本日は、株式会社エージェントのみんなのキャリア相談室が公開した「ハラスメントカオスマップ2021年版」をもとに、[前編]と[後編]に分けて、さまざまなハラスメント用語を紹介します。
環境が変わる春、新しいコミュニケーションの機会が増えてきます。
無意識に誰かを傷つけてしまわないため、また、自分自身を守るために、どのような行為がハラスメントに当たるのかを知っておくことが、とても大切です。
社会人に必須のハラスメント知識を身につけ、ぜひ新生活に生かしてください。
ハラスメントカオスマップ(2021年版)
まず、ハラスメントカオスマップを確認しておきましょう。
全47項目のうち、知らないものはいくつありますか?
ぜひ探してみてください。
マップを見て、
「えっ、こんなにあるの?」
「何でもハラスメントというのは、どうなんだろう……」
そんなを印象を抱いた人も多いのではないでしょうか?
そもそもハラスメントとは、人に対する「嫌がらせ」や「いじめ」などの迷惑行為を指します。
ここで大切なのは、用語を丸暗記することや略語の正式名称を知ることではなく、知らなかった用語に目を通して「こういった言動を不快に感じる人がいる」という想像力を養うことです。
以下、カオスマップにもとづき、ジャンルごとに説明していきますが、今回は中でも会社などで発生しやすい
- 職場
- ライフステージ
- 性別・国境・宗教
の3ジャンルにまつわるハラスメントを解説します。
ハラスメントの知識は、円滑なコミュニケーションを行う助けになるかもしれません。各用語に参考となる記事へのリンクを用意しましたので、該当するハラスメントで困っている人もお役立てください。
「何気ない雑談のつもりが、ハラスメントに……」なんてことにならないように、知らなかった用語やだけでもぜひ確認してみてください。
ハラスメント用語集〜会社編〜
職場
職場に関するハラスメント用語を10個、解説します。
パワハラ(パワーハラスメント)
職場で行われるハラスメントの代表例です。一般的には、優越的な関係にもとづく精神的・身体的な苦痛や嫌がらせを指しますが、2020年(令和2年)6月1日に施行された改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)では「優越的な関係を背景にした言動で、業務上必要な範囲を超えたもので、労働者の就業環境が害されること」と定義されています。
新入社員のみなさんは、パワハラを行う当事者になることはほぼないでしょう。しかし、年齢や立場が上がり、後輩や部下ができると、ついパワハラ的な言動を行ってしまう可能性があります。同じ物事を伝えるにしても、威圧的な言い方や理性を欠いた表現であれば、受け手がパワハラだと感じる可能性がある点も、しっかりと認識しておきたいところです。
過去記事:パワハラ防止法で何がどう変わる? 働く人の尊厳や就労環境を守る手立てとなるのか
モラハラ(モラルハラスメント)
道徳(モラル)を理由とした精神的な苦痛や嫌がらせを指します。
職場では、パワハラと同様、上司と部下の関係で発生しやすいといえますが、同僚間で行われたり、取引先からハラスメントを受けるなどの可能性もあります。
過去記事:モラハラとパワハラの違いとは? モラハラの定義と対処法をきちんと理解しよう
カスハラ(カスタマーハラスメント)
消費者や客の立場を利用し、企業に対して理不尽な要求や謝罪を強要する嫌がらせを指します。
- 大声で怒鳴り、長時間にわたる苦情
- 従業員の身体的特徴や性別・年齢などを揶揄
- 胸倉をつかむ、突き飛ばすなどの暴行
- 「バカ」「このやろう」「役立たず」といった罵声
- SNSで誹謗中傷する
などの行為が該当します。
過去記事:お客「役立たずなバカが! トップを呼べ!」……カスハラ客から従業員を守る理由と方法
ジタハラ(時短ハラスメント)
上司や管理職が部下に対して労働時間の短縮を強要する嫌がらせを指します。
長時間労働を防止するための具体策がないままに、社員に対し「定時帰り」を強要したり、「残業するな」と呼びかけたりすることが代表例です。
参考:en 人事のミカタ「人事労務Q&A ジタハラとはなんですか?」
