ホーム ハラスメント ジェンダーギャップ指数2023年、日本は過去最低の146か国中125位。日本が抱える問題とは

ジェンダーギャップ指数2023年、日本は過去最低の146か国中125位。日本が抱える問題とは

この記事のサマリー

  • 日本の男女間のジェンダーギャップは過去17年間ほとんど改善されていない
  • 教育・健康分野の差は少なく、経済・政治分野のスコアが低い国が下位に
  • 男女格差は経済的な面だけではなく、女性の心身の安全も脅かしかねない
  • 今年7月末までに開示される、各企業の「男女の賃金の差異」を要チェック

目次

2023年6月21日、世界経済フォーラム(World Economic Forum/WEF)が男女格差(ジェンダーギャップ)の現状を各国のデータをもとに評価した「世界男女格差報告書(Global Gender Gap Report)」の2023年版を発表しました。

昨年の日本は146か国中116位でしたが、残念ながら今年はさらに順位を下げ、146カ国中125位となりました。

順位だけ聞いてもいまいちピンとこない「ジェンダーギャップ指数」ですが、分野別のジェンダーギャップ指数を紐解くと、日本が何を課題として向き合うべきかが明白になっていきます(後述参照)。

なぜ「ダイバーシティ(多様性)」が叫ばれるのか、日本に何が足りないのかを、最新のジェンダーギャップ指数をもとに考えてみましょう。

参考:World Economic Forum “Global Gender Gap Report 2023”

日本のジェンダーギャップ指数は、
昨年からさらに9位下がって125位に

世界男女格差報告書は、2006年から毎年、調査結果が発表されています。

男女が平等な状態を「1.00(100%)」とし、教育・健康・政治・経済の4分野それぞれの指数(スコア)を算出。
4分野のスコアの平均値が総合スコア(男女格差指数)
となっています。

調査には国際労働機関(ILO)や世界保健機関(WHO)などの統計資料が用いられています。

発足当初の2006年、日本は115カ国中80位、達成度は0.645(64.5%)でした。
そして、今年2023年、日本は146か国中125位、達成度は0.647(64.7%)でした。

つまり、0.2ポイントしか達成度が向上しておらず、この17年間ほとんど改善されていないことが見て取れます。

2023年ジェンダーギャップ指数の上位10位国のランキングとポイントは以下の通りです(146か国すべてのデータは、記事の最後に掲載しています)。

順位 国名・地域名 男女格差指数 前年比順位変動
1 アイスランド 0.912
2 ノルウェー 0.879 +1
3 フィンランド 0.863 -1
4 ニュージーランド 0.856
5 スウェーデン 0.815
6 ドイツ 0.815 +4
7 ニカラグア 0.811
8 ナミビア 0.802
9 リトアニア 0.800 +2
10 ベルギー 0.796 +4

前年比順位変動を見ればわかるように、上位10か国はジェンダーギャップ指数の上位常連国ともいえる存在で、特に北欧各国の多さが目立ちます。日本の近隣国を見てみると、韓国は105位(0.680)、中国は107位(0.678)。順位は低いですが、いずれも日本よりは上位のスコアです。

先述のとおり、ジェンダーギャップ指数では4つの分野それぞれのスコアも発表されています。
日本の順位と指数を分野別に紐解いてみたところ、政治・経済が著しく低いスコアとなっています。

日本の分野別ジェンダーギャップ指数

分野 順位 男女格差指数
教育 47位 99.7%
健康 59位 97.3%
政治 138位 5.7%
経済 123位 56.1%

これは多くの国に見られる傾向で、健康と教育のスコアは先進国ではあまり差がない状況です。一方で、 経済と政治のスコアには大きな差があり、それが総合スコアの順位に影響しているのです。

では、それぞれの分野のスコアは何を元に算出されているかというと、次のとおりです。

  • 教育(Educational Attainment)…… 初等教育や高等・専門教育への就学などの調査
  • 健康(Health and Survival)…… 平均寿命の男女比などの調査
  • 政治(Political Empowerment)…… 女性議員の比率などの調査
  • 経済(Economic Participation and Opportunity)…… 給与格差、管理職比率、専門職や技術職の労働者数などの調査

つまり、2023年現在、日本は

  • 政治における女性議員の比率
  • 給与格差
  • 管理職の男女比
  • 専門・技術職労働者の男女比

が、他国と比べて低い状態である、ということが見えてきます。

ジェンダーギャップが引き起こす、
命や尊厳に関わる問題とは

日本の置かれているジェンダーギャップの状況がわかったところで、なぜ差異を埋める必要があるのか考えてみましょう。

男女格差が大きく開いた状態では、何が起こるでしょうか?

