ホーム 学習 2025年6月1日から「懲役」「禁錮」が廃止され「拘禁刑」に一本化。何がどう変わる?

2025年6月1日から「懲役」「禁錮」が廃止され「拘禁刑」に一本化。何がどう変わる?

この記事のサマリー

  • 2025月6月1日から「懲役」と「禁錮」がなくなり、「拘禁刑」に一本化
  • 拘禁刑は立ち直りの機会を与える「教育刑」の性格が強くなった
  • 拘禁刑は「自由刑」のひとつ。ただし、刑法改正によって内容に大きな変化が

目次

刑法の改正により、2025月6月1日から、罪を犯した人への刑罰である「懲役」と「禁錮」が「拘禁刑(こうきんけい)」という新たな刑罰に一本化されました。

懲役と禁錮について補足すると、

  • 懲役 …… 刑務所での労働などの刑務作業が義務づけられた刑罰
  • 禁錮 …… このような刑務作業の義務がない刑罰(自己申告で刑務作業を希望することは可能)

となります。

刑法の条文では、たとえば「5年以下の懲役若しくは禁錮」という表現は、「5年以下の拘禁刑」という表現に改められています。

以下では、明治40年(1907年)の刑法制定以来118年続いた懲役と禁錮が廃止され、新たに「拘禁刑」に一本化されることで、何がどう変わるかを見ていきましょう。

拘禁刑への一本化によって、
「立ち直り」に重点を置かれることに

拘禁刑に一本化されることで、懲らしめの意味合いでの刑務作業ではなく、健常者、若年者、高齢者、障害者、依存症の人など、受刑者の特性に合わせて必要な作業や指導を組み合わせて処遇することとされました。背景には、出所した人が再び罪を犯す率(再犯者率)が高いという現状があり、受刑者が社会に戻って再び罪を犯すことがないように立ち直りを重視するという方針転換があります。

また、毎年8割程度の禁錮刑受刑者が自己申告で刑務作業を希望しており、懲役刑との位置づけが不明確になっていたことも背景にあるようです。

旧刑法と改正刑法の条文を比較してみましょう。

旧刑法

(懲役)
第十二条 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、一月以上二十年以下とする。
2 懲役は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる。
(禁錮)
第十三条 禁錮は、無期及び有期とし、有期禁錮は、一月以上二十年以下とする。
2 禁錮は、刑事施設に拘置する。

改正刑法

(拘禁刑)
第十二条 拘禁刑は、無期及び有期とし、有期拘禁刑は、一月以上二十年以下とする。
2 拘禁刑は、刑事施設に拘置する。
3 拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる。

第12条第3項に「改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要の指導を行うことができる」と追加されたとおり、受刑者の「立ち直り(改善更生)」に重きを置いていることがわかります。

具体的には、

  • 受刑者の必要性に応じた作業の実施
    作業の実施が前提ではなくなり、改善更生等の必要性に応じて実施を検討することが可能に。
  • 作業と指導を柔軟かつ適切に組み合わせた処遇
    作業や指導等の実施時期や割合、組合せ等を重視し、個々の特性に応じたきめ細かな矯正処遇等を展開。
  • 作業を含む受刑生活への動機付けの強化
    一方的に矯正処遇等を課すのではなく、受刑者自身にその重要性を十分に理解させ、効果的に改善更生等を図る。

という指針が、法務省矯正局によって示されています。

刑罰は応報刑か教育刑か。
拘禁刑は「教育刑」の色彩が濃くなった

拘禁刑に一本化された前提として、刑罰の捉え方の変化があります。具体的には、刑罰は犯罪者を懲らしめるための「応報刑」なのか、立ち直りの機会を与える「教育刑」なのか、という捉え方の違いです。

拘禁刑では立ち直りを重視しているという点で、教育刑としての色彩が濃くなったといえます。

実際、刑法改正にともない、24種類の矯正処遇課程が新設されることになっています。たとえば、

  • 福祉的支援課程(知的障害・発達障害)
    精神状態を安定させるために花を栽培、自分の考えを伝える練習
  • 高齢福祉課程
    認知機能を高めるトレーニング
  • 依存症回復処遇課程
    薬物依存からの脱却を目指す更生プログラム
  • 若年処遇課程
    学力向上や就労技術習得を促す更生プログラム

などが新設されます。

あらためて整理しておきたい「刑罰」の種類

刑罰は拘禁刑だけではありません。「財産刑」「自由刑」「生命刑」の順で重い罰則となっており、拘禁刑は自由刑に分類されます。

たとえば、「5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処する」と定められている罪では、より厳しく罰すべきであると判断された場合、財産刑である「100万円以下の罰金」ではなく、自由刑である「5年以下の拘禁刑」を受ける可能性が高くなります。

