ホーム ハラスメント 「出勤時間よりも早く来い!」はパワハラ? 早出出勤から考えるハラスメントの判断軸

「出勤時間よりも早く来い!」はパワハラ? 早出出勤から考えるハラスメントの判断軸

この記事のサマリー

  • 早出出勤は、終業後の残業と等しく「時間外勤務」に該当
  • 早出出勤の指示は、そもそも「コンプライアンス違反ではないか」に注目
  • コンプライアンス違反になるかどうかは、勤務先の就業規則や36協定で確認
  • パワハラかどうかの判断には「業務上の必要性」と「双方の納得」がポイント

目次

上司や先輩から次のように指示された場合、パワーハラスメント(パワハラ)に該当すると思いますか?

「新人なんだから、30分前には業務を開始しておくものだろう」
朝早く来て会議の準備をしておいて
「残業できないなら、早出出勤で対応して」
「新人のうちは他の人よりも早く来て、上司や先輩のデスクを拭くのが当たり前」
「女性なんだから、早く来て掃除やお茶汲みをするものでしょう」

新しい職場であったり、新入社員という立場のときには、上記のような指示を断りにくく、釈然としない感情をモヤモヤと抱く方がいるかもしれません。

たとえば、ひとくちに就業前出勤(早出出勤)といっても、パワハラに該当するものと該当しないものがあります。中には、そもそもコンプライアンス違反になるものもありえるのです。

今回は、そのような就業前出勤を指示された場合に気にすべきポイントや対処法についてまとめました。

パワハラの定義と該当する行為

職場でのパワーハラスメントについては、パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)で定義されており、厚生労働省は以下の1から3のいずれかを満たすものと整理しています。

  要素 意味 当てはまる行為の主な例
1 優越的な関係に基づいて (優位性を背景に)行われること
  • 当該行為を受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係に基づいて行われること
  • 職務上の地位が上位の者による行為
  • 同僚又は部下による行為で、当該行為を行う者が業務上 必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得 なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
  • 同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの
2 業務の適正な範囲を超えて行われること
  • 社会通念に照らし、当該行為が明らかに業務上の必要性がない、又はその態様が相当でないものであること
  • 業務上明らかに必要性のない行為
  • 業務の目的を大きく逸脱した行為
  • 業務を遂行するための手段として不適当な行為
  • 当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える行為
3 身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること
  • 当該行為を受けた者が身体的若しくは精神的に圧力を加えられ負担と感じること、又は当該行為により当該行為を受けた者の職場環境が不快なものとなっ たため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること
  • 「身体的若しくは精神的な苦痛を与える」又は「就業 環境を害する」の判断に当たっては、「平均的な労働 者の感じ方」を基準とする
  • 暴力により傷害を負わせる行為
  • 著しい暴言を吐く等により、人格を否定する行為
  • 何度も大声で怒鳴る、厳しい叱責を執拗に繰り返す等により、恐怖を感じさせる行為
  • 長期にわたる無視や能力に見合わない仕事の付与等により、就業意欲を低下させる行為

要約すると、「立場が上の者(優越的な関係)が、仕事で必要な範囲を超え(業務の適正な範囲)、労働者へ不利益を被らせたり(身体的・精神的な苦痛)、働く環境を悪くしたりする(就業環境を害する)ことが、パワハラに該当する」となります(一部は、同僚や部下からの集団による行為も該当)。

業務における適正な範囲内かどうかを判断するには、状況や業務内容を把握した上で、業種や過去の判例や職場での共通認識との照合が必要になります。「意味」や「当てはまる行為の主な例」の中に「社会通念」という言葉が出てくるとおりです。

したがって、就業前出勤にスポットを当てて考えると、社会通念に照らして「業務の適正な範囲内」であればパワハラには該当しない、となります。

一方、パワハラの判断基準としては、以下も加味されます。

  • その従業員が行わねばならない必然性
  • 指示された従業員本人が納得しているかどうか

就業前出勤は、イレギュラーな業務が発生している状態が大前提となります。これが必然性です。「新人なんだから」や「みんなそうしているから」という理由や、漠然と早出が推奨されている場合には必然性がないと考えられ、「業務の適正な範囲外」となるでしょう。

