ホーム ハラスメント 日本における#MeToo運動の展開と今後。これまでの社会の変化、私たちの心の変化を探る

日本における#MeToo運動の展開と今後。これまでの社会の変化、私たちの心の変化を探る

この記事のサマリー

  • 日本でもアメリカの#MeToo運動に続く動きが
  • フジテレビのセクハラ問題が日本版#MeTooに火をつけることに
  • 社会全体が「性暴力やハラスメントにNoと言おう」という方向に進んでいる
  • 刑法では強姦罪が強制性交等罪に、さらに2023年には不同意性交等罪に
  • 日本版#MeToo運動を発展させるには、意識改革や法制度の整備などが必要

目次

日本でもジャニーズ問題やフジテレビ問題など、ハラスメントに関する話題が世間を騒がせています。

2017年、ハリウッドで映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインによる性的暴行事件が暴露され、これをきっかけに世界中で「#MeToo」(私も)というハッシュタグを用いた告発運動が広がりました 。著名女優を含む多くの女性たちが自らの被害を次々と公表し、長年黙殺されてきたセクハラ・性的暴力の実態に光を当てたのです。

以下では、日本で続々と明るみになっているハラスメント問題を、#MeToo運動に関連づけながら説明しましょう。

ハリウッド発の#MeTooが日本にもたらしたもの

ハリウッド発の「#MeToo」動きは日本にも大きな影響を与えました。ちょうど同じ2017年、日本でもフリージャーナリストの伊藤詩織さんが、自身が受けた性暴力被害を実名で告発する手記『Black Box』を出版し、大きな反響を呼びました 。それまで日本では、強姦被害を公に訴える女性はほとんどいませんでしたが、伊藤さんの勇気ある行動は「私も同じ被害に遭った」という共感の輪を広げ、日本版#MeToo運動の機運を高める契機となりました 。

伊藤さんの告発後、国内でもセクハラ告発への関心が高まり始めました。たとえば2018年には財務省の福田淳一事務次官が女性記者へのセクハラ疑惑で辞職し、野党の女性議員が国会で「#MeToo」と書かれたプラカードを掲げて抗議する一幕もありました。

このように、ハリウッドでの動きを受けて日本でも被害を声に出そうという機運が生まれ、2018年には伊藤さんを含む活動家たちが「#WeToo Japan」というムーブメントを立ち上げ、被害者や支援者が連帯できる場を作ろうとしました 。伊藤さん自身、「ようやくこれは人権の問題だと人々が気づき始め、今この機会を逃してはいけない」と語っています。

ハリウッド発の#MeTooは、日本の女性たちに「自分だけじゃない」「声を上げてもいいんだ」と思わせる大きなきっかけを与えたのです。

フジテレビのセクハラ問題が突きつけた課題

世界的な#MeTooから数年遅れて、日本のエンターテインメント業界でも「沈黙のタブー」が次第に明るみに出るようになりました。

その象徴的な出来事が、2024年末に発覚したフジテレビを巡る性加害スキャンダルです。国民的人気グループSMAPの元リーダーで、同局の看板番組司会者でもあった中居正広氏が、2019年に番組スタッフの女性に性的暴行を働き、金銭で「解決」していたと週刊誌に報じられました 。

この報道に端を発し、フジテレビ社内で長年女性アナウンサーを接待要員のように扱ってきた実態や、局幹部による組織的な隠蔽疑惑まで次々と露見します。初動対応の不誠実さへの世間の怒りも相まって、事態はフジテレビの経営を揺るがす深刻な局面に発展しました。スポンサー企業は次々とフジテレビへのCM出稿を取りやめ、70社以上が撤退する異例の事態となり 、同局の社長や会長が引責辞任に追い込まれました。当の中居氏も最終的に芸能界引退を発表し、表舞台から姿を消す結果に。

この一連の騒動は、日本のメディア産業にも#MeTooの波が押し寄せていることを強烈に印象づけました。まさに「西洋で2010年代に始まった#MeToo運動が、遅れて日本の芸能界にも及び始めた」と評される状況だったのです。普段は華やかなテレビ業界の裏で女性たちが受けていた理不尽な扱いが白日の下にさらされ、視聴者やスポンサーがそれを許さない姿勢を明確に示したことは、日本社会にとって画期的でした。

この事件は同時に課題も突きつけました。被害を公表した女性は沈黙を貫いており、詳細は明らかになっていませんが、メディア報道の段階で憶測やバッシングも飛び交いました。#MeTooの象徴的存在である伊藤詩織さんはこの件に関連し、日本の大手メディアは依然として性被害報道に及び腰であり、真相解明よりもスキャンダル扱いに留まっていると指摘しています。

