「このまま、いまの仕事を続けていいのだろうか?」
そう感じたことがある方も少なくないでしょう。さまざまな分野にAIやDXが浸透する中で、社会人に求められるスキルは急速に変化しています。そのような中、2025年10月から「教育訓練給付金」が大きく拡充されることになりました。これは、政府が推進する「リスキリング(学び直し)」を後押しする制度改正であり、働きながら学ぶ人や転職を検討する人にとって大きなチャンスです。
本記事では、教育訓練給付金の引き上げ理由や対象条件、申請方法などをわかりやすく解説します。
なぜ「教育訓練給付金」が拡充されるのか
厚生労働省は特に40〜50代の再就職・キャリア転換支援を重視しています。変化する社会や技術に対応するために、新しいスキルを学び直すこと(リスキリング)を推奨しています。AIやデジタル化の進展で、職場のスキル構成が急速に変化する中で、国としても「働く人が取り残されない社会づくり」を目指しているのです。
そのため、これまでの給付率(支払額の50〜70%)を見直し、2025年10月以降は最大80%まで引き上げる方針を示しました。さらに、上限金額も現行の56万円から最大80万円に拡大されます。
誰が対象?
在職中・失業中でどのような違いがある?
教育訓練給付金を受けられるのは、雇用保険に一定期間加入していれば、在職中でも失業中でも対象となります。
しかし、状況によって併用できる制度に限りがあったり、申請の手順を誤ると給付の対象外となってしまう可能性があるため、在職中・失業中いずれのケースでも、受給可能性・手続き上の制約・影響を事前にハローワークで相談するのが得策です。
在職中の場合
原則として、雇用保険加入1年以上で対象となります。給付金は修了後に支払われます。
夜間講座や通信講座など、勤務と両立できる形式の講座が指定されています(オンライン講座、夜間・土日講座の拡充も意図されています)。一部電子申請可能な場合もありますが、在職者でも受講前にハローワークでの申請必要です。給付を受けるためには、指定講座を受講開始する前に手続きを済ませておく必要があります
在職中の方については、新設される「教育訓練休暇給付金」が別枠で利用可能です。これは無給の休暇を取って教育訓練に専念する際に、休暇中の所得補填を図る制度で、いわゆる失業手当と同額の「基本手当相当額」が給付されるとされています。
教育訓練休暇給付金の対象要件として、休暇開始前2年間にみなし被保険者期間が12ヶ月以上、かつ被保険者期間が5年以上であることが必要とされる見込みです(例外規定あり)。
支給日数には上限があり、150日まで、または加入期間に応じて90日・120日・150日という段階的設定になる見込みとの報道もあります。
失業中の場合
離職後1年以内(特定理由離職者は最長20年以内)に受講を開始すれば対象となります。失業給付(基本手当)との併用はできませんが、ハローワークで求職活動を行っている場合、職業訓練受講給付金(月10万円)と組み合わせるケースも可能です。実際に受講料と生活支援を合わせ、再就職支援にフル活用している例もあります。
失業中で教育訓練給付を申請する場合も、講座受講開始前に申請する必要があります。講座修了後、修了証明書や領収書を提出する形で給付申請します。
給付率と上限額
厚生労働省が公表している資料によれば、改正後(2024年10月~、そしてさらに2025年制度下)において、教育訓練給付制度は以下のような給付率・上限額となっています。
専門実践教育訓練給付金は、受講開始日に一定要件を満たしていれば、支払った受講費用の80%まで給付される可能性があります(ただし上限64万円) ただし、古い制度下(2024年9月以前開講開始分)では給付率70%・上限56万円という規定も残っており、受講開始日により給付率が異なる可能性があるため、確認をしておきましょう。
給付の種類 | 給付率 | 年間給付上限 | 備考 |
---|---|---|---|
一般教育訓練給付 | 支払った費用の20% | 上限 10万円 | もっともベーシックなタイプ |
特定一般教育訓練給付 | 支払った費用の50% | 上限25万円 | 主に高度専門スキル講座など対象範囲拡大あり |
専門実践教育訓練給付 | 支払った費用の最大80% | 上限64万円 | 特にキャリア再構築・中長期スキル構築向けの講座 |
また、専門実践教育訓練給付金には、講座修了後1年以内に資格取得・就業または賃金上昇を条件とした追加給付(20%相当、上限16万円)や、受講前後で賃金が5%以上上昇していれば追加10%(上限8万円)というインセンティブ制度も含まれています(上記給付率内での追加支給)
たとえば、あるITプログラミング講座で受講料が40万円だったとすると、専門実践給付を受けられる条件を満たしていれば、80%給付で 32万円 が支給されうる計算になります。
対象となる講座と注目ジャンル
厚生労働省が公開する「特定一般教育訓練講座リスト」には、全国で約3,000講座が登録されています。以下は特に人気・実用性が高いジャンルです。
デジタル系
-
DX推進人材育成講座(約35万円):データ分析・生成AIの基礎を習得
-
Webデザイン・UI/UX講座(約28万円):フリーランス転向希望者にも人気
ビジネス・マネジメント系
-
中小企業診断士養成講座(約40万円):マネジメント層のキャリア転換に最適
-
プロジェクトマネージャー研修(約30万円):大手企業のリーダー層にも多い選択
医療・福祉・資格系
-
介護福祉士実務者研修(約15万円):離職後の再就職支援で人気
-
医療事務実践コース(約20万円):短期集中型で女性の再就職に適用例が多い
画像出典:厚生労働省「教育訓練給付金」(PDF)
申請方法とスケジュール
申請は基本的に最寄りのハローワークで行いますが、オンライン対応が進んでおり、一部地域では電子申請も可能です。
申請の流れ
-
講座を選定(ハローワークまたは厚生労働省の教育訓練給付金の検索サイトで検索)
-
受講前にハローワークで申請(受講開始の1カ月前までが原則)
-
受講修了後、必要書類を提出(修了証明書、領収書など)
厚生労働省の教育訓練給付金の検索サイトでは、分野や資格の種類、通学・e-ラーニングなどの学び方のほか、目標資格の取得率などからも検索することができます。
特に働きながら学び直しを検討している人は、まずは自宅からサイトで検索をし目星をつけてからハローワーク(もしくは電子)で申請といった流れがとれるため、リスキリングに興味がある人はまず検索してみてはいかがでしょうか?
まとめ
教育訓練給付金の拡充は、「学びたい」と思った時に行動を後押ししてくれる制度です。特に在職中の人も対象となる点が大きな魅力で、会社員生活の中でリスキリングを始める人が増えています。
社会の変化が早いいまこそ、「学び直し」は守りではなく攻めのキャリア戦略。10月の制度改正を機に、自分の未来に投資してみませんか?