
ハラスメント防止措置には、パワーハラスメントだけではなく、セクシャルハラスメント(セクハラ)や、妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメント(マタハラ・パタハラ)についても対応が義務付けられています。マタハラ・パタハラについては「育児・介護休業法」も改正されており、労働争議に発展する可能性があるので、あわせて確認しておきましょう。
過去記事 ハラスメント防止措置が中小企業でも義務化! 「ハラスメント対策BOOK」を参考にしよう」 で、さらに詳しく要点をまとめていますので、ぜひご覧ください。
育児・介護休業法の改正と産休・育休の制度変更
育児・介護休業法(正式名称「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」)の改正によって、2022年4月から「男性育休」が義務化されました。
改正ポイントは次の5つです。
- 雇用環境の整備、個別の周知と意向確認
- 有期雇用労働者の要件緩和
- 出生時育児休業「産後パパ育休」の新設(2022年10月1日施行)
- 従来の育休制度も産後パパ育休も分割取得が可能に
- 企業の育児休業取得率の公表(2023年4月1日施行、従業員1,000人超の会社)
つまり、女性だけでなく、男性育休も含めた体制整備や適切な措置が会社にとって義務となります。
産休・育休にまつわる就業者と会社側のトラブルは、「育休や産休が落ち着いた後の離職」や「後に続く若手たちの離職」につながりやすく、快適な職場環境の維持や会社の成長に響いてしまう可能性があります。
産休・育休には関係ないという方も、産休・育休が必要な時期を終え、これから申請することはないという方も、個々人が新たな制度を理解することで、みんなが働きやすい職場、生活しやすい社会につながるので、ぜひ知っておくことをお勧めします。
以下の2つの過去記事で、さらに詳しく要点をまとめていますので、ぜひご覧ください。
まとめ
上記のデータが示すように、ハラスメントに悩まされている人は依然として少なくありません。
残念ながら、世界的に見ても日本のビジネスシーンでのハラスメントは高い数値でしたが、2022年は関連法令の改正がありましたので、今後の改善に期待しましょう。ハラスメント被害数が2023年、2024年と年を追うごとに減少し、「2022年はハラスメント改善元年だった」といわれるような年になるとよいですね。
ハラスメントの防止に一番有効なのは、「ハラスメントをしない・させない」という一人ひとりの意識です。その意識がなければ、相変わらず「見て見ぬ振り」「事なかれ主義」が横行することになってしまいます。
これを読んでくださったあなたや、あなたの周りみなさんにとって、2023年がハラスメントのない年でありますように。
画像・データ引用:パーソル総合研究所「パーソル総合研究所、職場のハラスメントに関する調査結果を発表」
画像・データ引用:International Labour Organization “Experiences of violence and harassment at work:A global first survey”(PDF)