ホーム ハラスメント 顔検索エンジン「PimEyes」。あなたの知らない映り込み写真まで検索できてしまう!

顔検索エンジン「PimEyes」。あなたの知らない映り込み写真まで検索できてしまう!

この記事のサマリー

  • 顔検索エンジン「PimEyes」は、意図せず顔が映り込んだ写真まで検索できる
  • 本人の利用が推奨されているが、誰でも誰の顔写真でも検索できてしまう
  • 子どもの顔写真の検索は年齢検索AIを用いてブロックされる
  • 顔写真を検索結果に表示させたくない場合は「オプトアウト申請」が可能
  • ただし、オプトアウト申請を行っても掲載元の写真は消せないので注意

目次

たった一枚の顔写真から、インターネット上に存在するあなたが写っている写真を検索できます

その検索エンジンの名前は「PimEyes」。
顔認識検索技術を利用して、逆画像検索を行うための顔検索エンジンです。

検索精度は高く、それこそ「盗撮された写真」も「他人の記念写真に写った姿」も「街角を歩いていて偶然映り込んだ写真」も探し当てられます。

そう聞いて、どのように感じましたか?

PimEyesは、ポーランドのスタートアップ企業が開発。無料版と有料版を問わず検索結果は同じですが、有料版(月29.99ドル〜)では1日あたりの検索回数が増えるほか、検索結果ソースの確認ができ、その写真の所在を追うことができます。誰でも利用可能な顔検索サブスクリプションサービスとして、海外を中心に現在話題となっています。

AI技術で精度90%の顔認識検索を実現する「PimEyes」

PimEyesは、インターネット上の盗撮画像の追跡を目的に開発されました。人物の顔写真の分析と検索に特化した検索エンジンで、独自のAI(人工知能)技術によりその90%の検索精度を叩き出しています。

検索の仕方はいたって簡単で、利用者はPimEyesに顔写真をアップロードするだけ。アップロードされた写真内の人物とPimEyesが検索対象しているオンライン上の写真が一致すると、わずか4秒ほどで写真やドメイン名などが表示されます。

検索対象となっているオンライン上の写真は、1億5,000万のウェブサイトから9億人の顔とのこと。現在も継続的に1日あたり最大1TBの画像の解析処理を続けているそうです。ちなみに、SNSはデータのクロールが許可されていないため、SNSにアップロードされた画像は検索対象になっていません。しかし、一般公開されているウェブサイトに投稿された写真は表示される可能性があります。

The New York Timesの記者たちが複数名で検索を行ってみたところ、本人も知らない過去の写真から、2019年に空港で他人の背景に移り込んでいた写真、2011年に音楽フェスで撮影されたものなど、サングラスやマスクをしていても正確に本人たちの写真が表示されたとのことです。

参考:The New York Times “A Face Search Engine Anyone Can Use Is Alarmingly Accurate”

PimEyesのサービス方針としては、利用者自身の盗撮画像の追跡を目的として開発していることから、検索のためには本人の写真のアップロードを推奨していますが、実際には誰が誰の写真をアップロードし、検索しても同じ結果が表示されます。

PimEyesの検索結果画面

顔写真を検索結果として表示させない方法

PimEyesは「自分が写っている未知の写真がネット上にアップされていないかどうかを確認することでプライバシーを取り戻せる」という信念のもとで開発されていますが、サービス開始当初から子どもの写真は無関係な人の検索によって悪用されてしまう可能性が高いという点が指摘されていました。

そうした中、2023年10月に入ってからは、子どもの顔写真からの検索はブロックされる機能が搭載されました。検索用にアップロードされた写真は、年齢検索AIを用いて写真の被写体が未成年かどうかが識別されます。未成年者の顔を検索する不適切な使用があった場合には利用がブロックされ、2023年10月末にはすでに200以上のアカウントを停止したと発表されました。

