ホーム ビジネス インタビュー記事や対談記事はこう書く! プロのライターが会話型の記事執筆のポイントを伝授

インタビュー記事や対談記事はこう書く! プロのライターが会話型の記事執筆のポイントを伝授

この記事のサマリー

  • 文字起こしの前に、記事のゴール(伝えたいこと)を再確認しよう
  • 会話をそのまま文字にするのではなく、言葉を適度に補いながら文章化しよう
  • 記事執筆はチーム作業。関係者の協力をうまく引き出しながら進めよう

目次

会話を文章として表現するのは、簡単なようでむずかしいもの。

インタビュー、対談や鼎談、座談会など、会話をもとにした記事を執筆する際の注意点を解説します。ポイントごとにチェックリストを用意しましたので、あわせて活用してください。

記事という形式でなくても、会社のウェブサイトで社員インタビュー、顧客(取引先)インタビュー、お客様の声のページを作る場合などに応用できるはずです。

なお、

を参考にしてください。

記事執筆の全体的な流れ

記事執筆の全体的な流れを確認しておきましょう。おおよそ、次のような流れで記事化を進めます。

  1. 記事のゴール(伝えたいこと)を再確認する
  2. 音声データを聞きながら、文字起こしをする
  3. 文章として不自然な部分を直す
  4. シナリオに合わせて構成に手を加える
  5. 見出しを加えるなど、全体の体裁を整える
  6. 関係者の原稿チェックをもとに修正し、完了

記事の体裁としては、次のような感じでまとめるのが一般的です。

見出し

── インタビュアーやモデレーターからの質問

A(名前):発言

B(名前):発言

A(名前):発言

── インタビュアーやモデレーターからの質問

B(名前):発言

A(名前):発言

B(名前):発言

…以下、繰り返し…

それでは、各ポイントについて詳しく説明します。

1. 記事のゴール(伝えたいこと)を再確認する

記事にはゴール(伝えたいこと)があります。

シナリオやプロット(筋)を作らず、思うにまかせて会話をしてもらう場合もありますが、通常はゴールがあり、そこに向かってインタビュアー(質問役)やモデレーター(進行役)が質問をしながら、会話を積み重ねていきます。

ある事柄に関する詳細な情報提供、問題提起、解決策の提示、将来的な見通しの提示など、「読み手にどのような価値を提供したいのか」がゴールです。分量の多い記事であれば、このようなゴールをいくつか組み合わせるのが通常です。

著名人やタレントへのインタビューであれば、その人の実像に迫り、新たな魅力を伝えたり、ある出来事の裏話や苦労話を聞いたり、今後のビジョンを聞いたりすることで、ファンの好奇心を満たすことがゴールとなるでしょう。

また、記事広告(記事形式の広告)の場合は、その会社の製品やサービスの興味喚起、ブランディング、資料請求や問い合わせの増加など、広告主が期待するゴールに沿うように構成を考えます。

文字起こしの前に、このようなゴールをあらためて確認し、自分の中に軸を作っておきましょう。こうすることで、文字起こしの際、会話の取捨選択や強弱の判断がしやすくなり、手ごたえを感じながら作業を進められます

チェックリスト

2. 音声データを聞きながら、文字起こしをする

録音した音声データを再生し、耳で聞きながら、記事のベースとなるテキストを入力していきます。このことを「文字起こし」といいます。

以前は「テープ起こし」という言葉がよく使われましたが、現在はスマートフォンアプリやICレコーダーで録音することが多く、カセットテープで録音することはほぼないので、あまり使われなくなりました。

さて、文字起こしは、1人に対するインタビューと、複数人の対談や鼎談、座談会では、むずかしさが異なります。というのも、インタビューであれば、ある発言に対する発言者の特定は容易ですが、複数人の場合はその発言を誰がしたのかを特定するのがむずかしいことがあるからです。

この点は、インタビューや対談・座談会をどう仕切る? プロのライターが進行や録音のコツを教えますで、発言と発言者をひもづけるために、インタビュー時にできる工夫について解説していますので、参考にしてください。

文字起こしでは、文字数が充分に足りそうであれば、すべての会話をテキストにせず、ある程度省略しながらでもかまいません。もし作業時間に余裕があれば、いったんすべてをテキストにしたあとで削る、としてもよいでしょう。

一方、文字数が足りなそうであれば、補足説明を含める、言葉足らずのところをしっかりと補うなど、文字数を増やすことを意識します。また、文字数を増やすだけでなく、全体の体裁を整える段階で、見出し、写真や図版を増やす、といった判断も可能です。

なお、紙媒体では文字数制限が厳しいのに対し、ウェブ媒体ではゆるやかなケースが多いといえます。たとえば、8,000字を目安にしていたとして、インタビューが盛り上がり、読みごたえのある部分だけでも12,000字くらいになったとします。

この場合、紙媒体では物理的なスペース(紙面・誌面)が決まっているので、8,000字に近づける作業をしますが、ウェブ媒体では12,000字をそのまま生かせるかどうか検討する余地があります(ページ分けを増やす、前編と後編の2回に分けて公開するなど)。

