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性犯罪・性的暴力に関する意識調査。性犯罪の要件見直しに賛成6割、厳罰化希望は9割

この記事のサマリー

  • 全国の20代から50代の男女1,000人を対象にした調査結果
  • 性犯罪・性的暴力の厳罰化を求める声が多数
  • 改正刑法では、性交同意年齢が13歳から16歳に引き上げ
  • 時代に合わせた性教育・啓蒙活動が求められる

目次

今年6月、BIGLOBEが全国の20代から50代の男女1,000人を対象にアンケート形式で「性的暴力に関する意識調査を実施し、結果を公表しました。

この調査では、性犯罪の要件見直しや刑法改正、性的暴力の厳罰化、性教育の開始年齢、性的暴力・性的ハラスメントを受けたときの対応など、さまざまな質問がなされており、有意義なデータが示されていると思います。

以下、この調査について詳しく見ていきましょう。

データ・画像出典:BIGLOBE「性的暴力に関する意識調査」

性犯罪の要件見直しや刑法改正には、約6割が賛成

性犯罪の要件見直しや刑法の改正に関してという質問では、「賛成」が56.9%、「反対」が7.3%、「わからない」が36.8%という結果でした。

男女別では、女性の方が「賛成」と回答した人の割合がやや高く、57.4%でした(男性は56.4%)。年代別では50歳がもっとも高く、63.6%でした。

ちなみに、刑法というのは、主に

刑法 第177条(強制性交等罪)
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛(こう)門性交又は口腔(くう)性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。 十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

という規定を指します。

110年間、大幅な改正がなかった刑法が、2017年6月に改正され、上記の規定は「強制性交等罪」となり、懲役5年以上、性交の範囲の拡大、非親告罪化などがなされました。改正以前は「強姦罪」として、「男性器が女性器に挿入された場合のみ」「被害者は女性、加害者は男性のみ」で、3年以上の懲役でした。

なお、改正はされたものの、

  • 公訴時効
    強制性交等罪は10年、強制わいせつ罪は7年を過ぎたら加害者を罪に問えない
  • 暴行脅迫要件
    裁判で暴行脅迫が立証できなければ、不同意でも罪に問えない
  • 性交同意年齢
    13歳以上の被害者には、成人と同じ暴行脅迫要件が適用される
  • 地位関係性を利用した性行為
    対等でない関係における被害は潜在化しやすい

といった点がまだまだ不十分だとして、さらなる改正を求める動きがあります。

参考:法務省「見直そう! 刑法性犯罪」(PDF)

このような状況を受けて、今年6月16日に、性犯罪の規定を大幅に見直す改正刑法が、参院本会議で全会一致で可決・成立しました。強制性交等罪と準強制性等交罪が統合され、名称が「不同意性交等罪」に改められることになり、暴行脅迫以外の不同意要件の追加、公訴時効の5年延長、性交同意年齢の16歳への変更、性的グルーミング(懐柔)罪や撮影罪の新設などが行われています。

参考:朝日新聞デジタル「改正刑法など成立 強制性交罪は『不同意性交罪』へ 要件を明確化」

性的暴力へは、約9割が厳罰化を求める

性的暴力への対応についてという質問では、「厳しく対応するべきだ」と回答した人の割合が85.5%、「厳しく対応するべきではない」が14.5%で、厳罰化を求める声が約9割となりました。

割合は女性の方がやや高く、87.0%でした(男性は84.0%)。年代別では50代がもっとも高く、93.2%でした。

性的暴力に対して、法律上もっとも厳しい国であるイギリスでは、暴行脅迫要件がなく「不同意」で犯罪が成立し、性交同意年齢は「16歳以上」(日本では13歳以上、改正刑法では16歳以上)、法定刑は「終身刑」、公訴時効は「時効なし」です。おおむね西欧諸国のほうが性的暴力に対する罰則が厳しく、アジア諸国は厳しくない傾向があります。