  • 雇用や学習機会の不平等
  • 賃金の不平等

といった問題だけではありません。

  • 性暴力や人身売買の被害に遭う
  • 児童婚や強制結婚
  • 自殺者の増加

など、命や尊厳に関わるより大きな問題にもつながりかねないのです。

妊娠や出産といったライフイベントは、特に女性の雇用やキャリア形成に大きく影響します。育児・介護休業法や男性育休などの法整備も年々なされていますが、まだまだ女性の負担が大きく、家事や育児は「女性がメインで、男性は手伝い」というのが多くのケースでしょう。

「女性は入社してもすぐ結婚や出産で辞めてしまう」「子供ができたら女性は子供の都合で休みがちになる」というイメージもいまだに色濃く残っており、女性の採用に消極的な企業も残っているのが実情です。

このようなイメージを払拭できない状態では、妊娠や出産のタイミングではなくとも、女性が何らかの理由で正社員というレールを外れた場合、再び正社員としてのキャリアに戻りにくい状況となっているのです。

日本では過去に、バブル崩壊などの経済的ショックがあった際、経済や生活に関する先行きの不透明さからか、20~40歳代の自殺者が膨大に増えました。この歴史から学べるとおり、経済的な不安は人を死に追いやります。ジェンダーギャップにより、女性に不安定な生活を強いるということは、そういうことでもあるのです。

「男女の賃金の差異」の情報公表が義務化

4分野のうち「経済」に切り込みを入れるべく、日本政府は常時雇用する労働者数301人以上の企業に対し、「男女の賃金の差異」の情報公表を義務付けました。これは、2022年7月8日から、女性活躍推進法に関する制度改正として施行されています。

男女の賃金の差異は、賃金の差額をそのまま出すのではなく、企業の事業年度ごとに、男性の平均年間賃金に対する女性の平均年間賃金の割合(%)を公表する仕組みとなっています。

つまり、同年度内かつ同事業部で、男性と女性の平均年間賃金が同じであれば「100%」という結果となります。仮に「70%」と記載があれば、「この企業のこの事業部は、女性に対して男性の平均年間賃金の70%しか支払っていない」と読める、ということになります。

公表時期は、各事業年度が終了し、新たな事業年度が開始しておおよそ3か月以内に公表する必要があるため、事業年度が5月~翌年4月の場合の企業が、7月末までを目安に続々公表しはじめています(事業年度が9月~翌年8月の場合はおおよそ11月末まで)。

あなたがご存知の企業が性別に対してどのような方針で雇用を行っているのか、関心を持ってみてはいかがでしょうか?

男女間の差異を埋めるべく努力している企業を私たちが評価することが、停滞している17年のジェンダーギャップを埋める一歩となるかもしれません。

まとめ

いかがだったでしょうか?

日本のジェンダーギャップ指数は下位から数えた方が早く、世界で掲げる目標には遥か遠いのが実情です。
日本が停滞した17年間を送る一方、年々着実にポイントを上げている国が存在するのも事実です。

