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アドラー心理学

20世紀初頭に、オーストリアの精神科医、アルフレッド・アドラー(Alfred Adler)が提唱した心理学の体系。

アドラーが名づけた呼称は「個人心理学」(individual psychology、ドイツ語ではIndividualpsychologie)であるが、日本では提唱者のアドラーの名を冠して「アドラー心理学」と呼ぶのが一般的。2010年代に出された岸見一郎と古賀史健の共著で、アドラー心理学をベースにした『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』などの著作で一躍注目されることとなった。

アドラー心理学の特徴として、次の4つが挙げられる。

  1. 目的論
    人間の行動にはすべて目的があり、自分が現在置かれている状況は自分の目的を達成するために自らが選択した道であると考えること。フロイト心理学のように苦しみの原因をトラウマに求めること(原因論)ではなく、目的に求めることを提唱している。
    たとえば、子どもの不登校という問題に対して、「いじめ」「勉強嫌い」といった原因から考えるのではなく、「人間関係で傷つかないために」「勉強以外の好きなことをして過ごすために」といった目的から考える。その上で、これからその目的を、現実に照らしてどのように果たしていくのか、という前向きな考えが可能となる。
  2. 共同体感覚
    タテの人間関係(支配や依存)でなく、ヨコの人間関係(信頼や尊敬)にもとづき、自分以外の他者を対等な立場と見なすこと。そのためには承認欲求を捨て、共同体感覚を持つことを提唱している。
    承認欲求を否定する理由は、他者に認められることでしか自分が価値のある人間だと認識できないこと、自分の存在を認めてもらいたいがゆえに他者の課題(後述)に介入し、対人関係のトラブルに発展すること、行動や生き方が他人軸になることなどである。
  3. 課題の分離
    他者が持っている課題と、自分の持っている課題を分離させること。ヨコの人間関係にもとづく対等な立場の他者がおり、その人の課題が自分の課題ではなく「他者の課題だ」と判断することができる。これが、自分の課題と他人の課題との分離である。
  4. 勇気づけ
    困難を克服するための内なる活力のこと。勇気づけによって自分の目的が変わり、行動が変わることで、新しい自分を構築できるとする。勇気づけは他者に対しても有効であり、他者が自分自身の力で生きていけるようサポートすることも含めた考え方とされる。

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