実際、今回の真相も週刊誌報道によって明るみに出た経緯があり、テレビ局自身が自浄作用を発揮できなかった点は、日本のメディアが抱える課題として残りました。とはいえ、フジテレビのケースが示すように、かつては泣き寝入りや揉み消しが当たり前だった世界でも、今や加害を訴える声が上がり、それに社会が動揺し反応する時代になったのです。

この出来事は、日本版#MeTooに火をつける「事件」として、多くの人々に衝撃と問題意識を与えました。

日本独自の#MeToo運動の背景と特徴

日本における#MeToo運動は、その展開の遅さや形態において独自の特徴があります。

背景には、日本社会特有の文化や慣習が影響しています。まず指摘されるのは、被害者が声を上げにくい風土です。恥の意識や周囲への気遣いが強く求められる社会では、「被害に遭った」と公言すること自体に大きなハードルがあります。「報復されるかも」「周りから悪く言われるかも」という不安が常につきまとうため、たとえ深刻な被害に遭っても沈黙せざるを得ないケースが多々あります。実際、日本では被害を訴えた女性が加害者や世間から二次被害的な中傷を受けることが少なくありません。

あるジェンダー活動家は「報復や中傷を恐れて声を上げにくいという点では、日本はアメリカと同じかそれ以上にひどい状況だ」と述べています 。勇気を出して声を上げても、ネット上で「嘘つき」「売名だ」などと誹謗される例もあり(実際、伊藤詩織さんも「ハニートラップだ」「北朝鮮のスパイだ」など根拠のない中傷を浴びました )、被害者にとって日本社会は決して優しい環境とは言えません。このような強いバッシングの恐れが、日本の#MeTooを慎重で控えめなものにしてきた側面があります。

また、日本の大手メディアの対応にも特徴があります。アメリカでは一流紙ニューヨーク・タイムズが告発報道の旗振り役となりましたが、日本の場合、伊藤詩織さんの事件を最初に詳細を報じたのは『週刊新潮』でした 。続いて『週刊文春』も追及し、大手新聞やテレビ局よりも週刊誌がスクープの舞台となるケースが目立ちます。これは、既存の大手メディアがスポンサーや権力者への忖度からか積極的に扱いたがらない傾向があるためで、被害者側もやむを得ず週刊誌に訴える、という構図が指摘されています。

このようにメディア環境にも独特の事情があり、日本の#MeTooはSNSや雑誌ジャーナリズムによって支えられてきました。

しかし、そのような厳しい状況下でも、日本ならではの連帯の動きが生まれています。そのひとつが「#WeToo」や「#WithYou」というハッシュタグの広がりです。単に「私も被害者だ」と名乗り出るのではなく、「あなたと共に」というメッセージで被害者に寄り添う形を取ったのです。伊藤詩織さんらが2018年に立ち上げた#WeToo Japanは、まさに多くの人々が被害者を支えるために声を上げるプラットフォームでした。「あなた一人じゃない、一緒に戦おう」という合言葉は、孤立しがちな被害者に大きな安心感を与えました。

さらに、日本独自のムーブメントとして「フラワーデモ」があります。2019年4月に性犯罪裁判で無罪判決が相次いだことに抗議して始まったこのデモは、参加者が花を手に毎月11日に街頭に集まり、性暴力根絶を訴えるものでした 。東京駅前で始まったデモには初回から450人以上が集まり、その後、福岡・大阪・札幌など全国に広がりました 。花という平和的なシンボルを用い、誰もが参加しやすい雰囲気を作り出したこの運動は、日本社会における新しい抗議の形として注目されました。SNS上で声を上げることに抵抗を感じる人でも、現場で静かに花を掲げることで「私も許さない」という意思表示ができる。このように、日本の#MeTooはオンラインとオフライン双方で独自の発展を遂げ、文化的背景に合わせた形で展開しているのです。

また、#MeTooに触発されて派生的に生まれた日本独自の社会運動もあります。そのひとつが「#KuToo」です。これは職場で女性にハイヒール着用を強制する慣行に異議を唱えたキャンペーンで、女優の石川優実さんが2019年に始めました (ハイヒールの「靴」と苦痛の「クツウ」をかけた造語)。セクハラ問題とは直接関係ないようにも見えますが、背景にあるのはいずれも性差別的な固定観念への疑問です。#MeTooを契機に「おかしいことはおかしいと言おう」という空気が生まれ、女性の権利意識が高まったことで、こうした多様な声が上がり始めています。

