2019年6月3日から7日まで開催されたAppleの開発者向け恒例イベント「WWDC 19」で、次期macOS Catalina以降には「iTunes」が搭載されず、「Apple Music」「Apple Podcast」「Apple TV」の3アプリに分割して提供されると発表されました。
2001年1月の登場から18年目を迎えたiTunes。
当初は動画メディアはまだ一般的ではなく(YouTubeの誕生は2005年2月)、音楽こそがパソコンで楽しむエンターテインメントの代表格でした。CDから音楽データをせっせと取り込み、iTunesに保存していたことを懐かしく思う人も多いでしょう。
2004年6月にスタートしたiTunes Music Store。音楽のダウンロード配信という新たな方法によって、パッケージ販売とは別の市場が勃興しました。
時代は移り、デバイスはガラケーからスマートフォンへ。Appleの主力製品もiPodからiPhoneやiPadへ。人びとは動画を気軽に楽しめるように。それに呼応して、2006年9月にiTunes Music Storeから「Music」が省かれ、iTunes Storeに変更されました。
さらに時代は進み、2010年代に。音楽や動画のダウンロード配信が当たり前に。CDやDVDの売上よりもダウンロード配信数が、アーティストの実績として重要視されるようになります。
そして現在。楽曲や動画をダウンロードで購入するのではなく、聴き放題・見放題の定額配信が広く利用されるように。音楽や動画をストックして楽しむのではなく、とうとうと流れる水を好きなときにすくって飲むように、いっそう気軽に楽しむ時代になっています。
iTunesのコンテンツ管理機能である「ライブラリ」は、まさにストック型のデータ管理を前提にしたもの。しかし、時代はフロー型に変わりました。このことが、iTunesの必要性に大きな疑問符がつけられた最大の理由でしょう。
音楽の販売市場はApple Musicへ。iPhoneのバックアップ機能はiCloudへ。いよいよiTunesの立つ瀬がなくなってきました。
21世紀の序盤を鮮やかに駆け抜け、全力でその役割を果たしてきたiTunes。
「終了」よりも「完了」という言葉が、iTunesにはふさわしいのかもしれません。