ホーム ハラスメント 世代連鎖するスポーツ体罰。ハラスメントをなくすために指導者や保護者に求められる姿とは?

世代連鎖するスポーツ体罰。ハラスメントをなくすために指導者や保護者に求められる姿とは?

この記事のサマリー

  • スポーツの現場で「言葉による暴力」を見聞きした指導者は 6 割
  • 「暴力、パワハラは駄目だと理解しても、それに代わる指導法がわからない」という指導者も
  • 人間は萎縮した状況では本来の力を発揮しにくくなる
  • 子どもたちの人生や日本のスポーツ界の発展のためにもハラスメントのない環境作りが必要

目次

体罰が子どもの成長に悪影響を与えることは、さまざまな研究で明らかになっています。私たちの意識も、数十年前に比べると変わってきたように思えるのではないでしょうか?

しかし、スポーツ界に目を向けると、殴る蹴るなど直接的な暴力は減少傾向にあるものの、パワハラ(パワーハラスメント)や暴言は増加傾向にあると、日本スポーツ協会(JSPO)の調べで明らかになっています。

スポーツの場でハラスメントが残り続けているのは、いったいなぜなのかを調べてみると、根深い原因が見えてきました。

近年のスポーツに関する体罰・ハラスメント調査

JSPOの日本スポーツ協会公認スポーツ指導者を対象としたオンライン調査では、「過去5年以内にスポーツ指導現場で何らかのハラスメントを見聞きしている指導者は半数以上」という結果でした。

  • 「言葉による暴力」を見聞きした指導者は6割
  • 「体罰やしごき」を見聞きした指導者は4割
  • 「セクシャルハラスメント」を見聞きした指導者は3割

また、「言葉による暴力」の被害を受けている対象としては、小学生年代の割合が一番高く、そこから年齢に応じて減るものの、全体を通して3割以上となっています。

幼児が4位と小学生年代より低いのは、保護者の観察下で指導が行われるため、行き過ぎた行為がなされにくいのかもしれません。

「言葉による暴力」の被害が見聞きされた対象世代

1 ⼩学⽣年代 41.2%
2 中学⽣年代 40.3%
3 ⾼校⽣年代 39.5%
4 幼児 39.1%
5 ⼤学⽣年代 37.9%
6 23〜29才 32.1%

出典公益財団法人 ⽇本スポーツ協会(JSPO) 「公認スポーツ指導者を対象としたオンライン調査報告書」

上記の調査結果は、公認スポーツ指導者が見聞きした結果となっているため、競技水準も「都道府県大会レベル」の割合がもっとも高く、全国⼤会レベル、ブロック⼤会レベルがそれに続いています。

しかし、規模の小さいスポーツ少年団などでは保護者や近隣の大人が指導者や監督を務めている場合もあり、「我流の行き過ぎた指導に疑問を感じる」「不適切な発言を見聞きした」という保護者の声もあります。

スポーツの現場でハラスメントが発生しやすい状況とは

パワハラが起きやすい環境として、

  • コミュニケーションが少ない
  • 失敗が許されない雰囲気がある

という特徴が挙げられます。

勝ち負けが明確なスポーツの世界では緊張感が常に隣り合わせであり、贔屓(ひいき)と取られないよう選手と明確に距離を置く指導者もいるため、個人的なコミュニケーションが不足しがちです。

なお、立場の違いを利用したセクハラ(セクシャルハラスメント)は選手の年齢層によってその性質が大きく異なるといわれています。

①年少者を対象としたもの
まだ判断能力が低い小中学生の無知につけこんだセクハラ。思春期あたりの子どもは、自分の気持ちを誤解し、指導者に特別な感情を抱くことがあるが、それを利用し特別な関係に至るケース。

②年長者を対象としたもの
本人に判断能力があっても、狭い世界の中で絶対的な権力を持つ指導者に逆らえない関係性につけこんだセクハラ。「チームをまとめるためには、心を通わせる必要がある」などと言って、指導者が男女の関係を強要するようなケース。中でも大学生に対するセクハラは多い。

出典TORCH「勝利至上主義が視野を狭める、スポーツのハラスメント問題」

体罰・ハラスメントの連鎖を断ち切るために

体罰やハラスメントが根絶されにくい背景としては、「現役時代に体罰を受けて成績を残し、成功体験になっている」指導者の存在があるといわれています。

「暴力、パワハラは駄目だと理解しても、それに代わる指導法がわからない」という指導者も多いため、日本スポーツ協会(JSPO)では地域指導者のマッチング推進や、参加者同士でのグループワークなどのアクティブラーニング形式を取り入れた養成講習会を実施しているようです。

参考PR TIMES STORY「運動部活動指導者の実態調査から見えてきた課題と、JSPOの取り組み」

スポーツでも仕事でも、人間は萎縮した状況では本来の力を発揮しにくいものです。

前掲の調査結果のとおり、幼い子どもほどスポーツの場でハラスメントに遭いやすく、肉体的にも未熟で社会的な選択肢が少ない子どもたちは、いともたやすく大人によって抑圧されてしまいます。また、感受性の高い子どもが受けた心の傷は、後々の人生観に大きな影を残します。

体罰やハラスメントによって選手を追い込むことは、短期的な成果につながったとしても、長い目で見れば正しいコーチングとはいえないのではないでしょうか。

その競技を好きな子どもたちの道が途絶えてしまえば、日本のスポーツ界が発展するための足かせとなります。

子どもたちが肉体的にも精神的にも伸びやかにスポーツが行えるよう、指導者や保護者となる大人たちはハラスメントが行われている事実を深刻に受け止める必要があるでしょう。

日本スポーツ協会(JSPO)の「スポーツ指導者の倫理ガイドライン」では、スポーツ体罰・ハラスメントに関するチェック項目があります。

もし指導者や保護者の方で考えや行動に当てはまるものがあった場合には、その問題点を考えてみてください。

画像引用公益財団法人 日本スポーツ協会(JSPO)「スポーツ指導者の倫理ガイドライン」

まとめ

いかがだったでしょうか?

2022年2月3日からは北京オリンピックもはじまり、2年連続のオリンピックイヤーとなります。

スポーツへの関心が高まる中、身の周りで行われているスポーツの現場で誤った指導が行われていないかを、少し敏感に観察してみてください。

特に、小学生のスポーツの現場では、保護者が指導者になるケースが少なくありません。熱心になり過ぎて、乱暴な声がけや体罰に近い行為(物を投げつけるなど)を行わないよう、保護者同士が意識合わせをしておくことが大切と考えます。

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