ホーム ビジネス 従業員の「つながらない権利」とは? 労働基準法改正の10個のポイントを徹底解説

従業員の「つながらない権利」とは? 労働基準法改正の10個のポイントを徹底解説

この記事のサマリー

  • 40年ぶりに「労働基準法」が大幅に改正される予定
  • 現行法では想定されていない多様な働き方に対応することが目的
  • 企業には就業規則や36協定、給与計算などの見直しが求められる

目次

1987年(昭和62年)の大改正以来となる「労働基準法」の大幅な見直しが40年ぶりに進んでいます。これは長年進められてきた「働き方改革」を大きく前進させるための法改正です。

現時点では、労働基準法改正の法案はまだ国会に提出されていません。2025年内の労働政策審議会での議論を経て、早ければ2026年の通常国会で法案提出、2027年前後の施行が見込まれていましたが、2025年12月23日に法案の通常国会への提出が見送られたことが報じられました。

主な理由としては、10月21日に発足した高市早苗政権が新たに立ち上げた日本成長戦略会議と足並みを揃え、国際競争力を高めるために、改正内容の調整が必要と判断されたことが挙げられます。

以下、現段階で明確になっている内容をもとに、労働基準法改正の背景主なポイント企業に求められる対応の3つを解説します。

労働基準法改正の背景

2018年に成立し、2019年から順次施行された働き方改革関連法(「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」)では、労働基準法などの改正内容について施行後「おおむね5年を目途」に検討・見直しをおこなう旨が附則に明記されていました。

近年、働き方の多様化、産業構造の変化、デジタル技術の進展などによって、現在の労働基準法では想定されていない働き方が生まれています。2020年以降は、コロナ禍をきっかけにテレワーク(リモートワーク)が急速に普及し、また、副業・兼業の解禁に踏み切る企業も増加しています。

このようなことから、労働基準法の抜本的な改正のために、2024年1月に有識者による「労働基準関係法制研究会」が厚生労働省に設置され、12月までに16回にわたる会議を開き、報告書を取りまとめました。今回の労働基準法改正は、この報告書で指摘されたさまざまな論点、示された方向性がベースになっているといってよいでしょう。

参考:厚生労働省「労働基準関係法制研究会報告書」(PDF)

労働基準法改正の主なポイント

労働基準法改正の主なポイントを10個まとめると、次のとおりです。

1. 13日超の連続勤務禁止

現行法では、特例制度を使えば最大48日の連続勤務が可能ですが、労災の精神疾患の判断基準のひとつに「2週間以上の連続勤務」であるという点も踏まえ、原則として「13日を超える連続勤務を禁止」する規定の導入が提案されています。

2. 部分的なフレックスタイム制の導入

現行のフレックスタイム制は、一部の日だけ適用するといった部分的運用が認められておらず、テレワーク日と通常の出社日が混在する場合に活用しづらいことが課題でした。そこで、特定の日(コアデイ)は通常の始業・就業時刻で勤務しつつ、ほかの日はフレックスを使える「部分フレックス制度」を導入できるような法整備が提案されています。

また、テレワーク時の新たな「みなし労働時間制」の策定も求められます。上記の部分フレックス制度の導入を前提にし、実効的な健康確保措置を設けた上で、在宅勤務に限定した制度として、個人の同意と企業による厳格な健康確保措置(客観的な勤務状況把握・医師面談義務など)を条件に、実労働時間ではなく、成果や遂行に対する時間で賃金を支払うという、より柔軟な「事業場外みなし労働時間制」の新設が想定されています。

3. 週44時間特例措置の撤廃

現在、小売業や飲食業、病院や介護施設などの小規模事業場(10人未満)に認められている措置で、法定労働時間が週40時間から週44時間に変更する特例ですが、すでに約9割近くの企業が週40時間以下で運用している実態もあり、これに合わせて週40時間へ移行する検討が進められます。

4. 勤務間インターバル制度の義務化

勤務終了後、次の始業までに一定の休息時間を設ける制度の義務化です。欧米を参考に、原則11時間のインターバルを義務化することで議論されています。

5. 法定休日の特定

現在、多くの企業では週休2日制をとっていますが、2日のうち、どちらが割増率1.35倍になる「法定休日」で、どちらが1.25倍になる「所定休日」かがあいまいなケースがあります。給与計算や休日労働の管理を明確にするため、あらかじめ法定休日を特定することを法律で義務づける検討がなされています。