性教育を開始すべき年齢は「10歳〜12歳」が最多

性的同意を含む、性教育がどの年代から行われるのが良いと思うかという質問には、「10歳~12歳」と回答した人がもっとも多く、37.6%と約4割でした。

筆者自身、小学校高学年の子を持つ親として、若年層を対象にした性犯罪がしばしば発生していること、子どもが思春期に向かって性的な興味が増すことから、一定の性教育は必要だと考えます。ただし、性教育の中身が問題であって、性犯罪に巻き込まれることを防ぐための教育が重視されるべきであり、性的同意(性的な行為について、その行為を積極的にしたいと望むお互いの意思を確認すること)については慎重にすべきでしょう。

さて、性行為をする際、同意を取っているかという質問については、「同意は必ず取る」と回答した人の割合は50.7%と、約半数でした。

男女別では、男性が54.4%、女性が47.0%。世代別では30代と50代が過半数、20代と40代では半数以下と、少しバラツキが見られました。

性的同意に対する意識教育・啓発はできているかという質問については、総合的にみて「できていると思う」が15.0%、「足りていないと思う」が85.0%でした。学校、家庭、学校・家庭以外では「足りていないと思う」が80%〜85%となりました。

すでに触れたとおり、日本では性交同意年齢が13歳以上とされていましたが、改正刑法では16歳以上に変更されます。したがって、性的同意について早いうちから教育することは、このような法改正の流れと矛盾します。

もちろん、高校生や大学生など、性交同意年齢に達した16歳以上の若者に対して、性的同意の大切さや、性犯罪・性的暴力の抑止につながる教育を行うことは重要です。

今後、時代に合わせた性教育や啓蒙活動がいっそう求められると考えます。

性的暴力やハラスメントに声をあげられると思う人は、約5割

性的暴力や性的ハラスメントを受けた時、声をあげられると思うかという質問には、「思う」が48.8%、「思わない」が51.2%と、ほぼ半々の割合となりました。

男女別では、男性は「思う」が54.4%、「思わない」が44.6%、女性は「思う」が42.2%、「思わない」が57.8%と、12ポイント近く差が開きました。つまり、女性のほうが声をあげることに消極的といえます。別の見方をすれば、女性のほうが受け流す能力が高いのかもしれません。

上記の質問に対して「思わない」と回答した512人にその理由を複数回答で質問したところ、

  • 「人に知られたくないから」が50.8%
  • 「仕事や周囲への影響を考えて」が42.4%
  • 「自分が責められないか不安だから」が31.6%
  • 「相手との関係を考えて」が28.9%
  • 「その他」が4.5%

という結果となりました。

自身が性的暴力や性的ハラスメントを受けた場合、話や相談をしやすいかという質問(5つの選択肢)については、「話(相談)しやすい」の割合がもっとも高かったのは「専門の相談窓口」で52.7%、次いで「家族」で42.7%でした。反対に「話(相談)しづらい」の割合が一番高かったのは、「周囲の関係者」で70.4%でした。

この結果は、声をあげられない理由として「人に知られたくないから」「仕事や周囲への影響を考えて」が上位にあがっていたことと相関していると考えます。つまり、「周りの人に迷惑をかけたくない」と思う日本人の心理が反映されているといえます。

まとめ

以上、BIGLOBEが行った「性的暴力に関する意識調査」を詳しく見ました。

性犯罪・性的暴力やハラスメントという切り口から、非常に示唆に富む調査だと感じました。特に「性教育」については、体や脳の成長に個人差のある子どもたちに対して、どのようなアプローチが適切なのかを、しっかりと議論する必要があると考えます。また、性犯罪・性的暴力に対する厳罰化について、性教育の中でその理由をきちんと説明し、子どもたちに理解してもらうことが、将来的な犯罪抑止につながると思っています。

Voista Mediaでは、「ハラスメント」カテゴリーで、さまざまな話題を取り上げ、考察を加えています。
ぜひ興味のある記事をお読みいただければ幸いです。

※ 本記事のメインビジュアルは、男女共同参画室 令和3年度「性暴力を、なくそう」ポスターをお借りしました。

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