また、文字起こしの過程で、意図や内容が把握しにくい発言や、調べてもわからない言葉などがあるでしょう。これらは、関係者チェックでの要確認リストに含めておきます。

チェックリスト



3. 文章として不自然な部分を直す

現在は、言文一致(書き言葉と話し言葉は基本的に同じ)なので、会話をそのまま文字にすればよい、と考えがちですが、実はそうではありません。

実際の会話では、次のような書き言葉との違いが現れます。

  1. 指示代名詞の多用(これ、それ、あれ、どれなどの「こそあど言葉」)
  2. ら抜き言葉の使用(見〈ら〉れる、食べ〈ら〉れるなど)
  3. い抜き言葉の使用(見て〈い〉ます、食べて〈い〉ますなど)
  4. 口癖の繰り返し(「〜ね」「要するに」「ある意味」など)
  5. 言葉そのものの省略(会話では省ける言葉は積極的に省くため)
  6. 読み手に伝わりにくい略語や略称の使用(アクセ〈サリー〉、ファンデ〈ーション〉)
  7. 不正確な表現(正式名称の間違い、名前の姓だけなど)
  8. くだけた表現(「ちゃんと」「〜じゃん」「〜的な」など)
  9. 過剰な表現や不快な表現(「ふざけている」「バカな話」「ダサい」など)

つまり、会話をそのまま文字にするのではなく、適度に補正しながら文章にしないと、読み手にすっきりと伝わる文章や、ある程度の品位を保った文章にならないのです。

上記の違いに気をつけながら手直しをすると、読み手にとって理解しやすく、かつ、ストレスの少ない文章になるでしょう。

なお、会話の中で笑いが生まれた部分には「(笑)」とつけるのが一般的です。なごやかな会話では笑いが多く発生しますが、それらをそのまま「(笑)」と表現するのは過剰です。当事者だけが盛り上がっている雰囲気になってしまい、読み手が「置いてけぼり」を感じるからです。「(笑)」は記事全体で数個程度にするとよいでしょう。

チェックリスト









4. シナリオに合わせて構成に手を加える

インタビューでは、シナリオどおりに会話が展開されないこともあります。

最後のほうで触れたかった内容が最初に話されたり、ある発言に触発されて想定外の話題が出たり、といったことです。

もちろん、このような偶然の会話や流れをうまく生かして文章にまとめることも大切ですが、まずはシナリオを頼りに、発言の順序などを適度に整理しましょう

また、発言者ごとの発言量のバランスを調整しましょう。1人に対するインタビューでは気にする必要はありませんが、複数人の対談や鼎談、座談会ではバランスを考えます。たとえば、5人の座談会で雄弁な人と寡黙な人がいる場合は、雄弁な人の発言量をかなり省き、寡黙な人の発言量は省かずに文字化するなどして、バランスをとります。

チェックリスト


5. 見出しを加えるなど、全体の体裁を整える

単に会話を並べただけのインタビュー記事では、レイアウトが単調になったり、読み手に飽きを感じさせたりするので、途中に見出しを加えて、いっそう魅力的な記事にするのが一般的です。

記事内の見出しは、次のいずれかで書くとよいでしょう。

  • 要約型(一連の会話の要約)
  • 抜粋型(印象的な発言の抜粋)
  • 抽象型(時代の流れやトレンドなどを抽象的に表現したもの)

通常、どれにするかは見出しごとに違ってかまいませんが、記事全体でテイストを合わせる必要があれば、掲載媒体(メディア)の編集者と意識合わせをしておきましょう。

また、記事の中に、インタビュー対象者のプロフィール、インタビューの様子を撮影した写真、内容を補完するための図版、参考となるウェブサイトのURLなどを加える場合もあります。自分がライターとして、これらの準備にどのくらい関わるかを、編集者と話し合っておきましょう。

チェックリスト


6. 関係者の原稿チェックをもとに修正し、完了

記事として公開する前に、掲載媒体の編集者、インタビュー対象者、その人の会社の広報担当者などに原稿をチェックしてもらうケースがほとんどです。

チェックの段取りは、編集者が進めてくれる場合が多いでしょう。関係者から寄せられたフィードバックをもとに記事を修正し、OKが出れば原稿は完成です。

なお、筆者の経験上、記事のゴールやシナリオが関係者内できちんと共有されていないと、インタビュー対象者側からのフィードバックがやたらと多くなったり、最悪の場合、全面的な書き直しが求められたりする可能性が高くなります。

インタビュー対象者に依頼する段階で、その時点で決まっているゴールやシナリオを共有すること、意見をもらいながらそれらをブラッシュアップし、当日に臨むことが大切です。

このような段取りは、本来はライターではなく掲載媒体の編集者の役割となりますが、もし自分が段取りや調整までを担当する場合は、ぜひ心がけてください。

チェックリスト


まとめ

以上、インタビューなどの会話をもとにした記事を執筆するとき、気をつけるべきポイントを解説しました。

最後に、筆者が書いた対談形式のインタビュー記事を例として紹介します。

ASCII.jp:リアル店舗主導で新たな顧客体験を生み出すパルコのDX戦略と、ウェブやECのこれからの役割
https://ascii.jp/elem/000/004/001/4001419/

この記事で、筆者は次の役割を担当しました。

  • シナリオ作成
  • 当日のインタビュアー(質問役)兼モデレーター(進行役)
  • 録音(スマートフォンの録音アプリとICレコーダーの2台で)
  • 記事執筆

記事執筆の観点から特に強調したいのが、シナリオの大切さです。

シナリオを作る段階で、インタビュー対象者(2名)から聞きたいことについて、それなりの時間をかけて下調べをしました。聞き手の知識が不足していると、よいシナリオが描けず、中身の濃いインタビューにするのがむずかしいからです。

といっても、ライターが孤軍奮闘するのではなく、シナリオを編集者と一緒に考えたり、インタビュー対象者から事前に資料を共有してもらったりと、工夫できることはたくさんあります。

文章を書く作業は個人として向き合うものですが、記事として仕上げるのはチーム作業です。関係者の協力をうまく引き出しながら、インタビュー記事の執筆に取り組んでください。

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