ジェンダーギャップとしては、間違いなく後進国となっている日本。
このような現状を変えるには、国まかせではなく一人ひとりの意識の変化が必要です。

参考:MEMORVA「世界経済フォーラム・男女格差(ジェンダーギャップ)指数ランキング(2023年版)」

【おまけ】
2023年ジェンダーギャップ指数(全146か国)
順位 国名・地域名 男女格差指数 前年比順位変動
1 アイスランド 0.912
2 ノルウェー 0.879 +1
3 フィンランド 0.863 -1
4 ニュージーランド 0.856
5 スウェーデン 0.815
6 ドイツ 0.815 +4
7 ニカラグア 0.811
8 ナミビア 0.802
9 リトアニア 0.800 +2
10 ベルギー 0.796 +4
11 アイルランド 0.795 -2
12 ルワンダ 0.794 -6
13 ラトビア 0.794 +13
14 コスタリカ 0.793 -2
15 イギリス 0.792 +7
16 フィリピン 0.791 +3
17 アルバニア 0.791 +1
18 スペイン 0.791 -1
19 モルドバ 0.788 -3
20 南アフリカ 0.787
21 スイス 0.783 -8
22 エストニア 0.782 +30
23 デンマーク 0.780 +9
24 ジャマイカ 0.779 +14
25 モザンビーク 0.778 +9
26 オーストラリア 0.778 +17
27 チリ 0.777 +20
28 オランダ 0.777
29 スロベニア 0.773 +10
30 カナダ 0.770 -5
31 バルバドス 0.769 -1
32 ポルトガル 0.765 -3
33 メキシコ 0.765 -2
34 ペルー 0.764 +3
35 ブルンジ 0.763 -11
36 アルゼンチン 0.762 -3
37 カーボベルデ 0.761 +8
38 セルビア 0.760 -15
39 リベリア 0.760 +39
40 フランス 0.756 -25
41 ベラルーシ 0.752 -5
42 コロンビア 0.751 +33
43 アメリカ 0.748 -16
44 ルクセンブルク 0.747 +2
45 ジンバブエ 0.746 +5
46 エスワティニ 0.745 +12
47 オーストリア 0.740 -26
48 タンザニア 0.740 +16
49 シンガポール 0.739
50 エクアドル 0.737 -9
51 マダガスカル 0.737 -3
52 スリナム 0.736 -8
53 ホンジュラス 0.735 +29
54 ラオス 0.733 -1
55 クロアチア 0.730 n/a
56 ボリビア 0.730 -5
57 ブラジル 0.726 +37
58 パナマ 0.724 -18
59 バングラデシュ 0.722 +12
60 ポーランド 0.722 +17
61 アルメニア 0.721 +28
62 カザフスタン 0.721 +3
63 スロバキア 0.720 +4
64 ボツワナ 0.719 +2
65 ブルガリア 0.715 -23
66 ウクライナ 0.714 +15
67 ウルグアイ 0.714 +5
68 エルサルバドル 0.714 -9
69 モンテネグロ 0.714 -15
70 マルタ 0.713 +15
71 アラブ首長国連邦 0.712 -3
72 ベトナム 0.711 +11
73 北マケドニア 0.711 -4
74 タイ 0.711 +5
75 エチオピア 0.711 -1
76 ジョージア 0.708 -21
77 ケニア 0.708 -20
78 ウガンダ 0.706 -17
79 イタリア 0.705 -16
80 モンゴル 0.704 -10
81 ドミニカ共和国 0.704 +3
82 レソト 0.702 +5
83 イスラエル 0.701 -23
84 キルギス 0.700 +2
85 ザンビア 0.699 -23
86 ボスニア・ヘルツェゴビナ 0.698 -13
87 インドネシア 0.697 +5
88 ルーマニア 0.697 +2
89 ベリーズ 0.696 +6
90 トーゴ 0.696 +1
91 パラグアイ 0.695 -11
92 カンボジア 0.695 +6
93 ギリシャ 0.693 +7
94 カメルーン 0.693 +3
95 東ティモール 0.693 -39
96 ブルネイ 0.693 +8
97 アゼルバイジャン 0.692 +4
98 モーリシャス 0.689 +7
99 ハンガリー 0.689 -11
100 ガーナ 0.688 +8
101 チェコ 0.685 -25
102 マレーシア 0.682 +1
103 ブータン 0.682 +23
104 セネガル 0.680 +8
105 韓国 0.680 -6
106 キプロス 0.678 -13
107 中国 0.678 -5
108 バヌアツ 0.678 +3
109 ブルキナファソ 0.676 +6
110 マラウイ 0.676 +22
111 タジキスタン 0.672 +3
112 シエラレオネ 0.667 -3
113 バーレーン 0.666 +18
114 コモロ 0.664 +20
115 スリランカ 0.663 -5
116 ネパール 0.659 -20
117 グアテマラ 0.659 -4
118 アンゴラ 0.656 +7
119 ガンビア 0.651 +2
120 クウェート 0.651 +10
121 フィジー 0.650 -14
122 コートジボワール 0.650 +11
123 ミャンマー 0.650 -17
124 モルディブ 0.649 -7
125 日本 0.647 -9
126 ヨルダン 0.646 -4
127 インド 0.643 +8
128 チュニジア 0.642 -8
129 トルコ 0.638 -5
130 ナイジェリア 0.637 -7
131 サウジアラビア 0.637 -4
132 レバノン 0.628 -13
133 カタール 0.627 +4
134 エジプト 0.626 -5
135 ニジェール 0.622 -7
136 モロッコ 0.621
137 ギニア 0.617 -19
138 ベナン 0.616
139 オマーン 0.614
140 コンゴ民主共和国 0.612 +4
141 マリ 0.605
142 パキスタン 0.575 +3
143 イラン 0.575
144 アルジェリア 0.573 -4
145 チャド 0.570 -3
146 アフガニスタン 0.405

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