また、本人の通勤時間、残業時間、子育てや介護が必要な家族がいるかどうかなど、指示を与える従業員の生活環境にも配慮しながら、本人が納得の上で従う必要があります。

お茶汲み、掃除、ゴミ出しといった雑務は、当番制など全員に対して公平であればハラスメントにはなりませんが、性別に基づく区別があればセクシャルハラスメントに該当する可能性があります。また、同様の業務を行う人がいるにも関わらず、特定の個人だけに負担を強いている場合にはパワハラに該当するでしょう。

そもそも、コンプライアンス違反に該当するケース

就業前出勤の指示の裏に、もし次のような意図があれば、パワハラではなくコンプライアンス違反となり、訴えがあった際に会社側が罰せられます。

  1. 残業代への手当が未払い(無給の早出残業)
  2. 就業時間外労働の強要(強制労働

また、会社側のコンプライアンス違反を理由に退職した場合、「会社都合退職」として、自己都合退職よりも早く(7日の待機期間後)、長く(90〜330日)失業手当を受給できる可能性があります

1. 残業代への手当が未払い(無給の早出残業)

ハラスメント以前の問題として、就業前出勤の指示については「時間外手当を含めた給与」が支払われているなど、法令を遵守していることが前提となります。

労働基準法では、労働時間は原則として1日8時間・1週40時間以内とされています(第32条)。

就業時間に関しては就業規則に記載する必要があり、常時10人以上の労働者を使用する雇用主は就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署に届出をしなければなりません(第89条)。

さらに、法定労働時間を超えて労働者に時間外労働(残業)をさせる場合には、労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)の締結と、所轄労働基準監督署長への届出が必要です。36協定では「時間外労働を行う業務の種類」や「1日、1か月、1年当たりの時間外労働の上限」などを決める必要があります。

時間外労働の給与については、変形労働時間制を採用していないまたは所定労働時間が8時間の場合には、就業前出勤も「時間外労働」となるため、通常は「時給の1.25倍」の時間外手当が支払われる必要があります。

まとめると、

  • 36協定が締結されていない場合
  • 出勤就業前出勤の指示があったにも関わらず「無給」の場合

は、コンプライアンス違反である可能性が高いのです。

就業時間後の時間外労働はカウントされるが、就業時間前はサービス残業状態……という話もよく耳にします。
もし不安に思われた方は、あらためて勤務先の就業規則を確認し、労働時間や36協定について調べるのがよいでしょう。

2. 就業時間外労働の強要(強制労働)

労働基準法第5条では強制労働の禁止」を規定しています。

就業時間外労働が脅迫めいた指示の元で行われている、精神的に断りづらい状況に追い詰められているといった場合には、労働基準法違反になります。

あえて単純化していえば、「就業時間外労働を指示した者と、指示された従業員の間に、フラットな話し合いがあったかどうか」がポイントとなります。その上で双方が納得をしているのあれば、正当な指示といえるでしょう。

まとめ

いかがだったでしょうか?

コロナ禍が落ち着き、リモート勤務から会社への出勤へと変わり、大都市圏では満員電車も日常に戻ってきました。就業前出勤(早出出勤)を指示されたときは、げっそりとした気持ちになることがあるかもしれません。

ハラスメントの判断材料には、指示をする者と指示をされた者の関係性や事情が大きく加味されます。そのため、就業前出勤とひとくちにいっても、パワハラに該当するかどうかのジャッジは難しいでしょう(上述したような明らかなコンプライアンス違反を除いて)。

もし「これってパワハラ?」と不安に思った場合には、ひとりで悩まずに第三者に相談するのがおすすめです。

同僚や身近な人に相談する場合でも、会社のハラスメント窓口に相談する場合でも、実際の状況を記録として残しておくとよいでしょう。ハラスメントかどうかの判断には「どのような指示を」「どのような状況で」「どのような言い方で伝えられたか」が重要になります。

録音や録画のデータがあればベストです。その場の空気感を伝えることができるため、相談された相手も正確に判断しやすくなるのです。

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