ホーム ハラスメント 2023年「LGBTの話題」5選。女湯侵入事件、最高裁判決のほか、知っておきたい5つの出来事

2023年「LGBTの話題」5選。女湯侵入事件、最高裁判決のほか、知っておきたい5つの出来事

目次

性的マイノリティーに対する理解を広めるための「LGBT理解増進法(以下、LGBT法)」が、2023年6月16日に国会で成立し、23日に施行されました。

LGBT法の成立前後、国内ではLGBTに関するさまざまな議論がなされる中、象徴的な事件や事象が相次いで起こりました

以下、2023年にあったLGBTの話題を5つ見ていきましょう。

1. 三重県桑名市で女湯侵入事件が発生。
建造物侵入で現行犯逮捕、「心は女」と主張

11月13日、三重県桑名市の温泉施設の女湯に侵入したとして、愛知県春日井市の43歳の男性(無職)が建造物侵入の疑いで現行犯逮捕されたことが、多くのメディアで取り上げられています。

この男性は、女湯に入ったことを認めた上で「心は女性なのに、なぜ女子風呂に入ってはいけないのか理解できない」と話しているといいます。

実は、LGBT法に反対する複数の識者から、「男性が女湯に入る」「男性が女性用トイレを使う」といった事件が発生すると警告されていました。LGBT法推進派は「そんなことは起こらない」と根拠なく否定していましたが、結果としてこのような事件が起こりました。

男性は、女湯の脱衣所には女装をして入るという、計画的な侵入でした。4月にも静岡県浜松市の入浴施設で脱衣場に女装をして侵入し、洗い場に入る前に逮捕されていたそうです。

参考:集英社オンライン「『心は女なのになぜ女湯に入ってはいけないのか』逮捕された女装男性(43)は今年4月に浜松市内の女湯に入り逮捕の過去…地元ではドスのきいた大声で近隣トラブルも…〈桑名・女湯侵入事件〉」

2. 鳥取県米子市でも女湯侵入事件が。
女性の体を触ったとして不同意わいせつ罪で逮捕

上記の事件から1か月もたたない間に、また同様の事件が起こりました。12月8日、鳥取県米子市の大衆浴場の女湯に侵入し、県西部に住む20代の女性の体を触ったとして、米子市の32歳の男(無職)が不同意わいせつ罪の疑いで逮捕されました。

女性は被害後、すぐに警察に届け出て、警察が目撃者から話を聞くなど捜査し、男の犯行が明らかになりました。男は体を触った理由について「マッサージのため」と話し、容疑を否認しているということです。男と女性に面識はなく、警察は女湯に入り込んだ方法や動機について調べを進めています。

参考:FNNプライムオンライン「大衆浴場の女湯に入り込み女性の体を触る 32歳の男を不同意わいせつの疑いで逮捕(鳥取・米子市)」

桑名市の事件と異なるのは、単に女湯に侵入しただけでなく、女性の体を触った点です。このため、容疑は「建造物侵入」ではなく「不同意わいせつ罪」となっています。なお、不同意わいせつ罪は、今年6月に成立した改正刑法で旧来の「強制わいせつ罪」から変更されたものです。詳しくは、以下の過去記事をご覧ください。

過去記事:改正刑法が2023年7月13日から施行。強制性交等罪が「不同意性交等罪」に。進む厳罰化

3. 絵本『おとこの子になりたいぼく』が話題に。
作者は当時小学校2年生、両親と絵本づくり

事件ではなく、みなさんに知っていただきたい出来事として取り上げます。

当時小学校2年生(現在5年生)のあやのさんが、両親と一緒に作った絵本『おとこの子になりたいぼく』が、4月にNHKで特集されたことで話題になりました。

女の子の体に生まれて男の子の心を持つというあやのさんが「おとこの子のこころでスカートをはきたくない」「トイレにも行けない、昼休みも教室から一歩も出られない」「死んだら男の子になりたい」と苦悩する様子が描かれています。

小学校2年生のときに、クラスメイトに伝えることを決意し、先生の理解を得てホームルームの時間に伝えることに。先生が「絵本を描いてみたら」と提案し、両親の協力もあって絵本が完成。業者に依頼して200部作り、学校や知り合いなどに配ったそうです。

先生がこの絵本を使って、クラスで授業を行ってくれたあと、クラスメイトから「あやのの悩みを知ることができてよかった」「あやのはあやののままでいい、あやのなんだ」などと声をかけられたということです。

参考:NHK NEWS WEB「おとこの子になりたいぼく」

4. 歌舞伎町タワーのジェンダーレストイレ。
「安心して使えない」という声で4か月で廃止に

東京都新宿区にある高層ビル「東急歌舞伎町タワー」の2階に、「ジェンダーレストイレ」という名称で性別に関係なく使える個室8室(さらに男女別が2室ずつ、多目的室が1室)が、4月の開業にあわせて設置されました。