日本の#MeToo運動は、性被害の告発に留まらず、社会に根強く残るジェンダー不平等そのものへの問いかけへと広がりを見せているとも言えるでしょう。

#MeToo運動への社会の反応――支持する声、慎重な声

日本で#MeToo運動が展開される中で、社会の反応は一様ではありません。共感し支持する声がある一方で、批判的・懐疑的な声も根強く存在します。

まず、支持・共感の声です。被害者が勇気を持って「#MeToo」と声を上げることで、「私も被害者です」「あなたは一人じゃない」と次々に声が連鎖していく様子は、多くの人の心を動かしました 。実際、#MeToo運動とはそれまで沈黙していた被害者が勇気を出して経験を告白し、「私も」と他の人々が声を上げて連鎖的に勇気が生まれていく運動です。日本でも、ある女性が告発すればSNS上で「よく勇気を出した」「私も同じ経験があります」といった賛同コメントが寄せられ、次の人の勇気へとつながるというプラスの循環が起きています。

伊藤詩織さんの裁判勝訴時には、「#WithYou」「#私も伊藤詩織さんを支持します」といったハッシュタグがトレンド入りし、多くの人が彼女の勇気に共感と敬意を表しました。こうした動きは被害者たちにとって大きな励ましとなり、「声を上げてもいいんだ」と思える土壌を作りつつあります。「弱い者、声を上げにくい者の声も発信されやすい社会になってほしい」という願いに、多くの人が賛同し始めているのです 。

一方で、否定的・批判的な反応も少なくありません。インターネット上の匿名掲示板やSNSでは、告発者に対する心ない中傷やデマが飛び交うことがあります。「売名行為だ」「男性を貶めるための嘘だ」と決めつけたり、被害者の人格や私生活を攻撃したりするコメントも見受けられます。実際に伊藤詩織さんも告発後、「ハニートラップだ」「嘘をついている」などと誹謗中傷を受けました 。このようなバックラッシュ(反発)現象は、日本に限らず世界中で#MeTooに伴って起きている問題ですが、日本では特に強く表れているとも言われます。

社会全体に「被害を訴えるなんて大げさだ」「セクハラくらい我慢すべきだ」といった雰囲気があると、弱い立場の人の声は発信されにくく、たとえ発信しても届きません。日本では長年、「波風を立てない方が賢明」「事を荒立てないのが美徳」「泣き寝入りは仕方ない」とされる風潮がありました。そのため、#MeTooに対しても「日本の文化に合わない」「欧米の真似事」と冷ややかに見る向きが一部に存在するのも事実です。

しかし、そうした批判的な声を上回る勢いで、社会の意識も少しずつ変わりつつあります。「セクハラは許されない」という認識が広がり、実際に被害者が加害者を訴える裁判が増加傾向にあります。かつては泣き寝入りが多かったセクハラ裁判で被害者が勝訴する例も増え、慰謝料の額も大きくなっています。職場や学校でのセクハラ防止研修が強化されたり、有名企業のトップがセクハラ発覚で辞任に追い込まれたりするケースも出てきました。社会全体が「性暴力やハラスメントにNoと言おう」という方向に少しずつ舵を切り始めているのです。

その背景には、被害者の勇気ある声に共鳴し支える人々の存在が大きいでしょう。「もし自分が声を上げたら、社会は味方してくれるだろうか?」という問いに対し、以前より「Yes」と答えられる雰囲気が醸成されつつある――それが日本の#MeToo運動がもたらした大きな変化であり、今後さらなる広がりの土台となるものです。

法改正や企業の取り組みがもたらした実際の変化

#MeToo運動の広がりに伴い、日本では法制度や企業の姿勢にも少しずつ変化が現れています。声を上げた女性たちの訴えが具体的な形で社会に反映され始めているのです。

まず法改正の面では、長年ほとんど改正されてこなかった性犯罪に関する刑法が見直されました。2017年には強姦罪の規定が110年ぶりに改正され、「強制性交等罪」として被害者の告訴がなくても起訴できるようになるなどの進展がありました(従来は被害届がないと起訴できない「親告罪」でしたが、この制限が撤廃されました)。

