みなさんは「かわいい声」と聞いて、どのような声を想像しますか?
これまでも、声の印象についてはいくつか記事で紹介してきましたが、実は印象というものは、文化的な背景や社会通念によって左右されます。
日本人女性の声(といってもさまざまですが、テレビ番組などで女性っぽさを強調している人の声を想像してみてください)が、世界からどのように思われているのかを垣間見れる意見がインターネットにありましたので、まずはそれらを紹介します。
日本の「いらっしゃいませ」に見る暗黙のマナー
なぜ日本の女性の多くは、赤ちゃんと話すように声を出すのでしょうか?
Why do the majority of Japanese women sound like they are talking to babies?
これは、海外の日本に関する掲示板「JAPANREFERENCE」に2006年に寄せられた、Joshという青年の質問です。
引用元:JAPANREFERENCE
「赤ちゃんと話すように」という表現の解釈はさまざまですが、この質問に対する回答として、
- 「いらっしゃいませ」という声に驚いた。童謡を歌うようだった
- 日本ではそれがフェミニンとされるようです
- 日本は花嫁になるための料理学校がある唯一の国です
- 私がJポップを聞かない理由のひとつは、声が高すぎるから
など、日本人女性の声や話し方から、社会的な視点も交えたさまざまなコメントが800件あまり寄せられていました。全体として、話し方の抑揚、日本で求められる女性像、声そのものの高さなどに違和感を覚える意見が多かったようです。
たしかに、接客や営業時など人前で声を発する際、通常の話し声よりもワントーン上げるように、接客トレーニングなどで指導されるケースがあるそうです。
日本では「お客様は神様です」という言葉が広く知れ渡っているように、ビジネスでもプライベートでも、他人と接するときには「相手を歓迎していること」を態度で示すというマナーが根づいていることが、大きな理由だと思います。
もし自分がお客さんだとして、笑顔のない店員さんに、低い声で「いらっしゃいませ……」と言われたら、居心地の悪さを感じるでしょう。しかし、このような「お客様は神様です」という、いわゆる日本的精神を知らない人であれば、むしろ店員のだれもが同じように高い声で挨拶をしてくる姿は異様に映るかもしれません。
日本を飛び出した「#kawaii」のわけ
筆者もよく使うのですが、日本人女性が多用する「かわいい」という形容詞にも、秘密が隠れているようです。
Instagramのハッシュタグとしても世界的に使用されるようになった「#kawaii」は、「cute」や「pretty」と訳されることなく、日本語のローマ字表記がそのまま浸透しています。
若者が幼児にもご高齢者にも「かわいい」と一様に表現する場面があるように、日本語の「かわいい」はとても広義で使われています。
もともとは、漢字で「可愛い」と書き、「小さいもの、弱いものなどに心引かれる気持ちをいだくさま。無邪気で、憎めない。すれてなく、子供っぽい」(デジタル大辞泉より)などに用いるため、言葉の使い方は誤りではありません。
一方、英語圏では次のように使い分けるのが一般的です。
- Cute = 見た目や振る舞い両方に用いる。主に小さな子供や動物などに近い愛らしさ表現する際に使われる。
- Pretty = 外見のみに用いる。大人っぽい雰囲気にも使用され、Beautifulにも近い意味で用いられる。
そのため、むしろどちらも包括した日本流の「kawaii」がそのまま浸透したのではないかと思います。
参考元:ネイティブと英語についてはなしたこと「cute(キュート)とpretty(プリティ)の意味の違い」
いわゆる「かわいい声」は万人に愛されるのか?
英語を参考にすると「かわいい」という表現はいくつかに分けられることがわかりますが、本題に戻り「かわいい声」とはどのような声なのでしょうか?
おそらく、英語の「Cute」に該当するような「若々しさ」「子供のような未成熟さ」を感じるといった、辞書的な意味に近いイメージだったのではないでしょうか?
自分よりもずっと若く幼いアイドルを「可愛い」と夢中になる大人がたくさんいるように、「未成熟さ」という部分、つまり、庇護欲や愛くるしさを訴えかける上では「フェミニンでかわいらしい声」はとても有効だと考えられます。
日本では、一般的に「若々しいことはよいことだ」「大和撫子の女性が素敵」とされています。
一方、洋画でヒロインが「セクシーで自立した女性」として描かれるように、海外では低い声の女性に対して「知的で落ち着いている」という印象を抱くそうです。同時に、高い声に対しては「幼く教養がなさそう」と感じる人も少なくないのだとか。
もちろん、どちらがよいというわけではありませんが、もし「低い声の女性は、日本人が求める女性像に合わない」「年老いて聞こえる」という印象を抱くとすれば、年齢や性別に関するバイアスのあらわれかもしれません。
まとめ
日本に関する掲示板で驚かれていたように、あなたの考える「理想的な声」は、実は思い込みかもしれません。国民性や時代背景、コミュニティによって、受け止め方にさまざまな違いがあります。
自立した女性が求められていく中、いわゆるジェンダー(生物学的な性別に対して、社会的・文化的につくられる性別)に関する意識も変化しています。
元気さが求められる時代、落ち着きが求められる時代、性別の垣根が低くなる時代、多様な性自認が認められる時代……声に関する印象は、時代によって変わっていくことでしょう。
当然、個人の好みによっても、声の印象の良し悪しは左右されます。
自分の声がどのような印象を与えているか気になった人は、録音をして聞いてみるとよいでしょう。会議中などに、スマートフォンの音声アプリで録音すると便利です。
家族、友人、恋人など伝えたい相手の性格・関係性・好みなどを考え、「どのような声が好みなのか、伝わり方にどのような差が出るのか」を想像し、模索してみるのも楽しそうです。
伝える相手やなりたい自分をイメージして、ぜひ自分の中の「魅力的な声」をブラッシュアップしてみてくださいね。単に「声をワントーン上げる」だけではない印象アップの切り口が見つかるかもしれません。
なお、話し方や会話で好印象を与えるコツについては、オンライン会議や面接で、相手の心をつかむ7つの会話テクニック。好印象を与える秘訣とは? を参考にしてください。