たとえば、社内でのパワハラ、電車内での痴漢など、もしあなたがハラスメントを目撃したら。
見て見ぬふりをする、その場を離れるなどなど……。
でも、有効な介入方法「5D」を知っておけば、ハラスメントをうまく緩和・抑止できるかもしれません。
このような役割をする人を、英語で「バイスタンダー(傍観者)」といいます。
私たち一人ひとりが、勇気をもってバイスタンダーになることが、ハラスメントを少なくすること、ハラスメント被害者を孤独にしないことの一助になると考えます。
ハラスメントの有効な介入方法「5D」とは
では、「5D」について簡単に見ていきましょう。
詳しくは、過去記事 ハラスメント被害者をさらに傷つける「セカンドハラスメント」。周囲ができる5つの「D」とは? でも解説していますので、あわせてご覧ください。
1. Distract(注意を逸らす)
ハラスメントとは関係のない話題を振ったり、持ち物を落としたりして、加害者の注意を逸らし、ハラスメントを継続できない状況にすること。いったん間を取ることで、加害者も被害者もひと呼吸つくことができ、ハラスメントがエスカレートすることを防ぎます。
2. Delegate(第三者に協力を求める)
ハラスメントが起こっている現場の近くにいる人や、その場の責任者に対処してもらうこと。複数の人が介入することで、より客観的な状況、冷静な状況を作り出せます。たとえば、駅員や店員、運転手、学校の先生など、その場で責任を持つ人に状況を伝えて介入してもらうことです。
3. Document(記録する)
スマートフォンやカメラを使ってハラスメントの現場で起こっていることを記録(録音・録画・メモなど)しておくと、必要があれば状況証拠として提出できます。また、その事実によって、ハラスメントをやめさせることができるかもしれません。ただし、記録した情報は慎重に扱い、被害者のプライバシーへの配慮しましょう。
4. Delay(あとから行動する)
その場で介入しなくても、加害者が去ったあとに被害者に「自分が味方である」と伝えること。「大丈夫ですか?」「何かできることはありますか?」と様子を聞いたり、手伝えることを尋ねましょう。
5. Direct(直接行動する)
加害者に対して、加害行為を止めるために直接行動すること。相手が知らない人の場合は危険が伴うため、職場内などで自分が知っている相手に対して、被害者と自分の身に危険が及ばないことを確認する必要があります。もし知らない人に行う場合は、標的とされた人を助けることが目的なので、加害者との対話や議論は避け、意見を端的に伝えましょう。
アクティブバイスタンダーと抑止力
愛知県鉄道警察隊によると、電車内での痴漢62件を分析した結果、次のとおりの結果となりました。
- 被害者が明確に拒否した場合、犯人の95%は犯行を断念
- 無言で防御しただけの場合は、断念したケースが33%、犯行を継続したケースが67%
- 第三者からの声かけがあった場合、100%が犯行を断念
- 無抵抗であれば100%犯行を継続
画像出典:NHK 名古屋放送局「KYジャーナル 『アクティブ・バイスタンダーになろう!』」
このように、第三者の介入によって、痴漢の継続をかなり防げることがわかりました。
ハラスメントへの積極的な介入者のことを「アクティブバイスタンダー」といいます。
口でいうほど簡単ではありませんが、現場を目撃したときには、上記の愛知県鉄道警察隊の調査結果を思い出し、勇気をもって行動することが理想的だと考えます。
なお、愛知県鉄道警察隊は『痴漢・盗撮撲滅ハンドブック』(PDF)というユニークな資料を公開しています。
ぜひご一読ください。
まとめ
以上、5Dとアクティブバイスタンダーについて解説しました。
さまざまな状況で自分がバイスタンダー、またはアクティブバイスタンダーになれるとは限りません。
しかし、5Dやアクティブバイスタンダーの知識があれば、誰かを救える瞬間があるかもしれません。
咄嗟のときに、勇気をもって行動する大切さを、あらためて考えさせられました。