しかし、依然として「暴行・脅迫によって抵抗できなかった場合のみ」が強姦成立の要件とされ、同意の有無そのものは重視されないなどの問題が残っていました。実際、2019年には、酔って抵抗できない状態で性的暴行を受けたにも関わらず「抵抗不能とは言えない」として無罪判決が言い渡された事件が相次ぎ、これがフラワーデモが始まる直接の契機となりました。

被害者や市民による4年以上に及ぶ抗議活動の結果、ついに2023年6月、国会は刑法の性的暴行罪について歴史的な改正を行いました。強制性交等罪の要件から「暴行・脅迫」が削除、「不同意性交等罪」として再定義され、明確な不同意に基づく性交が処罰対象となったのです。これは被害者が恐怖やショックで抵抗できなくても加害を立証しやすくするための大きな前進です。

また、世界でも最低水準だった性交同意年齢(いわゆる性的同意年齢)は13歳から16歳へと引き上げられました。13歳という現行法の規定は明治時代以来のもので、日本国内外から長年批判されていたため、こちらも画期的な改正です。さらに同改正では、被害後の告発可能期間(時効)がそれまでの10年から15年に延長されました 。被害から長い年月を経てようやく声を上げられる人もいる現実を踏まえれば、時効延長も被害者支援の重要なポイントです。

過去記事:改正刑法が2023年7月13日から施行。強制性交等罪が「不同意性交等罪」に。進む厳罰化

ただし、被害者支援団体「Spring」は、被害を真正面から向き合えるまで20年かかるケースも多いとして、さらなる時効延長を求めています。このような課題はあるものの、日本の法制度は確実に前進を始めました。これらの改正が実現した背景には、間違いなく#MeToo以降高まった世論の後押しがあります。「性暴力は被害者にも原因があるのでは?」という以前の風潮から、「同意のない性交は犯罪だ」という明確なメッセージを法律が発したことは、社会に与える影響も大きいでしょう。

また、2023年の法改正では他にも大きな進展がありました。盗撮やリベンジポルノといった、これまで明確な処罰規定がなかった性的画像被害について、新たに処罰規定が設けられました。たとえば、相手の同意なく性的な写真を撮影・拡散する行為(盗撮行為など)に対し、3年以下の懲役刑が科せられるようになりました。これも被害者の訴えが実を結んだ形です。

さらに、2020年代に入り社会問題化したジャニーズ事務所前社長による長年の未成年性加害問題などを受け、児童への性的虐待や淫行についても議論が進みつつあります。法律面でのこうした変化は、「性暴力を許さない」という世論の高まりと切り離して考えることはできません。実際、「フラワーデモなど数年にわたる抗議活動が、今回の法改正の原動力となった」と報じられています。被害者たちが沈黙を破り声を上げたことで、ようやく法改正という形で社会が応え始めたのです。

法整備のみならず、企業や組織の対応にも変化が見られます。日本では1999年から職場のセクハラ防止措置が企業の義務となっており 、多くの会社で就業規則にセクハラ禁止が明記され研修も行われてきました。しかし、#MeToo以前は形骸化しているケースも少なくありませんでした。「研修は一応やっているけど、本音では大した問題と思っていない」という企業も多かったのです。

ところが2018年以降、企業の意識にも徐々に変化が生まれました。ある調査では、#MeTooが盛り上がった直後の時期に「セクハラ対策を強化した」と答えた企業はまだ2割強でしたが、「社内の意識が高まってきた」と感じる企業は4割近くに上りました。具体的には、管理職向けのハラスメント研修を新設したり、従業員向けのeラーニング教育を充実させたりする動きが出ています。

厚生労働省によれば、2018年のセクハラ疑惑で官僚が辞任した後、企業からセクハラ防止策に関する相談が増加したとも報告されています。2020年にはパワハラ防止法が施行され、企業に対しセクハラ・パワハラ相談窓口の設置や再発防止策の実施が義務付けられました。法的強制力があるわけではありませんが、企業にとってハラスメント対策は「コンプライアンス(法令順守)」上、無視できない課題となりつつあります。

企業側の意識変化を象徴する出来事として、前述のフジテレビのスポンサー撤退劇が挙げられます。フジテレビの不祥事では、トヨタやマクドナルドなど名だたる企業を含む70社以上が広告出稿を見合わせる事態となり 、テレビ局に経営的打撃を与えました。スポンサー企業にとって「セクハラ疑惑を隠蔽する体質の組織と関わること自体がリスク」と判断されたのです。このように企業イメージを守るために厳しい態度をとるケースが増えたことも、#MeToo以降の変化でしょう。

