ホーム ハラスメント パワハラ防止法で何がどう変わる? 働く人の尊厳や就労環境を守る手立てとなるのか

パワハラ防止法で何がどう変わる? 働く人の尊厳や就労環境を守る手立てとなるのか

この記事のサマリー

  • 全国の労働相談件数では「いじめ・嫌がらせ」が8万件以上で、7年連続トップ
  • パワハラは個人の人格や尊厳を傷つけ、労働意欲を失わせる行為
  • パワハラ防止法には罰則規定がなく、まだまだ不十分。自分で自分を守る意識を

2019年5月29日に成立し、2020年6月(中小企業では2022年4月)から施行される「パワハラ防止法」。

正式には「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)」の一部改正で、新設される条文などを指します。

2018年度に全国から寄せられた労働相談件数(厚生労働省発表)では、「いじめ・嫌がらせ」の相談が前年度比14.9%増の82,797件に達し、7年連続でトップとなりました。パワハラによる精神障害の労災認定も増加傾向にあります。

セクハラはすでに企業が防止措置を講じる義務がありますが(男女雇用機会均等法第11条)、パワハラについては法律で明確に規定されておらず、義務が課せられてこなかったことも、このような状況にいたっている大きな要因といえます。厳密にいえば、労働契約法第5条「職場環境配慮義務」に抵触する可能性がありますが、これはパワハラ防止のための直接的な規定ではありません。

パワハラは個人の人格や尊厳を傷つけ、労働意欲を失わせます。引いては、通院、休職や退職、最悪の場合は自殺などを招く可能性があります。また、パワハラが許されるような職場では、生産性が大きく低下するだけでなく、人材の流出を招きかねません。

パワハラ防止法は、このような状況を改善するための法律です。

なお、LGBTに関連して、性的指向・性自認に関する「SOGIハラ(Sexual Orientation and Gender Identity Harassment)」、他人のセクシャリティを勝手に暴露する「アウティング」の防止も規定されています。もちろん、LGBTのいかんに関わらず、他人のセクシャリティを漏洩することは、倫理的に大きな問題です。

パワハラの定義、ポイントは3つ

パワハラ防止法では、パワハラを「優越的な関係を背景にした言動で、業務上必要な範囲を超えたもので、労働者の就業環境が害されること」と定義しています。

この定義の背景にあるのは、厚生労働省が2012年に公表した「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」です。そこではパワハラを「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為」と定義(詳しくは、パワハラと闘う最も有効な手段、音声データで自尊心を守ろう!を参照)。

両方に共通しているポイントは、

  1. 優越的な関係が背景にある
  2. 業務上必要な範囲を超えている
  3. 就業環境が害される

の3つです。パワハラ防止法の条文のほうが、より汎用的な表現になっています。

さて、これらの中で、「優越的な関係」は、上司(管理職)と部下などの立場や年齢などによって、また「就業環境の阻害」は、本人はもちろん、周囲の心理的な負担の増加などによって、認定できることが多いでしょう。

逆に、もっとも判断がむずかしいと考えられるのは、「業務上必要な範囲を超えているかどうか」です。業務上必要な指導であったとしても、上司と部下では解釈が異なるケースがあるからです。たとえば、上司が部下の成長を願って、ある業務を課したとしても、充分な説明がなければ、部下にとっては無理難題を押しつけられたと感じるかもしれません。

また、同じ物事を伝えるにしても、威圧的な言い方や理性を欠いた表現であれば、受け手がパワハラだと感じる可能性がある点も、しっかりと認識しておきたいところです。

この点、参考になるのは、中小機構が公開しているPR動画です。

部下の退職にあたって、上司の視点から都合のよい思い出がプレイバックされたあと、一転、部下が逆上して暴れ出すという、驚きのストーリーとなっています。

罰則規定は見送り、企業名が公表される可能性あり

パワハラ防止法では、もしパワハラ防止策をとっていない企業は、厚生労働省が行政指導で改善を求めることや、それに応じなければ、厚労省が企業名を公表する場合もあるそうです。

企業が講じるべき防止策としては、加害者の懲戒規定の策定、相談窓口の設置、社内調査体制の整備、当事者のプライバシー保護などが想定されています。

ただし、これらを形式的にでも整えていれば、厚労省による企業名の公表までにはいたらない可能性があります。罰則規定が見送られたのも、経団連の反対があったためといわれています。

なお、国際労働機関(ILO)条約が各国政府に対して、企業への罰則規定を求めていることもあり、国際的な水準に近づけるために、数年中に再び改正に着手する可能性があります。企業は、ILO条約を視野に入れた対策が必要です。

もし「パワハラかな?」と思ったら、早めの対策を

パワハラを受ける側の立場で考えてみましょう。

管理職や上司の言動について、明らかにパワハラと思われる状態がつづいたり、当事者同士の話し合いで状況が改善しないのであれば、何らかの対策を講じましょう。

いつ、どのような言動を受けたのかを記録しておくことが大切。特に、ボイスレコーダー(録音アプリやICレコーダー)で録音し、実際の発言内容を音声データとして残しておくのがおすすめです。

法的措置を求めるかどうかに関わらず、たとえば社内の人事担当者への相談や社内調査の際の証拠となるなど、事実関係を証明するために音声データが有効だからです。

すでに説明したとおり、パワハラ防止法には罰則規定は盛り込まれませんでしたので、企業への強制力の面でも、企業で働く一人ひとりのマインドという面でも、パワハラ防止についてまだまだ未成熟、未整備な状態がつづきます。

万が一、パワハラを受けた場合、自分を守ってくれるのは自分だけです。

自分の尊厳を守り、就労環境を改善するためにも、パワハラ防止法の限界を理解しながら、いざというときに必要な対策を講じることが大切です。

まとめ

以上、パワハラ防止法についてまとめてみました。

パワハラ防止法は、就労環境にある労働者の保護を目的としており、比較的立場の弱い取引業者(個人事業主やフリーランスなど)は対象にしていません。また、政界やスポーツ界などに見られるパワハラ事件も後を絶たず、職場だけでなく社会全体として、パワハラをどう防止していくかも考えていく必要があるでしょう。

今回のパワハラ防止法によって、少しでも不幸がなくなること、多くの人の尊厳が守られることを、心から願っています。

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