2019年5月29日に成立し、2020年6月(中小企業では2022年4月)から施行される法律であり、正式には「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)」の一部改正で、新設される条文などを指す。
セクシャルハラスメント(セクハラ)はすでに企業が防止措置を講じる義務があるが(男女雇用機会均等法第11条)、パワハラについては法律で明確に規定されておらず、義務が課せられてこなかったことも、パワーハラスメント(パワハラ)が横行している大きな要因といえる。
今回の一部改正では、パワハラを「優越的な関係を背景にした言動で、業務上必要な範囲を超えたもので、労働者の就業環境が害されること」と定義し、企業にさまざまな防止措置を課している。
防止措置が不十分な企業に対しては、厚生労働省が行政指導で改善を求めることや、それに応じなければ、厚労省が企業名を公表する場合もある。
企業が講じるべき防止措置としては、加害者の懲戒規定の策定、相談窓口の設置、社内調査体制の整備、当事者のプライバシー保護などが想定されている。
ただし、これらを形式的にでも整えていれば、厚労省による企業名の公表までにはいたらない可能性がある。罰則規定が見送られたのは、経団連の反対があったためといわれている。
なお、国際労働機関(ILO)条約が各国政府に対して、企業への罰則規定を求めていることもあり、国際的な水準に近づけるために、数年中に再び改正に着手する可能性がある。企業は、ILO条約を視野に入れた対策が必要といえる。