2024年12月4日、三重県桑名市は悪質な客からの迷惑行為「カスタマーハラスメント」を防止するため、客の「氏名公表」を含んだ全国初の条例案を市議会に提出しました。可決されれば、2025年4月1日に施行されます。
桑名市の伊藤徳宇市長は「従業員が安心して働ける環境を確保し、事業者らが安心して事業活動を行うことができるよう条例を制定するもの」とし、市がカスハラの相談窓口を設置し、弁護士らで作る第三者機関が悪質と判断した場合は警告。それでも繰り返した場合は、市のウェブサイトなどで氏名を公表する制裁措置を課すとしています。
警告書の例。
カスハラを繰り返した場合は、氏名公表も
客の行為がカスハラと認定された場合、次のような警告書が当人に渡されるようです。
すでに触れたとおり、警告されてもカスハラを繰り返した場合は、氏名を公表することがある、とされています。
画像出典:東海テレビ「悪質な客は『氏名公表』も…全国初のカスハラ防止条例案に地元から賛否『直らないなら』『そこまでするか』」
氏名公表の抑止効果は?
公表された側は「デジタルタトゥー」に?
氏名公表には賛成の声が多い中、一部には否定的な意見もあります。たとえば、「名前までは出さず、出入り禁止などの措置がよい」「その人のプライバシーが不当に侵されるのではないか」といった意見です。
もちろん、氏名公表の抑止効果は高いでしょう。また、何かあったときには市に相談できるという安心感を市民に与える効果も期待できます。
一方、市のウェブサイトなどで氏名を公表された当人のことを考えると、それが一生にわたって「デジタルタトゥー」のように残ってしまう可能性があります。周囲からの当人への嫌がらせなども考えられるでしょう。しかし、一度だけの迷惑行為で氏名公表にいたることはなく、あくまでカスハラを繰り返した場合に限られるのですから、極めて限定的といえます。さらに、制裁措置や罰則なしの規定では実効性に疑問が残ることから、三重県桑名市はあえて「氏名公表」にまで踏み込んだ条例案を策定したものと考えられます。
条例案の提出に先立つ12月2日に、ケンタッキーフライドチキンがカスハラに関するポスターを公表したことをご存知の方もいるでしょう。「KFC店舗をご利用いただく一部のお客さまから、従業員に対するカスタマーハラスメントに該当する迷惑行為を見受けることがあり、これらの行為は、KFCで働く仲間たちの心身の健康と安全を損なう恐れがあります」とし、店舗への対応ポスターの掲示も行っていくとのことです。
画像出典:日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社「カスタマーハラスメントに対する方針のお知らせ」
まとめ
日々、カスハラのニュースが後を絶ちません。このような状況に歯止めをかけようと、今年10月には東京都が全国で初めて、11月には北海道が全国で2番目に、都道府県としてカスハラ防止条例を制定しました。自民党、立憲民主党、国民民主党がカスハラ対策の法制化を提言したり、全国の市区町村で対策指針を公表したり条例化を目指すなど、カスハラ防止に向けた動きが広がっています。
カスハラに対して世間が厳しい目を向け、自治体による条例化によって「カスハラは許されない行為である」との認識が広がることで、これまで以上に働きやすい環境になること、働くことによろこびを感じられる社会になることを期待します。