新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大にともない、外来語を含むさまざまな専門用語が出てきています。ほとんどが耳慣れないものばかりで、戸惑っている方も多いはずです。
Voista Mediaは、ボイスレコーダーや音声技術を上手に使いこなすことで、生活を豊かにするコツを紹介するメディアですが、現在のようにたくさんの情報があふれる中、インターネットやテレビでよく耳にする言葉を正しく理解するための情報を提供することも、等しく重要と考えます。
そこで、Voista Media編集部では、新型コロナウイルスに関する用語をまとめてみました。専門用語の理解の一助になれば幸いです。
※ 随時、用語を追加予定です。
最近追加した用語: 医療非常事態宣言 まん延防止等重点措置 変異株(変異種) 新しい生活様式 ペスト エッセンシャルワーカー 再陽性 インフォデミック 公衆衛生 抗体検査
あ行
アウトブレイク
疫学用語のひとつであり、感染症の突発的な感染拡大のこと。特に病院などの医療機関で、感染者が多数発生することを指す。
厚生労働省の定義では、「一定期間内に、同一病棟や同一医療機関といった一定の場所で発生した院内感染の集積が通常よりも高い状態のことであること」とされる。
新しい生活様式
専門家会議の2020年5月4日の提言を受けて、新型コロナウイルスの感染者数が少なくなった地域でも、再度の感染拡大を防止するために日常生活で実践すべきものとして、厚生労働省が示した行動指針のこと。
感染防止、移動、買い物、食事、働き方などについて、さまざまな実践例が示されている(公式情報は、厚生労働省の新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」を公表しました を参照)。
アビガン
富士フイルム富山化学株式会社が抗インフルエンザウイルス薬として製造販売承認を取得し、「アビガン錠」として製造販売している薬(一般名は「ファビピラビル」)。
新型コロナウイルスの治療効果が期待できる薬として、日本政府が備蓄量を200万人分まで拡大することを決定。アメリカでも臨床試験を開始した。ウイルスのRNAポリメラーゼを選択的に阻害することで、ウイルスの増殖を防ぐというメカニズムを備えている。
アフターコロナ
after Corona。ウィズコロナ以降、新型コロナウイルスの感染拡大が終息してしばらくの世界。予断を許さず、衛生的な習慣の徹底や一定の行動制限が続くと考えられる。
現状、感染拡大が起こった国で、この段階に入ったところはないと考えられるが、2020年4月14日に新規感染者数がゼロとなった台湾、感染拡大が収まったとされる中国や韓国がアフターコロナに移行しつつある。また、日本でも5月25日に全国(47都道府県)の緊急事態宣言が解除され、アフターコロナの段階に入っている。日本では、2020年夏の第二波、2020年秋から2021年2月にかけての第三波の時期に、感染者が再度急増。2021年1月8日には二度目の緊急事態宣言が発出されることとなった(関東一都三県は3月21日に解除)。
アベノマスク
新型コロナウイルスの感染防止策の一環として、2020年4月1日に安倍晋三首相が「全世帯に布マスク2枚を配布する」と発表。4月17日から各戸に配布されることとなった。466億円の税金を投入すること、感染被害の拡大に比べて不十分な対策と考えられることから、安倍政権下の経済対策「アベノミクス」をもじって「アベノマスク」と名づけられ、SNSを中心に広まった。名付け親は『アベノミクスによろしく』などの著書で知られる弁護士の明石順平氏とされる。
医療従事者
医療関係の仕事に従事する者を指す。医師や歯科医師、看護師、薬剤師のほか、助産師、保健師、管理栄養士、社会福祉士、精神保健福祉士、臨床検査技師、診療放射線技師、臨床工学技士、歯科衛生士、理学療法士、作業療法士、義肢装具士、歯科技工士、救急救命士、言語聴覚士、視能訓練士、看護助手などが該当する。
英語では、医師や歯科医師を除く医療従事者を「コ・メディカル(co-medical)」と呼ぶ。
医療非常事態宣言
2021年4月8日、大阪府内で新型コロナウイルスの感染が急拡大し、重症患者用の病床数が逼迫していることから、大阪府の独自基準「大阪モデル」に基づく警戒度を最高の「赤信号」に引き上げるとともに、吉村洋文府知事から発出された宣言。
それまでは、大阪市内を対象に不要不急の外出自粛を要請してきたが、8日から対象を府内全域に拡大する。
医療崩壊
感染症などの社会的な拡大によって罹患者が急増することで、医療従事者や医療器具の不足、病院などの医療機関で受け入れられる患者数の制限、重症者への不十分な治療など、医療サービスの提供が困難な状態になること。アウトブレイクによって病院などの医療機関が封鎖されたり、医療従事者が大量に隔離されたりすることで、さらに危機的な状況となる。
インフォデミック
infodemic。情報を意味する「インフォメーション(information)」と、流行を意味する「エピデミック(epidemic)」を組み合わせた造語。噂やデマなどを含む大量の情報が氾濫し、現実社会に影響(主に悪影響)を及ぼすこと。