1. 生命刑

日本では、生命刑に該当するものは

  • 死刑

のみです。

裁判で「被告を極刑に処す」と言い渡された場合、「極刑」とはもっとも重い刑罰である「死刑」を指します。

刑法では「死刑、拘禁刑、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする」(第9条)とし、執行方法は「死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する」(第11条)と定められています。

刑罰として死刑になる可能性のある犯罪は、内乱(第77条)、外患誘致(81条)、外患援助(82条)、現住建造物等放火(108条)、激発物破裂(117条)、現住建造物等浸害(119条)、汽車転覆等及び同致死(126条)、往来危険による汽車転覆(127条)、水道毒物等混入及び同致死(146条)、殺人(199条)、強盗致致死傷(240条)、強盗・強制性行等及び同致死(241条)の12種類です。

なお、少年法第51条に定められているように、被告人が18歳未満の場合は、「死刑」の刑罰を受けることはありません。

2. 自由刑

罪を犯した人の自由を拘束する刑罰が自由刑であり、

  • 拘禁刑(旧「懲役・禁錮」)
  • 拘留

が該当します。

現在は拘留を受ける人はほとんどおらず、自由刑は実質的に拘禁刑となっています。法務省が公開している『令和6年版 犯罪白書』(2024年12月公表)によると、令和5年(2023年)に拘留の判決が確定したのはわずか2人です。

なお、お気づきになった方もいると思いますが、今回の改正刑法によって、死刑に次いで厳しい刑罰とされる「無期懲役」はなくなり、「無期拘禁刑」となりました。

拘禁刑で課される刑務作業について補足します。以前は次の4つに分類されていました。

  1. 生産作業
    民間企業からの受注により、または国が必要とする物品を製作する作業です。刑務所内に設置された工場などで働きます。収益は国の収入になります。
  2. 自営作業
    受刑者が刑事施設内で生活するために必要な作業です。炊事や洗濯、清掃、建物の簡単な修繕、介護・介助などが該当します。
  3. 社会貢献作業
    労務を提供する作業です。点字図書の制作や翻訳、災害時の支援物資の製作や梱包など、社会に貢献していることを受刑者が実感することで、その改善更生および円滑な社会復帰に資すると刑事施設の長が特に認めるものです。
  4. 職業訓練
    出所後の就労に役立つ免許や資格の取得、職業に必要な知識や技能を習得などを目的とした訓練です。刑務作業の一環として、介護福祉、建設、自動車整備、情報処理、溶接、利用・美容など、さまざまな分野の職業訓練が行われています。

改正刑法によって拘禁刑が導入されることで、次の3種類に整理し直されることになります。

  1. 基礎的作業
    社会人として、勤労生活を円滑に継続していくために必要となる職業上の基礎的な能力を身につけさせる。
    作業を自律性の度合い、集団の中での役割、責任の軽重等によって三段階(作業区分)に区分し、その区分に応じて設定された目標に向け、職業上の基礎的能力を身につけさせていく。
  2. 機能別作業
    特定の機能や能力を向上等させる必要があると認められる場合に実施。コミュニケーション能力等向上作業、機能向上作業、チーム参加・管理能力等養成作業、社会貢献作業、外部通勤作業など。
  3. 職業訓練
    出所後の就労への準備を進める既存の取り組みを職業訓練の種類として整理。種目などの見直しも継続。標準職業訓練、専門職業訓練に加え、就労準備職業訓練として復習的訓練、職場体験訓練、就労移行訓練が検討されています。

3. 財産刑

罪を犯した人から罰金を徴収するのが財産刑であり、

  • 罰金
  • 科料
  • 没収

が該当します。

罰金刑は1万円以上で定められており、判決では「○○万円の罰金に処する」と言い渡されます。科料は1,000円以上1万円未満の罰則金であり、軽微な罪の場合に科料の判決を受けることがあります。

また、没収が他の刑罰とあわせて言い渡されることがあります。これは、犯罪によって得た利益や犯罪に使用したもの(凶器や違法薬物など)を国で没収する刑罰です。

まとめ

以上、懲役と禁錮が廃止され、「拘禁刑」に一本化されることで、何がどう変わるのかを見ました。

今回の改正刑法の背景には、すでに説明したとおり、刑罰は犯罪者を懲らしめるための「応報刑」から、立ち直りの機会を与える「教育刑」へという、実は大きな変化があります

日本の再犯者率(その年に検挙された全犯罪者のうち、「以前にも犯罪で検挙されたことがある人」が占める割合)は、令和5年(2023年)のデータでは47.6%です。再犯者率は1990年代後半から上昇傾向が続き、2006年に約49%でピークに達しました。
以降、47%~49%という高い水準でほぼ横ばいに推移しています。これは、検挙される人の約2人に1人が再犯者であることを意味しており、長年にわたる深刻な課題です。

改正刑法によって、このような状況が改善するのかどうかを、しっかりと見守っていきましょう。

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