ホーム ボイステック 認知症、2025年には5人に1人。「声」から認知症を発見するモバイルアプリを筑波大学が開発

認知症、2025年には5人に1人。「声」から認知症を発見するモバイルアプリを筑波大学が開発

この記事のサマリー

  • 従来のアルツハイマー型認知症の診断は、患者の心身への負荷が大きい
  • 早期発見と適切な処置で、軽度認知障害から健康状態に回復するケースも
  • 音声データからの診断は正確性に欠けることが課題だった
  • 筑波大学が開発したアプリでは、9割という高い精度で検出に成功
  • 統合失調症やうつ病など、言語的変化を伴う他の疾患の診断にも期待

目次

日本の認知症患者数は、2025年には700万人を超え、高齢者5人に1人が認知症になるという推計がされています。

健康な状態と認知症の間には、軽度認知障害(MCI)という状態が5〜10年間あり、この段階で発見し適切に対処すれば、健康な状態に回復する可能性があるのです。

このように、認知症の予防・治療は、軽度認知症障害を含む早期段階から開始することが極めて重要です。

脳や認知の問題は本人では気づきにくく、周囲が先に気づくケースが多いものです。しかし、小規模世帯や単独世帯は年々増えており、コロナ禍をきっかけに人とのつながりが少ない状態が当たり前になったという方も少なくないはずです。

そんなときに、脳や認知機能、そして心の不調までをセルフチェックができれば、とても安心です。

高齢者の話し方や方言を含む言い回しに対応。
高い精度の音声認識で診断可能なアプリ

アルツハイマー型認知症の早期診断で、信頼度が比較的高いとされている検査法は、PET検査の薬を静脈内に注射しCT検査を行う「アミロイドPET検査」や、背中に針を入れて髄液(ずいえき)を採取する「脳脊髄液検査」など、患者の心身への負荷が大きい上、高価な方法が多く、一般の医療機関で行うことは困難な状況でした。

また、認知症の専門医療機関の受診が嫌がられてしまうことも多く、家庭や介護予防教室などでも手軽に利用できる認知症検査ツールが強く求められていました。

多くの方がご存知のとおり、認知症を発症している方の会話には、

  • 同じ話を繰り返す
  • あれ・これ・それ が増える
  • 時間や場所があいまいになる
  • 話の内容が唐突に飛ぶ

といった特徴があります。

従来、「声」や「話し方」をもとにアルツハイマーを診断する研究はいくつか報告されていましたが、発話をテキストに変換する段階で滑舌がよくない場合方言を含む場合などが音声認識の精度に大きな壁となり、診断の課題となっていました。

このような中、2023年4月3日、筑波大学が軽度認知症(MCI)・アルツハイマー型認知症(AD)を「発話」から約90%の精度で検出するモバイルアプリのプロトタイプを発表しました。

これは、簡便な自己検査で軽度認知症(MCI)・アルツハイマー型認知症(AD)を検出できる可能性を示した初めての研究といわれています。

筑波大学で制作したアプリでは、「写真を言葉で説明する」「動物の名前をできるだけ多く挙げる」といった簡単な5つの課題に対して音声で回答します。音声データをもとに「何を話したか(音声のテキスト化)」だけではなく「どのように話したか(音響韻律的特徴)」を組み合わせる機械学習モデルを構築したことにより、軽度認知症(MCI)を88%、アルツハイマー病(AD)を91%の精度で検出することに成功したとのことです。

アプリの検証には、軽度認知症(MCI)例を46人、アルツハイマー型認知症(AD)例を25人、健常例を43人の合計114名から音声データを収集し解析。

音声データからのテキスト化の面では、人の手によってテキスト化したものが単語誤り率32%、音声認識を用いて自動変換した言語的特徴もほぼ一致しており、人の耳によるものと差異のない結果となったようです。つまり、アプリを通しても軽度認知症例(MCI)・アルツハイマー型認知症(AD)における語彙力や情報量の変化を正確に推定できることになります。

まだプロトタイプであるため一般公開はされていないようですが、病院へ行かずにセルフチェックで早期発見ができる大きな光になるでしょう。

前述の通り、軽度認知障害(MCI)の状況であれば、健康な状態に回復する可能性があるといわれており、投薬を行えば進行を遅らせることもできます。

「認知症」は、病名ではなく症状や状態。
特徴や進行度合いは種類によって異なる

認知症としては、高齢者に多い「アルツハイマー型」や「血管性(脳血管障害などが原因)」をはじめさまざまな種類があり、初期症状や進行の仕方が違いますアルツハイマー型・血管性・レビー小体型・前頭側頭型の4つは「4大認知症」と呼ばれており、認知症患者全体の90%以上を占めています。