しかし、年齢検索はAIによって被写体の年齢を判断するため、14歳未満の子どもには有用ですが、中高生になると精度に問題が出ているようです。また、The New York Timesがドラマ「フルハウス」で知られる女優のアシュレー・オルセンとメアリー=ケイト・オルセンの子役時代の写真を用いてテストしたところ、横顔で撮影された写真の場合にはすり抜けで検索ができてしまうという指摘があったようです。さらにAIによる年齢検索は実年齢ベースではないため、年齢より大人びた顔つきの子どももすり抜けてしまう可能性があるでしょう。

参考:The New York Times “Face Search Engine PimEyes Blocks Searches of Children’s Faces”

オプトアウト申請フォームからは、顔写真を登録によってPimEyesの検索結果としてあなたの画像を表示させないための申請が可能です(ウェブサイト上部のメニュー「アプトアウト」から)。しかし、その人の写真がすでに掲載されているサイトから削除されるわけではない点に注意が必要です。

オプトアウトはあくまでPimEyesの検索結果に対してのみ有効ですが、無料で申請できるため、心配な方は申請してみてはいかがでしょうか? 申請には個人情報が見えないようにマスキングされた政府発行の身分証明書(各種身分証、パスポート、運転免許証など)が必要です。

参考:PimEyes ブログ「PimEyesから画像を削除する方法」

顔検索サービスと法規制

PimEyesよりも前に存在していた顔検索アプリ「Clearview AI」は、カナダ、オーストラリア、スウェーデン、イギリス、フランスなどの政府によってプライバシー侵害などを理由に「同社が200億の顔イメージを保管しているのは違法」と判断され、国民の顔写真データの削除が命じられたり、罰金が課せられたりしました

参考:プライバシーテック研究所「顔認識データベース『Clearview AI』は何がタブーだったのか」

Clearview AIではニュースメディア、マグショット(逮捕写真)、SNSなどのパブリックな情報ソースから収集した顔写真をデータベースに溜め込んでいる一方、PimEyesはあくまでGoogleのような画像検索型のため、今のところ各国政府からは規制の対象とされていないようです。

The New York Timesが行った検索結果のとおり、顔認識の精度が高いPimEyesは映り込みレベルの写真まで検索結果に表示されます。そのため、写真から「いつどこで何をしていたのか」「生活範囲」までがわかってしまい、ネットストーカーの餌食になるという危険性も指摘されています。

しかし、Clearview AIのしくみの中で各国の法規制に抵触する部分(データベース型であること)をクリアにしてPimEyesが生まれたように、今後新たな法規制がかけられたとしても、同様のサービスが今後も生まれ続けるでしょう。

まとめ

顔検索が日本国内でも一般的になったときに考えられる懸念は、ネットストーカーなど表立った悪意だけではありません。

就職やアルバイトの応募のために提出した履歴書の顔写真から、あなたの過去が丸裸になってしまう可能性もあります。消してしまいたいような過去だけではなく、検索で特定された「あなたの居た場所」「一緒に映っている人」などからあなたのことを面接前に先入観をもって判断されてしまうかもしれません。

リベンジポルノやいわゆる「裏垢」写真など、特定の場所でしか閲覧されていなかった写真が公(おおやけ)になってしまう可能性も考えられます。

私たちも、スマートフォンの顔認証でロックを解除したり、オフィスビルの入退出管理に顔認証が使われていたりと、日ごろから顔認識技術の恩恵を受けています。しかし、PimEyesのように「誰でも」「誰の顔写真でも」検索できるサービスは、「利用者自身の盗撮画像の追跡」という目的を越え、むしろ個人のプライバシーやセキュリティを脅かす可能性があるのです。

このように、技術の進化に伴って「ネット上に安易に顔写真をアップロードしない」という本人の意識だけでは防げない問題が生まれたことで、顔認識技術やサービスに関する知識のアップデートが個々人に求められる時代になっています。

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