特に、インターネットが普及した現代では、情報のコピーや再生産のしやすさ、不特定多数への拡散のしやすさなどから、インフォデミックが起こりやすいといえる。
今回の新型コロナウイルスについて、世界保健機関(WHO)が2020年2月2日の発表で、実際に「インフォデミック」という言葉を使い、信頼性の高い情報が見つけにくくなっていること、人びとの生活や生命に甚大な影響を及ぼしかねないことなどを警告した。
ウィズコロナ
with Corona。新型コロナウイルスの感染拡大が続く世界で、ウィルスと共存・共生すること。
新規感染者の大幅な増加はないものの、一定数の感染増が続く状態であり、日本では新しい生活様式やクラスター対策などによって感染爆発を防ぐ方法をとっている。
エアロゾル
aerosol。エーロゾルとも。気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子と周囲の気体の混合体のこと。新型コロナウイルスの感染者が、咳やくしゃみによってウイルスを含む液体を空中に飛散させたものがエアロゾルとなり、それを他の人が吸い込むことで感染するという、空気感染の説明の際に使用される言葉。
営業自粛
新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、企業や店舗が営業を取りやめること。東京都については、小池百合子知事が2020年4月10日の記者会見で、政府が発令した緊急事態宣言にもとづく都の緊急事態措置として、休業要請をする施設を公表した(遊興施設、大学、劇場など、社会生活を維持する上で必要な施設以外)。
営業短縮(時短営業)
新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、企業や店舗が営業時間を短縮すること。東京都については、小池百合子知事が2020年4月10日の記者会見で、政府が発令した緊急事態宣言にもとづく都の緊急事態措置として、営業時間の短縮を要請する施設を公表した(飲食店など)。
エッセンシャルワーカー
essential workers。社会生活を成り立たせるために欠かせない仕事に従事する人のこと。医療従事者、福祉・介護従事者、農業・食品加工業の従事者、交通やエネルギー産業の従事者、小売店の販売員、配達員など。
オーバーシュート
overshoot。感染症の罹患者が急増すること。元々は英語で「通り越す」「行き過ぎる」という意味。
か行
外出自粛
新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、個人ができるだけ外出を取りやめること。人と人との接触を避けること、3密に該当する状況を作り出さないことで、感染リスクを下げる目的がある。
間質性肺炎
ウイルスが原因で起こる肺炎(ウイルス性肺炎)に特徴的な症状。
肺は、気管や気管支とつながる3億個ほどの「肺胞」が集まってできている臓器である。肺胞と肺胞の間に、それらを壁のようにして支える血管やリンパ管などが含まれる「間質」がある。ウイルス性の肺炎は主に、この間質に炎症を起こす肺炎である。新型コロナウイルスも、間質性肺炎の原因のひとつである。
なお、細菌が原因で起こる肺炎(細菌性肺炎)の多くが、間質性肺炎ではなく、肺胞に炎症を起こす実質性(肺胞性)肺炎である点に違いがある。
感染拡大
感染症などの罹患者が大幅に増えること。
感染経路
感染者がウイルスや細菌(病原体)の感染した経路のこと。主に次の2つの意味で使われる。
- 病原体が体内に取り込まれた原因は何か
空気感染、経口感染、接触感染、飛沫感染、血液感染、母子感染など。 - どのような行動によって感染したか
感染者との濃厚接触、ウイルスの付着物質の受け取り、院内感染など。感染した行動が特定できない場合は「感染経路不明」となる。
新型コロナウイルスについては、飛沫感染と接触感染が多く報告されている。また、空気感染(エアロゾル感染)の可能性も指摘されている。
感染爆発
感染症などの罹患者が爆発的に増えること。オーバーシュートとほぼ同義。
基礎疾患
糖尿病や高血圧症、心臓病、脳血管障害、呼吸器疾患(COPDなど)や、人工透析、免疫抑制剤や抗がん剤による治療を受ける症状のこと。基礎疾患のある人は、新型コロナウイルスに感染した際、重症化や死亡のリスクが高いとされる。
休業補償
新型コロナウイルスの感染拡大防止のために休業した企業や店舗に対して、政府や地方自治体が補償金を出すこと。日本では直接的な休業補償制度はなく、
- 雇用調整助成金の特例措置(厚生労働省)
- 臨時休校における保護者の休暇取得支援(厚生労働省)
- 時間外労働等改善助成金(テレワークコース)(厚生労働省)
- 持続化給付金(経済産業省)
- 休業協力金(都道府県)
などを利用することになる。
休業要請
政府が発令した緊急事態宣言にもとづく都道府県の緊急事態措置として、特定の業種に該当する企業や店舗に休業を要請すること。
緊急事態宣言
