スマートフォン(スマホ)依存の生活で脳が疲労すると、アルツハイマー型認知症に似た症状として、いわゆる「スマホ認知症」を発症する可能性があります。さらに、スマホ認知症を放置していると、将来、実際に認知症になってしまう危険性もあるようです。
たとえば、
- 会話中に単語が浮かばず「あれ」や「それ」などを多用して会話してしまう
- 新しい知り合いや芸能人の名前を覚えられない
- 予定が覚えられない(アプリのリマインダーなどで思い出す)
- 漢字が思い出せない
- 簡単な計算ができない
- 集中力が低下し、気づいたらスマホを見てしまう
- 情緒が不安定で、気分がすぐれない日が増えた
という人は要注意。
今回はそんな「スマホ認知症」が起こるしくみと、改善法をご紹介します。
スマホ認知症の症状
スマホ認知症については、近年多くの医師が警鐘を鳴らしています。「物忘れ外来」に受診する若者が増えており、それによってスマホ認知症が発見されたといわれています。
スマホ認知症の症状はアルツハイマー型認知症と類似していますが、MRI(磁気共鳴画像装置)などの検査では異常は見られないものの、認知機能テストでは機能低下が見られるというのが特徴です。
代表的な症状
- 記憶力の低下
- 集中力の低下
- 注意力の低下
- 言語障害
- 手足の痛み、動悸、めまいなどの体調不良
- 感情が不安定になる
スマホ認知症は勉強、仕事、家事といった日常生活のパフォーマンスの低下や、感情のコントロールにも影響を与え、学生や働き盛りの若年層ほど睡眠不足やうつ病を併発しやすいといわれています。また、長期間の睡眠不足や若年期にうつ病が2年以上持続すると、老年期にアルツハイマー型認知症になる危険性が2倍になるというデータもあります。
でも、安心してください。
スマホ認知症は、生活習慣で改善できるのです。
スマホ認知症の原因
アルツハイマー型認知症は、脳の中にアミロイドβ(ベータ)など「脳のごみ」と呼ばれる不要なたんぱく質が溜まってしまうことが原因です。
一方、スマホ認知症の原因は、脳の前頭前野に処理できないほどの情報が入ってくることで起こる「情報の渋滞」といえます。
ニュース、動画、SNS、LINE、メールなどなど。それらのすべてに情報が詰まっています。
さらに、動画やSNSの合間に挟まる広告や、そのページとは直接関係のない多数の広告。「内容」「記憶との関連性」「興味の有無」「快適か不快か」「デザインや色味」など、本人の無意識下でも、目に映る情報すべてを脳は処理をしています。そう考えると、脳にかかる負荷は相当なものです。
インターネットが普及してから約30年、スマホが当たり前のものになってから約10年ほどが経過しました。技術は目まぐるしく進歩してゆきますが、人間が一度に脳で処理できる容量やスピードはすぐに進化するものではありません。
また、睡眠不足による脳の処理能力低下は、誰もが経験したことがあるのではないでしょうか?
ご存じの方も多いと思いますが、スマホのブルーライトが睡眠に与える悪影響も有名です。
睡眠不足・情報の過剰摂取のダブルコンボでは、脳にはさらに疲労が蓄積されます。
スマホ認知症の改善法
さて、スマホ認知症の原因が判明れば、改善法が想像しやすいのではないでしょうか。
まず、多くの方の予想どおり、スマホの使用時間を減らすなどの「デジタルデトックス」が有効です。「それがよいのはわかるけれど、実践するのは難しい……」と感じた方も、あきらめないでください。
以下で紹介するように、生活の隙間のわずかな行動を変えるだけでも有効だそうです。
より手軽にできる順にいくつか紹介しますので、「できそう」と感じたものから生活に取り入れてみてくださいね。
1. 瞑想をする
マインドフルネスとしても注目を集めている瞑想。
数十秒、数分でも瞑想は脳をリフレッシュするといわれています。
まずは無理なくできるタイミングと長さで始めてみましょう。
2. ぼんやりとする時間を作る
移動中やちょっとした待ち時間に、スマホを触らずに、ただぼんやりとしてみましょう。
目の前の景色からも脳は情報を処理し続けていますが、スマホからの情報量の比ではありません。
また、スマホからの情報は主に脳の視覚野を使う偏った情報ですが、ぼんやりとしている間に得られるのは嗅覚や触覚などの五感がフルに活用されるバランスのよい情報といえます。
3. すぐに検索をしない
インターネットの検索機能は年々スピーディーかつ正確になっており、ごく一部の情報であったり曖昧な内容であったりしても、一瞬で正解を知ることができます。
しかし、脳科学の観点からは、思い出そうとしている間に使う脳の回路は、新しいものを創造するときに使う回路と共通しており、思い出す回路を強化することで、創造力を高めることができるといわれています。
つまり、思い出そうとする瞬間が、脳には非常に大切な時間なのです。
4. 一定のリズムで体を動かす
人間は同じ動作を一定のリズムで繰り返すと、脳がリラックスしセロトニンが活性化され認知機能が向上します。
- 散歩
- ジョギング
- サイクリング
- ボクササイズ
- ダンス
といった運動はもちろん、
- 皿洗い
- よく噛んで食事をする
といったことも有効だといわれています。
5. セロトニンを増やす
前述のとおり、セロトニンを活性化させる点に着目するのも有効です。
情緒の不安定や気分の低下といった気分障害や体調不良が目立つスマホ認知症の場合には、うつ病に近い状況となっている可能性があります。うつ病はセロトニンの低下によって引き起こされることが知られており、セロトニンを増やすことで、スマホ認知症の改善だけではなくうつ病の予防や回復にもつながる可能性が高いのです。
セロトニンを増やすには、前述のリズム運動のほか、次の方法もあります。
- 日光を浴びる
日光を浴びることで、セロトニン神経が活性化します。
散歩はリズム運動も兼ねているためとてもおすすめです。 - 必須アミノ酸のトリプトファンを摂取する
植物性たんぱく質を意識した食事がおすすめです。
大豆製品(豆腐・納豆・味噌・しょうゆなど)、乳製品(チーズ・牛乳・ヨーグルトなど)、穀物(米など)、ごま、ピーナッツ、卵、バナナなどに含まれています。そのほか肉や魚にも多く含まれていますが、動物性たんぱく質にはトリプトファンを取り込みにくくするアミノ酸も含まれているため、植物性たんぱく質が効率的でおすすめです。 - 腸内環境を整える
セロトニンの多くは腸管で作られます。
摂取したトリプトファンを効率的にセロトニンにするためにも、お腹の調子を整えてみましょう。
6. 寝る前の時間のデジタルデトックス
1日のスマホやパソコンの使用時間を減らすだけではなく、「寝る前の1時間はデジタル機器を触らない」というだけでも有効です。
情報を遮断するだけではなく、ブルーライトからの刺激も軽減され、良質な睡眠を得ることができます。
多くの方がご存じの通り、脳に溜まった記憶は睡眠中に整理されます。良質な睡眠をとることで脳が回復するのです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
「スマホ認知症」は、現代では誰もが陥る可能性がある「生活習慣病」といえるかもしれません。
「少しだけ物覚えが悪くなった。思い出しにくい。でも、スマホがあるから大丈夫!」という生活は、老齢期に大きな後悔を生むことになるかもしれません。
今回はできるだけ生活に取り入れられそうな改善法をご紹介してみましたので、どれかひとつからでもぜひ試してみてくださいね。