テクハラ(テクノロジーハラスメント)
ITの知識が乏しい人、パソコンやスマホなどの機器の操作が苦手な人に対する嫌がらせを指します。
わざと解りそうもない専門用語で指示を出し、業務上で追い詰めたり、対応できない場合に叱責や侮辱をするなどのハラスメントが該当します。
参考:ChatWork「テクハラとは?テクノロジーハラスメントの該当事例や防止策を紹介」
テレハラ/リモハラ(テレワークハラスメント/リモートハラスメント)
テレワーク(リモートワーク、在宅勤務)を行っている従業員に対する嫌がらせを指します。
休憩時間を含めて常時カメラをオンにさせる、オンライン会議で写り込んだ自宅の様子や服装について指摘するなど、業務上必要な範囲を超えた要求を行うことが該当します。
過去記事:リモートハラスメント(リモハラ、テレハラ)とは? 快適に働くための予防法や対処法を考える
TELハラ(TELハラスメント)
電話に対して苦手意識を抱いている社員に電話対応を行わせる嫌がらせを指します。
本人の適性に関係なく、新入社員や若手写真など弱い立場の社員を担当につけることは、電話対応が苦手な社員に対して苦痛を与える可能性があります。
参考:SUNGROVE「 『TELハラ』『テクハラ』新時代のハラスメントは働き方を投影する」
エンハラ(エンジョイハラスメント)
仕事に対する楽しさを押し付ける嫌がらせを指します。
価値観や楽しみは人それぞれのため、個々が「楽しい」と感じることは自由ですが、「やりがい」や「楽しむこと」を強要したり、評価の基準としてしまうとハラスメントとなってしまう可能性があります。
参考:Agent みんなのキャリア相談室「【エンジョイハラスメントとは】仕事は楽しむべき!?意味・具体例・対策・対処法」
リスハラ(リストラハラスメント)
リストラ対象者に嫌がらせを行い、自己都合退職を促すハラスメントです。ほかのハラスメントが複合的に行われることが多く、さらに激化することも多いため注意が必要です。
ちなみに、自己都合退職と会社都合退職では、失業保険の最短支給開始日や支給期間が異なります(会社都合退職のほうが有利)。自己都合退職のあとでも、「セクハラ・パワハラなどのハラスメント」「給与の減額・未払い」「長時間労働」「採用時と実際の労働条件が異なる」などがあったと認められれば、会社都合退職と同様の条件で失業保険などを受けられる可能性があるので、ハローワークに相談してみましょう。
過去記事:ハラスメント被害にあった上、非情な退職勧告。会社都合で離職するための7つのコツ
リクハラ(リクルートハラスメント)
就職活動やインターンシップ期間中に受ける嫌がらせを指します。
性的なからかいや要求を始め、威圧的な態度での面接など、人事権をちらつかせて就職希望者や学生を追い詰める行為が該当します。
過去記事:何気ない雑談の中にNGワードが? 4人に1人が「就活ハラスメント」を受けている実態
ライフステージ
ライフステージに関するハラスメント用語を10個、解説します。
マタハラ(マタニティハラスメント)
妊娠や出産にあたって職場で受ける嫌がらせを指します。
「業務に支障をきたす」と、妊娠や出産を理由に解雇を迫られるケースもあるようです。
過去記事:妊娠中の社員「感染が怖いので」、企業「できれば出社して欲しい」。コロナ禍のマタハラとは
シンハラ(シングルハラスメント)
「結婚できないなんて、何か問題があるんじゃない?」
「独身なんだから、時間があるだろう」
など、独身でいることに対する嫌がらせを指します。
職場では、コミュニケーションの場だけではなく、業務負荷や社内イベントなどの強要、転勤を伴う人事異動などに現れることもあります。
女性ファッション雑誌『steady.』の読者アンケートでは、92%がシングルハラスメントを経験しているとの結果が出ているそうです。
参考:Agent みんなのキャリア相談室「92%が経験!”シングルハラスメント”の意味・具体例・対処法」
マリハラ(マリッジハラスメント)
「結婚しないの?」
「いい人紹介しようか?会社の◯◯さんなんてどう?」