6. 副業・兼業の労働時間通算

現行法では、複数の会社で働く場合は労働時間を通算して残業代を計算しなければならず、企業の受け入れの障害となっていました。過重労働防止のための労働時間通算は維持しつつ、残業代の計算上の通算については、各企業ごとに判断する(通算しない)という改正案が示されています。

7. 「つながらない権利」の明確化

休日や勤務時間外の連絡を拒否できる権利の制度化です。デジタル化が進み、昔と比べて生産性が向上した一方で、退勤後や休日も連絡に追われることが珍しくありません。いつでも誰とでも連絡が取れることの負の側面に対して、欧米を参考にルールを明確化し、時間外の連絡を拒否できる権利や、連絡可能な時間帯のルールを労使で協議することを促すガイドラインの策定が検討されています。

8. 育児・介護との両立支援

3歳以上小学校就学前の子を持つ労働者への柔軟な働き方措置が企業に義務化されます(「育児・介護休業法改正」との一貫性を確保)。

育児・介護休業法の「育児期の柔軟な働き方を実現するための措置」について、詳しくは以下の過去記事をご覧ください。

過去記事:【育児・介護休業法改正】2025年10月から変わる制度のポイント解説。より柔軟な働き方が可能に

9. 有給休暇の給与計算方法の統合

有給休暇中の給与計算には3つの計算方法(平均賃金、通常の賃金、標準報酬日額)がありますが、特にパート・アルバイトは計算方法によっては金額が低くなる問題がありました。改正法では、有給休暇を取得し安心して休めるよう、原則として「所定時間働いた場合に支払われる通常の賃金」を支払う方式へと統合する予定です。

10. 企業による労働時間情報の開示と管理監督者の健康維持

企業にとって残業時間有給休暇取得率は新規求人や離職に直結するだけでなく、就転職希望者もこれらの正確な情報を知りたいはずです。改正法では社内外にこれらの情報を開示することを規定しています。また、「管理職」(管理監督者)は労働時間規制の適用除外ですが、健康確保の措置が不十分であるとの指摘があるため、健康維持や過重労働防止を義務づける方向で検討されています。

参考:THE GOLD ONLINE「〈早わかり〉労基法大改正、通常国会提出を見送った高市総理の本気度 …目指すのは『労働時間の規制緩和』と『心身の健康維持』」【特定社労士が解説】」
参考:ジンジャー「2026年の労働基準法の改正は見送りへ!施行時期や議論中のテーマを解説」

企業は労働基準法改正にどう対応すべきか?

それでは、企業は労働基準法改正にどう対応すべきでしょうか?

まず、多様な働き方に対応するため、就業規則や社内制度の根本的な見直しが必要です。さらに、複雑な給与計算や労働時間管理体制の見直しが不可欠となるでしょう。具体的には、

  • 就業規則や36協定などの見直し
  • 人事方針の明確化と社内外への周知
  • 勤怠・給与計算システムの改修

などが必要となります。

ただし、これまで「特例」などで認められてきた例外がなくなること、あいまいだった部分を明確化することが主な対応となるので、むしろ必要なプロセスであると受け止めることが大切です。

まとめ

以上、労働基準法改正に関する重要な論点を解説しました。

今回の労働基準法改正は、企業にとって対応すべき課題や実務負荷がある一方で、従業員が安心して働ける環境を整えることで、組織の競争力強化にもつながります

法案は今後修正される可能性が高いとはいえ、上記で説明した大筋の部分は引き継がれると考えられます。今後も動向に注目していきましょう。

Voista Media編集部も開発に関わるスマートフォン向けAI録音アプリ「Voistand(ボイスタンド)」がご利用いただけます(iOS版)。

バックグラウンド録音、自動文字起こし、AIベースの話者認識など、個人にもビジネスユースにも最適な機能を搭載。ぜひお使いください!

App Storeからダウンロード

おすすめアプリ

Recommended Apps

Voista Mediaがおすすめする
ボイスレコーダー系のスマートフォンアプリをご紹介。

詳しく見る

カテゴリー新着記事

New Articles in the Same Category

週間アクセスランキング

Weekly Access Ranking

Voista Mediaとは

About Voista Media

ボイスレコーダー(ボイスアプリやICレコーダー)を使って、生活を豊かにするコツをご紹介するメディアです。もっと便利で、もっと楽しいボイレコライフを送りましょう!

AI録音アプリ「Voistand」

AI-based Voice Recording App

ボイスタメディア編集部も開発に関わるAI録音アプリ「Voistand(ボイスタンド)」がご利用いただけます(現状、iOS版のみ)。詳しくは、こちらをご覧ください。