しかし、個室扉の前まで誰でも入れること、手洗い場が共用だったことから、「安心して使えない」「化粧直しがしにくい」「男性に待ち伏せされたら怖い」「性犯罪の温床になる」といった声がSNSで相次ぎました。タワー側は警備員を巡回させるなどの防犯対策を発表しましたが、懸念の声はおさまらず、改装工事に着手。8月からジェンダーレストイレは廃止され、通常の複合施設にあるような、女性用、男性用、多目的室となりました。

参考:
東京新聞「『ジェンダーレストイレ』わずか4カ月で廃止 新宿・歌舞伎町タワー 「安心して使えない」抗議殺到の末に」
日テレ「『ジェンダーレストイレ』廃止…『男女別』に改修 東急歌舞伎町タワー 何が問題? “理想のトイレ”どうあるべき?」

ジェンダーレストイレは、一般的には「オールジェンダートイレ(all gender restroom)」と呼ばれます。東急歌舞伎町タワーがはじめての取り組みというわけではなく、ドン・キホーテが2017年にオープンした渋谷本店にオールジェンダートイレを設置しています。また、成田空港第1ターミナルビルや国立競技場にも、男女別や多目的室とは別に設置されています。

それでは、なぜ東急歌舞伎町タワーのジェンダーレストイレが批判にさらされたのかといえば、ひとつは日本有数の繁華街である「歌舞伎町」という土地柄、もうひとつはジェンダーレスが8室、女性用が2室、男性用が2室、多目的個室が1室という「数のアンバランスさ」だと筆者は考えます。

5. 最高裁が性別認定の条件として、
「生殖器の手術」を憲法違反と判断

10月25日、最高裁判所はトランスジェンダーの法律上の性別認定の条件として断種手術(生殖器の手術)を課す国内法を憲法違反(違憲)と判断しました。

これは、トランスジェンダーが戸籍上の性別を変えるのに、生殖能力を失わせるなどの手術を必要とする「性同一性障害特例法」の規定が、憲法に違反するかが問われた家事審判(家族や親族に関わる法律問題について裁判所が行う裁判)で出された判決です。

性同一性障害特例法では、性別変更に次の5要件を定めています。

  1. 18歳以上
  2. 現在結婚していない
  3. 未成年の子がいない
  4. 生殖腺(卵巣や精巣)がないか、その機能を永続的に欠いている
  5. 変更する性別の性器に似た外観を備えている

これらのうち「生殖腺(卵巣や精巣)がないか、その機能を永続的に欠いている」(生殖不能要件)と「変更する性別の性器に似た外観を備えている」(外観要件)の2要件を満たすには原則、手術が必要です。

申立人は手術を受けていませんが、長年のホルモン治療で生殖能力は減退し、生殖の可能性は極めて低いため要件を満たすと主張しました。家庭裁判所では、生殖不能要件を満たしていないとして性別変更を認めず、不服を申し立てた高等裁判所も同様に判断したため、申立人が最高裁に特別抗告した、という経緯です。

この最高裁の判決には、LGBT法の影響があったといわれています。

最高裁の判決は「判例」として、以降の下級審の裁判を拘束するものとされ、影響は極めて大きいといえます。今後も同様の裁判があった場合、生殖器の手術は不要と判断されるということです。

このお二人、鈴木げんさんと國井良子さんは、12月7日に浜松市役所で性別の表記が変更された戸籍謄本を受け取り、「多くの人にとって当たり前だったことが、僕にとってやっと当たり前になったという証明をいただき、うれしく思います。すべての人にとってその人が生活している性別や性自認どおりの性別が尊重される社会になっていったらいいと思います」と語りました。

参考:NHK NEWS WEB「手術なしで戸籍上の性別変更 戸籍謄本受け取り喜び 静岡 浜松」

なお、上記の判決を受け、過去に申し立てを退けられた岡山県の当事者が、手術なしでも性別の変更を認めるように、12月に改めて裁判所に申し立てたそうです。

参考:NHK NEWS WEB「性別変更 岡山の当事者改めて申し立て 最高裁違憲判断受け」

まとめ

以上、2023年にあったLGBTの話題を5つ取り上げました。

国会での議論不足や、法を悪用した犯罪の増加が懸念されたLGBT法ですが、国民に対してLGBTを真摯に考える機会を提供したという意味で、功績があったと筆者は考えます。

個人の人格が尊重され、快適な暮らしができるように配慮されるべきであることは、社会的にマジョリティーとされる人にも、マイノリティーとされる人にも、等しく同じはずです。LGBTだけでなくさまざまな観点から、個人の人格が尊重されない状況に対して、Voista Mediaとしては敏感でありつづけたいと思っています。

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今年一年、記事をお読みいただき、ありがとうございました。
よい年末年始をお過ごしください。

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