など、結婚について精神的な苦痛を与えることを指します。結婚するのが当たり前という価値観の下で発生しやすいハラスメントです。
マリハラは、民法により「他人の権利を侵害した」として損害賠償に該当する可能性があるそうです。
参考:mitsucari「マリッジハラスメント(マリハラ)とは?結婚に関する価値観も変化」
子なしハラ
「まだ子どもを持たないの?」
「早くしないと子どもを産めなくなるよ」
など、子どもがいない人に対して不快な言動や行動をとることを指します。
シングルハラスメントの事項でも同様の例を挙げましたが、子どもがいないからと過剰に仕事を押し付ける行為もハラスメントに該当します。
参考:Agent みんなのキャリア相談室「【子なしハラスメントとは】根強い固定観念が原因!意味・具体例・対処法・対策」
パタハラ(パタニティーハラスメント)
男性が育児参加をするために、育児休暇や時短勤務制度の取得をすることに対する嫌がらせを指します。
上司が制度の利用を阻害するような言動を行ったり、育休制度を取得したことにより、昇進や昇格などの人事考課で不利益を被ったという事例もあるようです。
参考:MOTIVATION CLOUD「パタハラとは?発生する原因は?対処法や予防策を徹底解説」
ゼクハラ(ゼクシィハラスメント)
交際中の女性が交際相手の男性に、結婚のプレッシャーによって精神的な苦痛を与える行為を指します。結婚情報誌『ゼクシィ』から生まれた用語です。
参考:言葉の手帳「『ゼクハラ』の使い方や意味、例文や類義語を徹底解説!」
ケアハラ(ケアハラスメント)
働きながら介護を行う人に対する嫌がらせや不利益を与える行為を指します。
「家族の介護のため残業ができない」「休暇をとる必要がある」という従業員に対して介護休暇の取得の妨害や人事評価を下げるといったケースもあるようです。
介護休暇や介護休業は、育児・介護休業法で認められた労働者の権利である点に留意しましょう。
参考:日本の人事部「ケアハラスメント(ケアハラ)」
参考:労務SEARCH「介護休暇とは? 介護休業との違いや対象者、介護休業給付金制度を解説!」
告白ハラ(告白ハラスメント)
告白によって精神的な苦痛を与えることを指します。
特に職場の場合は「告白された人とは一緒に働きづらい」「上司からの告白は人事評価に影響するのでは」など、告白された側の精神的苦痛につながる場合があります。
告白後もしつこくアプローチを行った場合にはセクハラ、立場の違いを利用して迫った場合にはパワハラにも該当する可能性があります。
参考:Agent みんなのキャリア相談室「【告白ハラスメントとは】押しつけNG!意味・具体例・対策・対処法」
ラブハラ(ラブハラスメント)
「恋人いないの?」
「もっと服装をこうすればモテるのに」
など、恋愛に関する言動で相手に精神的な苦痛や不快感を与えることを指します。
参考:Agant みんなのキャリア相談室「【ラブハラスメントとは】恋愛話禁止!?意味・事例・対策・対処法」
エイハラ/ジェネハラ(エイジハラスメント/ジェネレーションハラスメント)
年齢や世代の違いによる差別や嫌がらせを指します。
- 若さを理由にした雑用の押し付け
- 飲み会の出席の強要
- 定年が近い社員に仕事を回さない
- 「おじさん」や「おばさん」と呼ぶ
- 「今どきの若い人は」と揶揄する
など、さまざまな相手が対象となりうるハラスメントである点に気をつけましょう。
参考:mitsucari「エイハラの具体例や対策方法とは?年齢や世代への発言には注意しよう」
性別・国境・宗教
性別・国境・宗教に関するハラスメント用語を6個、解説します。
セクハラ(セクシャルハラスメント)
さまざまなハラスメント用語の中でも、パワハラと同じくらいに有名な言葉です。性的な言動によって個人または職場全体に不利益・不快感を与えることを指します。
主に男性から女性へ行われるケースが多いのですが、マリハラ(マリッジハラスメント)のようなかたちで、女性から男性に行われることもありえます。
録音データなどが証拠となり損害賠償が認められたセクハラ事件もあります。
過去記事:裁判所の判例の探し方と、判例で見る「パワハラ」「セクハラ」事例