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターの発表では、原因疾患は65歳以上では圧倒的にアルツハイマー型が多く(67.6%)、65歳未満では血管性が多い(39.8%)という結果が出ています。

1. アルツハイマー型認知症

65歳以上で最も多いアルツハイマー型認知症は、脳の中にアミロイドβなど「脳のごみ」と呼ばれる不要なたんぱく質が溜まってしまうことが原因です。

症状は物忘れなどの「記憶障害」から始まり、自分のいる場所や時間などがわからなくなる「見当識障害」妄想や徘徊などの一般的にイメージされる認知症の症状となります。

認知症の物忘れは、「昨日の夕飯は何を食べたか」ではなく「夕飯を食べたかどうか」のように体験そのものを忘れてしまうことが特徴です。人との会話の中で、「そんなことあったっけ?」ということが続くようであれば、アルツハイマー型認知症の疑いがあります。

体験そのものを忘れることから、

  • いつも行っていた料理や掃除などの手順を忘れる
  • 通い慣れた道で迷子になる
  • 同じ話を何度もする

といった特徴も出るようです。

2. 血管性認知症

血管性認知症は、脳梗塞脳卒中くも膜下出血など、脳の疾患が原因で発症します。脳の認知機能を司る部分(前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉、海馬など)などの血管が詰まり、十分に酸素や栄養を送れなくなることで細胞が死滅し、本来の脳の機能が果たせなくなってしまうのです。

そもそも脳の血管が詰まる原因としては生活習慣病(高血圧・糖尿病・肥満)が多いため、日ごろの生活習慣の影響が大きいといえます。

血管性認知症の場合、「記憶障害」「判断力障害」が現れ、一日のうちでも症状に波があり、認知機能はまだらに低下していきます。損傷した脳の部位によって、出現する症状は変わりますが、感情の抑制を司るのも脳の大切な役割であるため、突然起こり出したり泣き出すなどの「感情失禁」も表れやすいようです。ほかにも手足の震えや麻痺が起こる「運動障害」や、食べ物がうまく飲み込めない「嚥下(えんげ)障害」、尿や便が出せない、もしくは漏らしてしまう「排泄障害」などが表れることがあります。

症状は段階的に早く進行してしまい、身体機能が低下して寝たきりになることもあるため、リハビリや体のケアが大切になります。

3. レビー小体型認知症

認知症では物忘れや理解力の低下をイメージしがちですが、ないはずのものが見える「幻視(幻覚)」が起きる認知症もあります。

レビー小体とは、脳の神経細胞にできる特殊なたんぱく質のことで、レビー小体がたくさん集まるとその部位の神経細胞が破壊され、命令がうまく伝達されなくなります。

レビー小体が生成される原因は脳の年齢的な変化と考えられています。脳の神経細胞が徐々に減っていき、特に記憶に関連した側頭葉と情報処理をする後頭葉が萎縮するため、幻視が出やすくなるようです。たとえば、

  • 自分を子どもだと思い込む
  • 定年を過ぎているのにまだ働いていると思い込む
  • 家の中に知らない人がいると思い込む
  • 睡眠障害を発症し、夜中に大声を上げる

というケースがあります。

レビー小体型認知症そのものを治す治療はなく、現状では抗精神薬による精神症状のコントロールや、抗パーキンソン病薬による運動症状の改善、自律神経障害に対する血圧コントロールなどを投薬治療が行われます。

4. 前頭側頭型認知症(FTD

前頭側頭型認知症は、脳の約4割を占める前頭葉と側頭葉が萎縮し、血液の流れが滞ることで発症します。

前頭葉は思考や感情のコントロール、側頭葉は言葉の理解や聴覚、味覚などを司りる部位のため、認知症の一般的な症状である物忘れよりも、性格の変化や異常行動が目立つのが特徴です。

社会性が欠如し、身だしなみに気をつかわなくなったり、罪悪感がなくなり万引きや痴漢をしてしまうというケースもあるようです。発声の特徴では、自発性の低下から、相手に言われたことをオウム返ししたり、同じ言葉を言い続けるという症状も見られます。

前頭側頭葉型認知症の原因はまだ解明されておらず、有効な治療法も見つかっていないため、認知症のなかで唯一、難病指定を受けています。

まとめ

ひとくちに「認知症」といっても、種類によって症状が異なります。そのため、認知症のすべてを発声から検知することはまだ難しいかもしれません。しかし、この研究は、アルツハイマー型認知症以外の認知症性疾患のほか、言語的変化を伴う統合失調症やうつ病などの精神疾患の検出にも期待ができるようです。

会話や声の中には、健康につながるヒントがたくさんあります。

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