とある日の夕方、母から電話があり、
「詐欺にあった。30万円のミシンを購入することになってしまった」
と連絡がありました。
電話では要領を得ないので急遽仕事を切り上げて実家に急ぐことに。
電車で向かっている途中に検索で調べると、コロナの影響でミシンが品薄になっていてそれに便乗した詐欺が増えていることを知りました。
2002年の型落ちミシンを12万円で購入?
実質的な被害は30万円では?
実家に帰り、母に事情を聞くと、次のことがわかりました。
- いままで使用していたミシンが故障してしまったため、新聞の折込チラシで知ったミシン業者に相談した。
- 業者が修理見積もりに訪問するも、修理ではなく購入を勧めてきた。
- 古いミシンを18万円で下取りをする代わりに30万円のミシンを12万円で購入できると言っていた。
- 購入は2日前。
- 届いた商品はなんと2002年頃の商品で、メーカーには修理パーツの在庫も無い、廃版の商品だった。
- 書類は「古いミシンの下取り証明書」「12万円の領収書」「業者の名刺」が有る。
はたから聞くと、壊れた古いミシンの買取金額が18万円という時点で怪しいのですが、訪問販売で自宅に押しかけられられて、冷静な判断ができなくなっていたようです。
また、商品代金も電話では30万円と言っていたものが12万円と、お値打ち感をアピールされていたことなど、母からしっかりと状況を聞くことができました。
状況の把握と整理をする
当事者は「詐欺にあったかも」「騙されたかも」という事情に混乱し、正確な状況を伝えられなくなっていることもあるでしょう。
そこで、当事者から事情を聞く際には次の点などを順を追って確認するとよいでしょう。
- どこでその業者を知ったか
- どのような経緯で意思を決定したか
- いつ購入・契約したか
- 何を購入・契約したか
- いくらで購入・契約したか
- どのような条件で購入・契約したか
- 契約書類は存在するのか
また、話を聞く際には、聞き漏れがないようにボイスレコーダーで会話内容を録音し、書類関係はすべてコピーを取っておくとよいでしょう。
クーリングオフの条件に該当しているかを確認する
状況を把握したところで最初に思いついたのは「クーリングオフ」でした。
今回の件では、
- クーリングオフに該当するのか?
- クーリングオフの期限まで何日の猶予が残っているか?
を調べる必要がありました。
訪問販売と訪問購入だったため、クーリングオフの対象であり、クーリングオフができる期限は契約締結から8日間だったので、残り6日残っている状態でした。
そもそもクーリングオフとは?
クーリングオフとは、契約の申し込みや契約の締結をした場合でも、一定の期間に申し出れば無条件で契約の申し込みを取り消したり、契約を解除したりできる制度です。
また、クーリングオフは特定商取引法に定められた制度のひとつで、消費者を守るルールなどが定められています。詳しくは、以下のページを参考にしてください。
特定商取引法とは|特定商取引法ガイド
https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/
クーリングオフができる取引と期間
クーリングオフができる取引と期間は以下の通り
訪問販売 | 8日間 |
電話勧誘販売 | 8日間 |
連鎖販売取引(マルチ商法など) | 20日間 |
特定継続的役務提供(エステ、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室など) | 8日間 |
業務提供誘引販売取引(内職商法、モニター商法など) | 20日間 |
訪問購入(業者が消費者の自宅を訪問し、商品の買い取りを行う取引) | 8日間 |
今回の母のケースでは訪問販売と訪問購入が該当し、8日間以内に解約する必要がありました。
ちなみに、以下のようなケースではクーリングオフ期間が切れてしまった場合でも解約できる場合があります。
- 大量の商品を買わされた場合(過量販売解除)
- 契約書面の不備や契約内容が事実と異なった場合(契約の取り消し)
- 長期にわたる契約の場合(中途解約)
クーリングオフできないケース
もし期間内だとしても、クーリングオフが適用されないケースがあります。
たとえば、
- 店舗での購入の場合
- 通信販売やネットショッピング
- 購入した商品を破損してしまった場合
などがあります。
ただし、通信販売に「返品特約」が定められている場合には特約に従い、特約がない場合には商品を受け取った日を含めて8日以内であれば、送料を消費者負担で返品することができます。
詳しい条件については国民生活センターのページをご覧ください。
クーリング・オフ|国民生活センター
http://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/coolingoff.html
消費生活センターに相談する
クーリングオフできるとわかった時点で書類の作成を開始しましたが、訪問販売と訪問購入と複数の契約解除を行わなければいけないため、書類の記載に戸惑い、翌日に最寄りの消費生活センターに問い合わせをしました。
全国の消費生活センター等|国民生活センター
http://www.kokusen.go.jp/map/index.html
結果からいうと、消費生活センターの担当の方が書類手続きも業者への連絡もしてくれました。これらはすべて自分で行うものと考えていたので、非常に助かりました。
消費生活センターに相談をした翌日には業者が下取りした古いミシンと12万円を返却に来たので、商品のミシンを返却して終了。特にトラブルなく返却できたので会話を録音はしませんでしたが、もし何かありそうなら会話を録音しておいたほうがよいでしょう。
なお、業者は最後に「またの機会がありましたらよろしくお願いします」と悪びれもせずに帰っていきました。
まとめ
多くの人が、自分は「詐欺には引っかからない」、自分の親や身内は「引っかかるはずがない」と、心のどこかで考えているのではないでしょうか。
しかし、いざ家族が被害にあってみると、いろいろな手口で丸め込み、粗悪品を高額で売りつける悪質業者が新聞の折込チラシで広告を出している事実に驚きます。
今回のような手口に引っかからないために、
- 詐欺が多いことを理解し、用心する
- 親と小まめに連絡を取り、大きな買い物をしていないかを把握する
- 一人で業者を招き入れる際には、会話を録音するように習慣づけてもらう
ことが重要だと感じました。
被害を避けるために詐欺の手口を知っておくこと、もし被害にあったときの対処法を知っておくことに越したことはありません。
万が一、被害にあったとき、あるいは、親しい人から被害を耳にしたときに、この記事を思い出していただければ幸いです。