パワーハラスメント、略して「パワハラ」。
社会的な立場に上下関係がある状況で、優位に立っている人がそうではない人に行う、いじめや嫌がらせのことです。近年、職場でのパワハラがよく取りざたされていますよね。
誰にとっても、けっして他人ごとではありません。もし自分の身にパワハラがふりかかってきたら、どうすればいいのでしょうか。
パワハラは立派な犯罪、自尊心のために闘おう
上司に怒鳴られた。罵られた。ねちねちといつまでも嫌味を言われた──。そんな状況に置かれとき、あなたはどう感じますか?
ありのままに「パワハラを受けた!」と思う人もいるでしょう。
その一方で、「たまたま機嫌が悪かっただけだ」「言われてもしかたがないような非が、自分にあったのかもしれない」「自分を鍛えるために、あえて厳しくしているんだ」と自らに言い聞かせて、本当の気持ちを押し殺してしまう人もいるかもしれません。
「パワハラを受けている」と認めるのは、時につらいことですよね。
自覚してしまったら、この状況に立ち向かわなければいけないのですから。
でも、忘れないでください。
人間関係のパワーバランスのもと、相手が強く出られないとわかっていながら、言動で他人の自尊心を著しく傷つけることは、立派な犯罪です。
あなたは、闘ってもいいんです。いいえ、闘わなければいけません。
厚生労働省によるパワハラの定義は6つ
厚生労働省は、職場のパワハラを「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為」と定義し、以下の6つに類型しています(平成24年3月「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」より)。
1. 身体的な攻撃
暴行・傷害
2. 精神的な攻撃
脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言
3. 人間関係からの切り離し
隔離・仲間外し・無視
4. 過大な要求
業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
5. 過小な要求
業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
6. 個の侵害
私的なことに過度に立ち入ること
いかがでしょうか。あなたに対する上司の言動は、この6つのどれかに当てはまっていませんか?
当てはまっていると思ったら、パワハラがあったという事実を立証するために、今からでも証拠を集めましょう。
さて、どのように集めましょうか。
パワハラの証拠を集めよう
たとえば、言動に限らず、メールの文面でパワハラを受けていたら。
受け取ったメールは、すべて保存しておきましょう。ただし、パソコンを使える人なら誰でも文章を入力できます。メールがパワハラの決定的な証拠になる、とまで言い切れないかもしれません。
では、同僚など第三者に証言してもらうのはどうでしょうか。
証言があるに越したことはありませんが、当人は言い逃れをするかもしれません。証言の真偽が疑われたら、真実であると立証するのは難しいでしょう。そもそも、第三者に証言を頼んだところで、報復を恐れて引き受けてもらえないことも考えられます。
そうなると、もっとも有効だと思われる証拠は、音声データです。
音声データは、パワハラの証拠として有効
音声データは、そう簡単に改ざんできません。ボイスレコーダーなどを使って録音しておけば、声や物音の主が誰なのか、聞いた人に公平に伝わります。録音した日時=パワハラのあった日時を残すこともできます。言質を取ってしまえば、当人は否定のしようがありませんよね。
裁判を起こすつもりもないのに職場で音声を録音するなんて──と抵抗を感じますか?
でも、考えてみてください。
パワハラを受けていることを誰かに相談したいとき、音声を聞いてもらえば、客観的に判断してもらえますよね。話を聞いただけでは、あなたがつらい思いをしていることに同情はされても、あなたの職場に重大な問題行為があるとは捉えてもらえないかもしれません。
自分がパワハラを受けていると感じたら、加害者との会話をすべて音声データに残す習慣をつけましょう。実際に使うにしろ、使わないにしろ、録音するだけで心が休まるはずです。いざというときに突き出せる、決定的な証拠を手に入れたのですから。
音声データは、あなたの自尊心を守る楯になってくれるでしょう。