一般的には、大規模な災害や伝染病の拡大などによって国家の運営が危機的な状況になった際、緊急事態に対応するために特別法を発令するための宣言のことを指す。
今回の新型コロナウイルスについては、2020年3月13日に成立した「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の改正法にもとづき、政府対策本部長である安倍晋三首相が4月7日夜に発令した宣言が該当する。
対象区域は東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県、効力は4月8日から5月6日までとされた。4月16日には対象区域を全国に拡大し、すでに対象区域となっていた7都府県に、北海道、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府を加えた13都道府県を、重点的に対応する「特定警戒都道府県」とした。5月4日には、緊急事態宣言の効力を5月31日まで延長すると発表された。
その後、日本政府は5月14日に、新規感染者数がしばらく少数またはゼロに収まっている39県について宣言を解除し、5月21日には大阪、京都、兵庫の3府県、5月25日には東京、埼玉、千葉、神奈川、北海道の5都道県の宣言を解除した。
しかし、2020年夏の第二波、2020年秋から2021年2月にかけての第三波と呼ばれる時期に、感染者が再度急増。2021年1月8日には二度目の緊急事態宣言が発出されることとなった(関東一都三県は3月21日に解除)。
なお、緊急事態宣言は非常事態宣言とは異なる。また、諸外国の一部で行われているロックダウンのように、法的強制力をともなわない点も異なる。
緊急事態措置
緊急事態宣言にもとづき、対象区域となった都道府県知事が行う措置のこと。外出自粛、営業自粛、施設の使用制限、医薬品や医療機器の配送などを要請または指示できる。
空気感染
感染症の感染経路のひとつ。空気中を漂うウイルスや細菌(病原体)を吸い込むことによって生じる感染経路のこと。
クラスター
cluster。本来は英語で「集団」や「群れ」の意味。今回の新型コロナウイルスでは、小規模な集団感染を指す「クラスター感染」、クラスター感染の早期発見やデータ収集などのために感染症の専門家などで構成された厚生労働省の「クラスター対策班」などの用語で使われる。
経口感染
感染症の感染経路のひとつ。ウイルスや細菌(病原体)が付着した食べ物を生または十分に加熱しないで食べた場合や、調理中の感染者の手指や飛沫を介して食べ物や飲み物に病原体を付着させ、それを他者が食べた場合に生じる感染経路のこと。
公衆衛生
英語では「public health」。国際的には、アメリカの細菌学者、C. E. A. ウィンスローが1920年に示した「公衆衛生は、共同社会の組織的な努力を通じて、 疾病を予防し、寿命を延長し、身体的・精神的健康と能率の増進をはかる科学・技術である(Public health is the science and art of preventing disease, prolonging life, and promoting health and efficiency through organized community efforts.)」という定義が広く知られている。また、関連分野としては、環境保健、疾病予防、健康教育、健康管理、衛生行政、医療制度、社会保障などがある。
新型コロナウイルスについて、日本では感染者数が少なく、死亡率が低いことの理由として、国民の公衆衛生に関する意識の高さがしばしば指摘される。ただし、2020年4月22日現在、感染者数や死亡者数の増加が続いており、各国と同様、予断を許さない状況である。
抗体検査
過去に感染したウイルスや細菌(病原体)に対する抗体(免疫)を保持しているかどうかを検査すること。
抗体とは、体内に侵入してきた病原体などを認識し、結合する働きをするタンパク質(免疫グロブリン、Ig)の一種である。抗体が抗原に結合した複合体を、白血球やマクロファージといった食細胞が貪食したり、リンパ球などの免疫細胞が結合して免疫反応を起こしたりすることで、病原体が排除される。
したがって、ある病原体に対する抗体を保持していることで、その病原体に感染しても症状を発症しないか、症状が軽く済む可能性が高い。抗体検査によって、ある人が免疫を保持していることを特定できたり、広範囲に行うことで集団免疫の獲得の程度を把握できる。
新型コロナウイルスについては、感染が広がる初期段階ではPCR検査による感染者の特定と隔離や治療などが有効であるが、すでに感染が広がった段階では抗体検査が必要という意見がある。
また、PCR検査は口や鼻(鼻咽頭)の粘液を綿棒で擦り取る検査方法であり、被検者への負担が大きく、医療従事者の感染リスクが高い。さらに、検査結果が出るまでに、最低でも数時間を要する。一方、抗体検査は採血による検査方法のため、被検者への負担減や医療従事者の感染リスク減につながり、10〜20分程度で検査結果が出るとされる(ただし、検査精度はPCR検査よりは低いとされる)。
