長い夏休みが終わると、子どもたちは学校生活へと戻っていきます。
夏休みの子どもたちのため、三食をしっかりと用意しながら、自分には長期の休みがない中、あれこれとお出かけやイベントなどを準備したりと、非日常を詰め込んだ保護者たちにとっては、「やっと仕事・家事に専念できる……」と、ほっと肩の荷が降りる瞬間かもしれません。
しかし、子どもにとっては、ひさしぶりの通学、友だちとの再会、学校行事や勉強のプレッシャーなどが心の負担となることがあります。
特に、夏休み明けの8月下旬から9月初旬にかけては、子どもの自殺リスクが一年で最も高まる時期といわれており(以下の過去記事を参照)、文部科学省や教育機関も注意を呼びかけています。子どもが自ら声をあげにくい「いじめ」や不安のサインを、周囲の大人が見逃さないことが大切です。
過去記事:夏休み明け、子供の様子に要注意。9月1日に18歳以下の自殺が多く発生するわけ
では、私たちが子どもたちの変化やSOSに気づくために、どのような「備え」ができるのでしょうか。そのひとつとして、今回は「録音」という選択肢に注目してみます。
子どもは悩みや不安を「言えない」存在という前提で考える
子どもにとって、学校という社会は家庭とはまったく異なる環境です。時に理不尽な力関係や集団心理の中で、不安や不満、苦しさを抱えながらも「誰にも言えない」「自分が悪いと思ってしまう」といった状況に陥ってしまうことがあります。
また、いじめや不適切な指導、教師や同級生とのトラブルは、口頭でのやり取りや非公開の場面で行われることが多く、あとから説明したり証明したりするのが難しいケースがほとんどです。
そのような中、子ども自身や保護者が「日常の記録」を残しておくことは、問題の可視化、支援や解決につなげるための重要な手がかりとなります。
小型ICレコーダーというシンプルな安心
スマホを手元に置いて置けないという場面で、日常的に音声を記録する手段として再注目されているのが、小型のICレコーダーです。ペン型、キーホルダー型、USB型、カード型など、子どもの持ち物に自然に馴染むデザインも多く、市販品でも1万円前後で購入できるものが増えてきました。
キーホルダー型など取り付けができるタイプは、防犯ブザーと一緒に持たせておくのもよいかもしれません。
ICレコーダーの利点
- ワンタッチで録音できるシンプルな操作性
- スマホ非依存のため学校に持ち込みやすい(学校への持ち込みルールには注意)
- バッテリー持ちがよく、長時間録音も可能
- 音声データとしてパソコンなどに保存・管理しやすい
保護者が登下校時の会話や教室でのトラブルを把握するため、子どもに持たせたり、家庭内で定期的に内容を確認することが「無言のサイン」に気づくきっかけになることもあります。
ただし、録音行為が学校や他の生徒との関係に支障をきたさないよう、「記録は安心のためであり、必要なとき以外は誰にも明かさない」といった信頼関係の確認も重要です。
録音データを保存、可視化するツール
録音した音声データは、ただ保存するだけでなく、あとから聞き返しやすく、共有しやすくする工夫も大切です。
たとえば、iOS対応の無料アプリ「Voistand(ボイスタンド)」を使えば、ICレコーダーで録音した音声ファイルをクラウド保存し、それをアプリからインポートするだけで、カレンダーUIでわかりやすくデータを管理することができ、AIベースの自動文字起こしも行うことができます。
参考:録音や音声メモに無料スマホアプリ「Voistand」を使おう。その7つのメリットとは?
また、文字起こしされたデータは、音声をすべてを聞き返さなくても「読む」ことで内容を把握しやすくなり、状況をスムーズに伝えるための助けにできるため、学校への相談やカウンセラーへの共有時にも役立ちます。
スマートフォンの持ち込みが自由な状況であれば、ICレコーダーを使わずとも、お子さまのスマホにVoistandを入れるように勧めてみることで、いじめや不適切な言動に対して抗う手段があること、不安な場合でも「録音」という頼れる存在があること、録音や録画に関するリテラシーを身につける必要性などを学ぶきっかけになるかもしれません。
子どもを信じ、支えるために必要なこと
録音は「証拠収集」のためだけの手段ではありません。本当に大切なのは、「何かあったときに味方がいる」という安心感を子どもに持たせることです。
「録音しておけば、あとでちゃんと話せるよ」
「不安なときは、とりあえず声に出して記録しておこうね」
そんなふうに、子どもにとって録音が「自分を守る手段」であることを伝えられれば、トラブルの早期発見や未然防止にもつながります。
まとめ
夏休み明けは、子どもにとって心の負担が大きい時期です。小型ICレコーダーやスマートフォンアプリなどを用いて、「録音」について伝え、一緒に考える姿勢を保護者が示すことは、子どもに安心感を与えることにもなります。
録音は、監視を目的とするものではなく、「守る」ための備えとして、また、子どもに安心を与える手段のひとつとして、いざというときは「録音する」という習慣を生活に取り入れてみましょう。