ホーム ハラスメント 悪質クレームやカスタマーハラスメント(カスハラ)の被害を最小限にする事前準備を紹介

悪質クレームやカスタマーハラスメント(カスハラ)の被害を最小限にする事前準備を紹介

この記事のサマリー

  • 過去3年間に一度でもカスハラを受けたことがある人の割合は15.0%
  • 企業によるカスハラ対策指針の周知によって、従業員と顧客の両方を守ることに
  • ウェブ、ポスター掲示、店内放送などでカスハラ対策を明示することが抑止力に

目次

顧客や取引先などからの不当な要求、暴言、脅迫、暴行等の著しい迷惑行為は「カスタマーハラスメント(カスハラ)」と呼ばれ、近年問題となっています。以前から「悪質クレーム」や「モンスタークレーマー」という言葉がありましたが、カスタマーハラスメントの話題として扱われることが多くなりました。

厚生労働省も「顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)に関して、事業主は、相談に応じ、適切に対応するための体制の整備や被害者への配慮の取組を行うことが望ましい」としており、企業側が何も対策をしないと安全配慮義務違反となる(違反した場合には損害賠償請求に応じなくてはならない)可能性があるようです。

正当な「クレーム」や「ご意見」の範囲と、カスハラとの線引きが難しいという声も多く、ガイドラインの準備や対応が難しいという声もある中で、今回は厚生労働省が作成した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」をはじめ、カスハラ対策に役立つ対応をご紹介いたします。

参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(PDF)

カスタマーハラスメント(カスハラ)の実態

それでは、上掲の厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を元に、カスハラの現状を見ていきましょう。

カスハラはパワハラ・セクハラよりも相談率の高いハラスメントに

厚生労働省「令和2年度 職場のハラスメントに関する実態調査」では、過去3年間に従業員からの各種ハラスメント相談のあった企業のうち92.7%が著しい迷惑行為(カスハラ)に該当する事案があったとされ、20〜64歳の男女労働者のうち、過去3年間に勤務先で顧客からの著しい迷惑行為(カスハラ)を一度でも受けたという割合は15.0%という結果となりました。

迷惑行為の第1位は「長時間の拘束・同じ内容を繰り返すクレーム」

迷惑行為の内容としては以下の順で多かったそうです(複数回答可)。特に「長時間の拘束・同じ内容を繰り返すクレーム」が52.0%と最も多く、次いで「名誉毀損・侮辱・ひどい暴言」が46.9%という結果となっています。

1. 長時間の拘束・同じ内容を繰り返すクレーム 52.0%
2. 名誉毀損・侮辱・ひどい暴言 46.9%
3. 著しく不当な要求(金品の要求・土下座の強要等) 24.9%
4. 脅迫 14.6%
5. 暴行・傷害 6.5%
6. その他 4.9%

カスハラのタイプ別分類

カスハラには主に11タイプがあり、不退去罪、侮辱罪、名誉毀損といった犯罪に当たる行為もあるようです。また、コロナ禍の世相を反映して、マスク着用・消毒・換気に関する強い要望や、マスク未着用の人への過度な注意の要望、顧客のマスク着用拒否といったカスハラもあります。

カスハラ対策の準備では、方針づくりと周知が大切

企業や店舗は、カスハラ対策でどのようなものを準備すればよいのでしょうか。ポイントは「方針づくり」と「顧客への周知」です。また、これらの取り組みが社員・スタッフへの教育啓蒙となり、全社的にカスハラへの対応力を高めることにつながります。

それでは、詳しく見ていきましょう。

カスハラへの取り組みが、企業のブランドイメージ、従業員の定着につながる時代

カスハラ問題を放置した場合、従業員の精神的な負担が増え、休職や離職につながってしまう可能性があります。また、顧客や取引先の要求がエスカレートし、さらに被害が深刻化する恐れがあります。

本来の業務に影響が出ることで、サービスの質や日々の売上の低下につながることにも。

もし店舗など多くのお客様がその現場を目にした場合には、安心して買い物ができないお店という印象を持たれてしまい、評判が下がってしまいます。

従業員の休職・離職→サービスの質や売上の低下→通常のお客様へのケアが不足→さらに売上が低下……という「負のループ」が完成してしまうのです。

さらに現在ではSNSの普及もあり、良くも悪くも口コミがあっという間に広範囲に広がります。

そのような中で、従業員を守り、店舗の雰囲気や通常のお客様の快適さを害さないためにも、カスハラに対する自社の方針を明確にすることは、信頼できる企業であるというイメージを生み出すことにつながるのです。

