harassment。他者に精神的な苦痛や不利益を与える嫌がらせ行為のこと。
次のようなものが代表的である。
- パワーハラスメント(パワハラ)
- 優越的な関係を背景にしたハラスメント。特に、業務上必要な範囲を超えたもので、労働者の就業環境が害されること(労働施策総合推進法)。
- セクシャルハラスメント(セクハラ)
- 性的な言動によるハラスメント。職場において労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したり抵抗したりすることによって解雇、降格、減給などの不利益を受けることや、性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に重大な悪影響が生じること(厚生労働省の指針)。
- モラルハラスメント(モラハラ)
- 道徳(モラル)を理由としたハラスメント。暴言、叱責、脅し、侮蔑、無視などの言動や態度として表れる。
- マタニティハラスメント(マタハラ)
- 妊娠している女性や出産した女性に対するハラスメント。妊娠、出産、育児に伴う就業制限や育児休暇により、業務上の影響があるという理由で行われる嫌がらせを指す。
- ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
- 性差に関するハラスメント。性に関する固定観念や差別意識にもとづく言動が該当する(男らしさや女らしさなどの性差を過度に強調するなど)。男性から女性に対する行為だけでなく、同性間、性的指向や性自認が異なる者との間で起こる可能性もある。
- レイシャルハラスメント(レイハラ)
- 人種、民族、国籍などに関わるハラスメント。これらに関する固定観念や差別意識にもとづく言動が該当する。従来使われてきた「人種差別」という言葉よりも広義であり、差別意識の有無に関わらず、相手が不快に感じる言動はレイシャルハラスメントになる可能性がある。
- アルコールハラスメント(アルハラ)
- 飲酒に関するハラスメント。特に、優越的な関係のもと、相手の体質や体調、気分などを無視して飲酒を強引に勧める行為。一気飲みの強要、意図的な酔いつぶし、酔った上での暴言や暴力などが該当する。
- スモークハラスメント(スモハラ)
- 喫煙に関するハラスメント。特に、喫煙者のタバコの煙によって、非喫煙者が受動喫煙をさせられること、服に匂いがついて不快に感じること、目の痛みや咳が起こることなどが該当する。
- スメルハラスメント(スメハラ)
- 匂いに関するハラスメント。口臭や体臭のほか、香水の匂い、強い香りの柔軟剤の匂い、服についたタバコの匂いなども原因となる。
- ノイズハラスメント(ノイハラ)
- 音に関するハラスメント。キーボードの打鍵音、マウスの操作音、ボールペンの頻繁なノック音、菓子を食べる音、大きすぎる会話や電話の声、ドアや引き出しを強く締める音、独り言、咳払い、鼻息、貧乏ゆすりから生じる雑音などが原因となる。
- ドクターハラスメント(ドクハラ)
- 医師、看護師などの医療従事者からのハラスメント。患者本人や家族に対する心ない言動を指す。
- スクールハラスメント(スクハラ)
- 学校内でのハラスメント。特に、先生から児童・生徒へのパワハラやセクハラ、モラハラ、侮蔑的な発言などが該当する。
- キャンパスハラスメント(キャンハラ)
- 大学内でのハラスメント。先生と学生、職員と学生、学生同士、卒業生と学生などで起こるパワハラやセクハラ、モラハラを指す。
- アカデミックハラスメント(アカハラ)
- キャンパスハラスメントの中でも、教育・研究の現場で起こるハラスメント。教育・研究上の優越的な関係のもとづく暴言、叱責、侮辱、誹謗、中傷などの言動や、学習・研究活動の妨害、卒業・進級の妨害、選択権の侵害、指導義務の放棄、研究成果の収奪などの行為を指す。
- リモートハラスメント(リモハラ、テレハラ)
- リモートワーク(テレワーク、在宅勤務)中に受けるハラスメント。特にオンライン会議でのパワハラやセクハラを指す。
- ドメスティックハラスメント(ドメハラ)
- 家庭内で行われるハラスメントのこと。夫婦間や親子間でのモラルハラスメント(モラハラ)や、従来から「ドメスティックバイオレンス(DV、家庭内暴力)」として知られるような、身体的暴力や精神的暴力が行われる場合もある。
子ども(児童・生徒)の世界では、同様の行為としていじめという言葉が使われることが多い。
なお、人権という観点からのハラスメントの定義としては、「広義には人権侵害であり、性別、宗教、社会的出自、人種、民族、国籍、信条、年齢、職業、身体的特徴、セクシュアリティなどの属性、あるいは、広く人格に関する言動などによって、相手に不利益や不快感を与え、その尊厳を傷つけること」(一橋大学「ハラスメント防止ガイドライン」)がある。