肌身離さずそばにあるあなたのスマートフォンが、もし盗聴に使われていたら……。起きてから寝るまでの行動、仕事・家族・友人との会話まで、私生活の多くが他人に把握されているかもしれません。
遠隔にある犯人のスマホをそのまま録音機として盗聴するだけではなく、盗難防止や見守り用のアプリケーションを悪用し、スパイアプリとしてスマホの中身を丸ごと覗かれてしまうということもあるようです。
スマホの盗難防止のために開発されているアプリの中には、アイコンを非表示にできるものもあり、巧妙に盗聴されている、ということがありえるのです。
当然ながら、他人のスマホにアプリを無断でインストールし、個人情報の盗み見や、盗聴・盗撮を行うことは違法です。
今回は、どのようなアプリケーションが危険となるのか、アプリが無断インストールされていないか確認をする方法を紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
他人のスマホを遠隔操作できるアプリ
スマホで盗聴を行う際に使われやすいのは、
- 他人のスマホを遠隔操作できるアプリ
- 盗難防止アプリ
の2つです。
これらのアプリは、社用スマートフォンの管理や子供の見守りとして開発されたものが多いのですが、一部については巷で「不倫・浮気調査アプリ」とも呼ばれているようです。
スマホの遠隔操作は、たとえば「遠方に住む親がスマホを購入したが、操作方法がわからないので、代理で操作を行うときに便利なアプリ」というと、具体的な利用シーンが思い浮かぶでしょう。
遠くにあるスマホを手にすることなくあらゆる操作ができるため、悪用されると、周囲を撮影・録音し、盗聴主に送信をしたり、LINEやメールを覗き見るといったことができてしまいます。夫婦間の浮気調査など、やむにやまれぬ目的のほか、知り合いからのストーカー行為などに使われる可能性があるのです。
あらためて、遠隔操作でできることと、Android・iPhone対応アプリをまとめると、次のとおりです。
遠隔操作でできることの例
- 位置情報の確認
- 撮影
- 録音
- ブラウザの閲覧履歴の確認
- SNSの履歴確認
- 通話履歴の確認
- アドレス帳の確認
- スクリーンショット撮影
- ホーム画面でのアイコン非表示化(一部アプリ)
Androidの代表的なアプリ
- Cerberus(ケルベロス)
Android・iPhone両対応の代表的なアプリ
- mSpy(エムスパイ)
- Prey Anti Theft(プレイ・アンチ・セフト)
- Life360(ライフ360)
- TrackView(トラックビュー)
- AirDroid(エアードロイド)
アプリの確認・削除方法
Android
不審なアプリがインストールされていないか、Androidでの確認は以下の通りです。
- Androidスマートフォンの「設定」画面を開く
- 「アプリと通知」の項目を選び、「○○個のアプリをすべて表示」を選択
- インストールされた全てのアプリの中に、前述のアプリ(「Cerberus」や「mSpy」など)の有無を確認
- インストールされていた場合は、該当アプリが表示された画面から「アンインストール」を選択して削除
iPhone
不審なアプリがインストールされていないか、iPhoneでの確認は以下の通りです。
iOS14以降の場合(Appライブラリから削除)
- ホーム画面の最後のページの右側をスワイプ
- 画面上部の検索バーをタップ
- アプリ一覧(ABC順、あいうえお順)の中に、前述のアプリ(「Cerberus」や「mSpy」など)の有無を確認
- インストールされていた場合は、該当アプリアイコンを長押しし、「Appを削除」を選択して削除
iOS14以前のバージョン(設定から削除)
App Storeでアプリを検索
- ホーム画面から[App Store]を選択
- [App Store]画面右上の人型アイコンを選択
- [購入済み]を選択
- [自分が購入したApp]を選択
- アプリ一覧の中に、前述のアプリ(「Cerberus」や「mSpy」など)の有無を確認
- インストールされていた場合、ホーム画面から[設定]を選択
- [一般]を選択
- [iPhoneストレージ]を選択
- 該当するスパイアプリ(監視アプリ)を選択
- [Appを削除]を選択
- 確認画面が表示されるので、もう一度[Appを削除]を選択
不審なアプリを削除した後の対策
不審なアプリを削除した後も、油断をしてはいけません。
他人のスマホを無断で操作し、個人情報を取得し悪用することは犯罪です。警察への相談や、スマートフォンの初期化を行うことが望ましいでしょう。
スマートフォンの初期化が難しい場合でも、最低限、以下を変更しておきましょう。
- スマートフォンのパスコードの変更
- GoogleアカウントやApple IDのIDやパスワードの変更
盗聴防止技術の開発
スマホに限らず、スマートスピーカーや音声アシスタント家電まで、昨今ではさまざまな電子機器にマイクが内蔵されています。
2019年に、Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftがユーザーの音声データを不正に取り扱っていたことが明らかになりました(過去記事 GAFAMの音声データの取り扱いと、プライバシーやセキュリティに関する課題 参照)。
必ずしも悪用目的ではなく、技術開発のために使われている可能性が高いとはいえ、あなたのそばにある音声アシスタントや音声認識システムはあなたの会話を常に録音し、何らかの処理に利用している疑いは拭い切れません。
このような問題に対し、米コロンビア大学の研究チームは、自動音声認識(Automated Speech Recognition、ASR)システムに対して、不正に取得される可能性のある音声を、わずかなボリュームの音で改ざんし、盗聴を妨害する技術「Real-Time Neural Voice Camouflage」を発表しました。「Camouflage(カモフラージュ)」は「迷彩」という意味です。
参考:IT media NEWS「“スマホのマイクでこっそり盗聴”を妨害する技術 静かな音で会話内容を改ざん」
日々進化を遂げている音声認識技術は、多少の雑音の中でも正しく会話を聞き取り、適切な処理を行っているため、単にノイズを発生させるだけでは盗聴を妨害しにくくなっています。たとえば、効果的な妨害音とされる音を生成するにも、リアルタイムに処理することは困難とされていました。
そのような中で「Real-Time Neural Voice Camouflage」では、数秒先の会話を予測することで最も有効な妨害音を生成することや、部屋にいる人に気づかれないような音量での妨害に成功したとのことです。
このように、音声録音や音声認識技術が進化する一方で、盗聴を防止する技術も開発が進んでいます。近い将来、スマホひとつで盗聴の妨害ができるようになるかもしれません。
まとめ
いかがだったでしょうか?
スマホには個人情報が詰まっています。監視や調査、ストーカー目的だけではなく、クレジットカード情報やネット銀行の口座情報などの不正利用の被害に遭う可能性があり、不審なアプリには誰しもが気をつけたいところです。
また、不審なウェブサイトのリンクをクリックしてしまった場合や、不審なメールの添付ファイルをクリックしたことでアプリがダウンロードされてしまうこともありえます。
ぜひ、スマホのアプリ一覧を定期的に確認してみてくださいね。