自己または他人の生命、身体、自由または財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為のこと(刑法第37条第1項)。
緊急避難は、刑事上と民事上で定義や解釈に違いがある。
刑事上の緊急避難
刑法では、緊急避難について、次のように規定している。
第37条(緊急避難)
- 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
- 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。
第1項では緊急避難を罰しないものとし、また過度な行為について情状による刑の減免を認めている。第2項は、警察官や自衛官、消防隊員などは、その業務の性質上、危険に対処する社会的責任を負っていると考えられ、緊急避難を理由にその義務に反することは認められない、とするものである。
なお、刑事上の緊急避難の成立要件は、次の4つとされる。
- 危難の現在性
- 避難の意思
- 避難行為の必要性(行為の補充性)
- 法益権衡(守られる利益が害される利益以上であること)
民事上の緊急避難
民法では、正当防衛と緊急避難について、次のように規定している。
民法第720条 (正当防衛及び緊急避難)
- 他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。
- 前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する。
第1項は正当防衛の規定であり、別途「正当防衛」を参照のこと。第2項が緊急避難の規定であり、他人の物によって生じた急迫の危難に対して、自己または第三者の権利を防衛するためにその物を毀損する行為については、不法行為による責任を問わない、とするものである。