カスハラ対策の顧客への周知方法

顧客に対してカスハラへの取り組みを周知する方法は、主に次の3つです。

1. 企業や店舗のウェブサイトへの記載

企業や店舗のウェブサイトのお知らせページなどで「カスタマーハラスメントに関する自社の姿勢」を明記するのもおすすめです。

カスタマーハラスメントによく悩まされている企業では、さらにトップページにバナーなどを掲載し、該当のおしらせが目立つようにしておくというのも、抑止力として効果があるかもしれません。

SPEEDAやNewsPicksなどの経済情報サービスを運営するUZABASEでは、UZABASEグループの「カスタマーハラスメントに関する行動指針」をサイト上で公開しています。厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を元に、対象とする行為やカスタマーハラスメントへの社内対応と社外対応なども記載されており、大変わかりやすい内容です。業種業態に関わらず参考になる点があるので、ぜひ参考にしてみてください。


参考:UZABASEグループ「カスタマーハラスメントに関する行動指針」

2. リーフレットやポスターの掲示

店舗であれば、店内にカスハラに関するポスターなどを掲示するという方法もあります。

厚生労働省のサイトでポスターやリーフレットが配布されていますので、それらを活用してもよいでしょう。オリジナルで製作する場合には「◯◯(企業・店舗名)はカスタマーハラスメント問題に取り組んでいます」というように、企業・店舗名を明記することで、しっかりとカスハラ対策が行っていることを社内外に周知できるでしょう。


ポスター・リーフレット配布ページ:厚生労働省「『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』等を作成しました!」

3. カスハラ発生時に店内でアナウンスを流す

一般社団法人日本ハラスメント協会では、カスハラ発生時に店内に周知するための音声が配布されています。

カスハラに対する企業方針を、被害者である従業員本人が、カスハラ被害に遭っている最中に加害者に伝えることは難しいものです。店内放送として流すことで、加害者とその場に居合わせた無関係のお客様に周知できます。

カスハラが発生してしまうと、その場所に居合わせた無関係のお客様にも不安感や不快感を与えてしまいますが、確固とした対応を行うことを周知することで、お客様の安心感にもつながります

<音声動画のアナウンス内容>
緊急連絡をいたします。ただいま、お客様との間でトラブルが発生いたしました!すべての業務を一時的に停止いたします。お客様からカスタマーハラスメントの疑いがある場合は緊急措置として、業務の一斉停止を行なっております。すべてのスタッフは業務を停止して下さい。なお、トラブルとは関係のない他のお客様には大変ご迷惑をかけてしまい申し訳ございません。当社ではカスタマーハラスメント対策を強化しておりますので、過剰な要求と判断した内容については対応をしない方針をとっております。必要に応じて防犯カメラの映像を連携している日本ハラスメント協会が検証し、カスタマーハラスメントに該当するかの助言を受け、報告内容次第ではトラブルを起こしたお客様に損害賠償請求に関わる法的措置を取る場合がございます。なお、トラブルが解消されましたら業務を再開いたします。

音声配布ページ:PR TIMES「カスハラ対応とは?事例、法律を想定した”カスハラ撃退ツール”を企業に無償提供。カスタマーハラスメント対応マニュアル、ポスター、店内アナウンス用の音声と動画。日本ハラスメント協会が対策ガイドラインを公開」

まとめ

不景気や不安定な社会情勢、さらには長く続くコロナ禍の下でイレギュラーな事態や制約が増え、どこかピリピリとした社会になっていると思います。

筆者の私事ではありますが、先日まで軽度の体調不良でしばらく外出を控えていたのですが、自主的な隔離期間の後、とあるチェーン系のカフェでコーヒーを購入しました。久しぶりの外出で人と接し、店員さんがマスク越しでもわかるほどニコニコとコーヒーを差し出してくれたときに、なんだかとても暖かい気持ちになりました。

理想論かもしれませんが、売り手と買い手の双方がお互いに感謝し、感謝される関係性になれること、そして、その積み重ねこそが、経済を大きく成長させる原動力ではないかと考えます。

接客業の方をはじめ、日々忙しく働くみなさんが、できるだけ安心感を持って楽しく働けるような環境になるとよいなと、心から感じました。

関連記事:暴言、暴行、待ち伏せ、SNSでの中傷。令和の「カスタマーハラスメント事件簿」5選
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