また、映画業界では近年ハラスメント対策としてインティマシー・コーディネーター(親密なシーンの撮影時に俳優の安全と尊厳を守る専門スタッフ)を導入する動きが出てきました 。海外では一般化しつつある制度ですが、日本のドラマ制作現場などでも採用が始まっているといいます。これも、業界内で「俳優が嫌と言えない空気」に頼った演出を改めようという意識変革の現れです。

ほかにも、行政機関で幹部職員に対するセクハラ研修を義務化する計画が打ち出されたり 、大学でのハラスメント防止ガイドラインが強化されたりと、社会のあらゆる場で具体的な対策が模索されています。もっとも重要なのは、こうしたルールや仕組みの整備が現場で実効性を持つことです。まだ「制度は作ったが実際には機能していない」という声もあり、専門家は「被害を訴えても適切な対処がなされない現状が被害隠しにつながっている」と指摘します。

せっかく勇気を出して相談しても、会社がもみ消したり加害者をかばったりしては意味がありません。今後は、せっかく整備された法律や制度を運用面できちんと活かしていくことが課題となります。

しかし、確実にいえるのは、#MeToo以前に比べれば被害者が声を上げやすい環境づくりが進んでいるということです。社会全体がセクハラを看過しないムードに変わり始めたこと、それ自体が大きな成果だと言えるでしょう。

日本の#MeToo運動をさらに発展させるために

日本の#MeToo運動はようやく芽生え、少しずつ前進を遂げていますが、まだ道半ばです。今後、被害に遭った女性たちがもっと参加しやすく、日本の実情に合った形でこのムーブメントを発展させていくためには、どのような取り組みが必要でしょうか。

最後に、今後の方向性を5つの視点から考えてみます。

1. 被害者が孤立しない仕組み作り

#MeTooは本来、被害者同士の連鎖と連帯の力に支えられた運動です。

一人ひとりが「私も」と名乗り出ることは勇気のいることですが、「あなたの隣にも私がいる(#WithYou)」という支えがあれば声を上げやすくなります。今後もSNS上での共感メッセージや、フラワーデモのように誰もが参加しやすい場を維持・拡大していくことが大切です。被害者の声に耳を傾け「あなたは一人じゃない」と伝える社会でなければ、声は上がりません。多様な声を受け入れられる社会の実現が求められているのです。

そのためにも、支援団体や相談窓口の充実匿名でも経験を共有できるオンラインコミュニティの整備など、被害者が安心して声を出せる受け皿を用意する必要があります。

2. メディアと社会の意識改革

日本の#MeTooを定着させるには、メディアの役割も重要です。

これまで述べたように、大手メディアは依然としてセクハラ問題の報道に慎重な部分がありますが、今後は被害者の視点に立った報道姿勢が求められます。被害者をさらし者にしたり憶測で攻撃したりするのでなく、事実関係を丁寧に検証し、公平に伝える報道です。

視聴者・読者側も、「告発=スキャンダル」という消費の仕方ではなく、人権問題として真剣に受け止めるリテラシーが必要でしょう。また、学校教育や職場研修を通じて性暴力は決して許されないこと、そして被害者に落ち度はないことを繰り返し伝えていくことも欠かせません。

幼いころから同意や尊重について学ぶ機会を増やし、世代を重ねるごとに「被害者を責める風潮」を無くしていく努力が必要です。

3. 声を上げた人を守る制度の整備

声を上げた被害者が二次被害に遭わないよう、法的・制度的な後押しも考えるべきです。

たとえば、告発者への報復行為(解雇や嫌がらせ)に対する厳正な処罰規定を設けたり、名誉毀損訴訟を濫用して告発者を萎縮させるような行為(いわゆるスラップ訴訟)を抑止する仕組みが検討されてもよいでしょう。幸い、前述の法改正で性犯罪の親告罪規定は廃止され、被害者が訴えを取り下げるよう圧力をかけられるリスクは減りました。しかし、告発後の社会生活で受けるプレッシャーは依然大きいものがあります。

職場での内部通報制度の充実や、通報者を保護するホットラインの設置、警察・検察による被害者支援(心理ケアや引っ越し費用補助等)の拡充など、実際に声を上げた後の安全網を強化することが急務です。

4. 男性の参加と意識改革

#MeToo運動は女性が中心となってきましたが、性暴力を根絶するには男性側の協力と変化も欠かせません。

職場でも学校でも、男性が「それはおかしい」とハラスメントを止めたり指摘したりする風土を作ることが重要です。「自分は加害者じゃないから関係ない」ではなく、「自分も当事者として変えていこう」という意識を男性が持つことで、初めて構造的な問題にメスが入ります。幸い最近では、ハリウッドで活躍する日本人俳優が「セクハラ根絶のために声を上げ続ける。クビになっても構わない」と発言するなど 、男性からの発信も少しずつ増えてきました。