ジェンハラ(ジェンダーハラスメント)
「男のくせに」「女のくせに」
「男なんだから〜」「女なんだから〜」
など、ひとりの人間としてではなく、性別による差別や役割の押し付けを行うことです。性別によって社会的役割が異なるという意識や固定観念が元になっていることが多いでしょう。
職場の場合では、女性従業員だからとお茶汲みをさせるのもジェンダーハラスメントといえます。
過去記事:ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)とは? セクハラとの違い、LGBTやSOGIとの関係を解説
レイハラ(レイシャルハラスメント)
「外国人だから考え方が違うね」
「外国人なのに日本語がうまいね」
など、人種(レイシャル)にまつわる差別や嫌がらせを指します。
相手の国や文化を否定するのはもちろんNGですが、「外国人やハーフだから取引先に信用されない」など、個人の能力とは関係ない理由で特定の業務から外すことも差別になります。
日本ではまだ馴染みが浅いかもしれませんが、職場の多様性が求められていく中で、これからどんどん意識していかなくてはなりません。本人の個性や能力とは関係なく、「外国人」や「ハーフ」といったレッテル貼りをしていないかに注意が大切です。
参考:Manegy「レイハラ(レイシャルハラスメント)とは?」
テクハラ(テクスチュアルハラスメント)
「女なのに論理的な書き方をする」
「女(男)にこんな文章は書けない」
「こんな企画書は女(男)が考えられるわけがない」
など、文学作品について性差別を行うことを指します。
主に女性の作家などに対して行われる差別的発言ですが、男性作家の場合も性別を軸に評価がなされた場合にはテクスチャルハラスメントに該当します。
参考:LEGALCONNECT「テクスチュアルハラスメントとは|被害にあったときにできる4つの対処法」
ソジハラ/ソギハラ(SOGIハラスメント)
性的指向(好きになる性)や性自認(心の性)に関しての差別や嫌がらせを指します。
- 心の性が一致しない学生や従業員に戸籍上の性の制服を強要
- 雇用主や学校が従業員や学生に対し、使用するトイレの配慮を行わない
- カミングアウトした事柄を周りへ言いふらす(アウティング)
なども該当し、改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)にもSOGIハラスメントの防止に関する事項が追加されています。
参考:dodaチャレンジ「SOGIハラとは?職場におけるSOGIハラの事例・対処法について」
ブラハラ(ブラッドタイプハラスメント)
「O型だから〜〜だよね」
「O型とは相性が合わない」
など、血液型を理由に相手に不快な思いをさせることを指します。
ちなみに、いわゆる「血液型占い」は日本の独自文化で、科学的根拠はないと考えられています。
参考:mitsucari「ブラハラとは?血液型診断による性格との関係で不快な思いをさせない」
まとめ
以上、[前編]では計26個のハラスメントを解説しました。
今回は職場など会社内で起こりやすいハラスメントを紹介しました。人によって不快に感じるポイントが異なることがご理解いただけたでしょう。「このような話題が、誰かを不快にするかも」と知っておくだけでも、会話の途中で相手の異変に気づいたり、適切な話題を選んだりするのに役立つはずです。
今回紹介しきれなかったものは、次回[後編]で取り上げます。
職場内や新しく出会った相手とのコミュニケーションにぜひご活用ください。
現在、継続的なハラスメントで悩んでいる人や、「これってハラスメント?」と感じている人は、ボイスレコーダー(録音アプリなど)を活用してみるとよいかもしれません。第三者への相談の際に録音データを役立てる、いざというときの証拠にできるなど、心強い味方になります。
過去記事:Google カレンダーと連携して録音! 音声データが探しやすい「Voistand」がおすすめ
過去記事:ペン型ICレコーダーで、オフィスの嫌な奴をギャフンと言わせたい! 手ごろな3商品の中で、買うならこれだ!