日常生活の中で、男性が飲み会の席での軽い下ネタやボディタッチに「それ、相手は嫌がっているよ」と注意するだけでも、被害を未然に防ぐ力になります。

性暴力は決して女性だけの問題ではなく、人権と尊厳の問題だという意識を社会全体で共有することが重要です。

5. モーメンタムを絶やさない

最後に、せっかく芽生えた変化の芽を絶やさないことが大切です。

一時的な盛り上がりで終わらせず、継続的に声を上げ続けること、問題提起し続けることが求められます。伊藤詩織さんが「このチャンスを逃してはいけない」と語ったように 、#MeTooがもたらした社会の目覚めを後退させないようにする努力が必要です。

そのためには、たとえば毎年「#MeTooの日」のような記念日を設けてイベントを行ったり、性暴力根絶に取り組む企業を表彰する制度を作ったりと、話題を継続させる工夫も考えられます。また、#MeTooをテーマにした映画やドラマ、書籍など文化的アプローチも人々の共感を呼ぶでしょう。

被害当事者だけでなく、多くの人が自分事として参加できる形で運動を広げていくことが大切です。

証拠を残す手段としての「音声録音」のすすめ

ここまで見てきたように、被害を訴える人が増え、法改正や企業の対策も進む一方で、まだまだ「言った/言わない」の水掛け論になりやすいのがセクハラ・性暴力の現状です。

勇気を出して告発しようにも、証拠が十分でないために泣き寝入りしてしまうケースが後を絶ちません。そこで改めて注目したいのが「音声録音」という手段です。被害に直面した場面のやりとりを記録しておけば、あとから客観的な証拠として提示しやすくなり、言葉を交わした内容を正確に伝えることができます

もちろん、録音は相手や状況によっては難しい場合もありますが、もし何らかの不安を感じたときや、繰り返しのハラスメントに悩んでいる状況では、スマホアプリなどで音声を残しておくことが大きな助けになる可能性があります。「自分の身を守るために、まず記録を残す」。こうした意識が広がれば、告発の際に一方的な「主張」ではなく「事実」として相手に向き合うことができ、また周囲の理解や協力を得やすくなります。

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おわりに

日本における#MeToo運動は、静かではありますが着実に前に進んでいます。

かつては声を上げる人がほとんどいなかった社会で、今、多くの女性たちが「もう黙っていない」と少しずつ口火を切り始めました。その背後には、ハリウッドから届いた勇気のリレーがあり、それを日本の土壌に合った形で受け止めようとする人々の創意工夫がありました。

もちろん、一朝一夕には人びとの意識は変わりません。依然として被害者が二次被害に苦しむ場面もありますし、法改正や制度整備も完璧ではありません。それでも、確実にいえるのは「以前とは違う」ということです。セクハラや性暴力の被害を告白することがタブーではなくなりつつあり、告発があれば加害者が罰せられ社会的に糾弾される ―― そんな当たり前の流れが、日本にも根づき始めています。

記事の冒頭で触れたように、#MeToo運動の目的は声を上げにくかった人々が「私も」と名乗り出て連鎖していくことです。その連鎖が日本でも起これば、性暴力を取り巻く沈黙の壁は必ず崩れていきます。一人の声は小さくても、百人千人と集まれば大きな力になります。実際にフラワーデモの現場で語られた被害者の「もう私たちは沈黙しない」という言葉に、多くの通行人が足を止め耳を傾けました。共感は確実に広がっています。日本の女性たちが安心して#MeTooに参加できる社会とは、被害を訴えたときに必ず誰かが「あなたの味方だ」と手を差し伸べてくれる社会です。

そして少し先の未来、#MeTooという言葉をわざわざ使わなくても済むような、性暴力のない社会を実現することこそゴールだというえるでしょう。その日が来るまで、私たちは声を上げ続け、支え合い続けていかなければなりません。「私も」の先にある「私たちで変えていこう」というメッセージを胸に、日本の#MeToo運動はこれからも前進していくはずです。その歩みを止めず、より多くの人が安心して声を上げられるよう、あなたもどうか隣で「#WithYou」と寄り添ってください。

日本の未来を変えるのは、他でもない私たち一人ひとりの行動なのです。

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