このような状況から、2020年4月10日に日本医師会(横倉義武会長)が厚生労働大臣に対し、抗体検査の速やかな普及を求めた。これを受けて、厚生労働省が4月中に数千人を無作為に抽出し、抗体検査を実施する準備を進めている。
行動変容
人の行動が変わること。特に、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、専門家会議が示した基本戦略である
- クラスター(集団)の早期発見・早期対応
- 患者の早期診断・重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保
- 市民の行動変容
の3番目を指す。
具体的には、手洗いの徹底、マスクの着用、3密を避けること、外出自粛や営業自粛、テレワーク(リモートワーク)の活用などを指す。
コロナウイルス
coronavirus(CoV)。哺乳類や鳥類に感染症を引き起こすウイルスのグループのひとつ。見た目がコロナ(corona、太陽の光冠)に似ていることから、その名が付いた。
ウイルス粒子表面の脂質の二重膜(エンベロープ)に、棘突起状のスパイク蛋白の突起(S蛋白)を持つ。二重膜の内部にはタンパク質に包まれた一本のRNAがある。ゲノム(遺伝子染色体)がDNAではなくRNAであることであるが、コロナウイルスの特徴のひとつである。
新型コロナウイルス(COVID-19)、SARS、MERSなどが、コロナウイルスの系統に含まれる。また、人が日常的に感染するコロナウイルス(Human Coronavirus、HCoV)は、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1の4種類とされ、風邪の10~15%(冬場などの流行期の35%)はこれらのコロナウイルスが原因とされる。
コロナ禍(ころなか)
新型コロナウイルスの感染拡大によって生じるさまざまな禍(わざわい)のこと。
コンテイジョン
contagion。英語で「感染」の意味。特に、2011年にアメリカで製作された映画『コンテイジョン(Contagion)』(スティーブン・ソダーバーグ監督、ワーナー・ブラザーズ配給)を指す。
この映画では、正体不明の感染症ウイルスは中国の香港が発生源とされ、接触感染や飛沫感染による世界的な流行(パンデミック)が起こり、ワクチン開発前には全米で250万人、世界で2,600万人が死亡している。民衆の混乱、インフォデミック、多数の死者の発生、医療危機、ロックダウン(都市封鎖)などが描かれており、今回の新型コロナウイルスの予見的な映画として再注目されている。
さ行
再生産数
感染症が流行中の地域において、一人の感染者が何人に感染させるか(二次感染者数)の平均値を「基本再生産数」(Basic Reproduction Number)という。基本再生産数は R0 で表され、R nought(アールノート)またはR zero(アールゼロ)と読む。
通常の季節性インフルエンザは2~3、天然痘は5~7、風疹は12~18とされる。新型コロナウイルスについては、世界保健機関(WHO)が1.4~2.5の範囲と推定している。
また、感染症が流行中の地域において、ある一定の時刻や条件下の二次感染者数の平均値を「実効再生産数」(Effective Reproduction Number)という。実効再生産数は R または Rt(アールティー)で表される。
実効再生産数については、政府の専門家会議による2020年5月1日の発表によれば、全国の推定値は3月25日時点で2.0、4月10日時点で0.7(東京の推定値は3月14日時点で2.6、4月10日時点で0.5)とされる。
感染症の拡大と再生産数の関係は、次のとおりである。
- R < 1
R が1より小さく、感染は終息していく - R = 1
R が1であり、突発的な流行は起きないが、終息もしない - R > 1
R0 が1より大きく、感染拡大や流行の恐れがある
したがって、新型コロナウイルスについても、R が1以下の状態を保つことで感染を終息させることが重要とされる。
サイトカインストーム
cytokine storm。感染症や薬剤投与などにより、血中のサイトカイン(生理活性蛋白質)の異常上昇が起こること。その作用が全身に及ぶ結果、好中球の活性化、血液凝固機構活性化、血管拡張などによって、ショック症状や播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全にまで進行する場合がある。
新型コロナウイルスに感染し死亡したケースでは、肺炎による肺組織の直接的な傷害だけでなく、サイトカインストームも要因のひとつであるとされ、症状が表れてから7日から10日前後に突然病状が悪化した場合に、サイトカインストームの発症が疑われる。
再陽性
ウイルスや細菌の感染状態に関する検査で陽性反応が示した人が、その後、一定期間が経過し、陰性反応を示したあと、再び陽性反応を示すこと。
新型コロナウイルスについて、PCR検査で陽性反応を示した人は、症状が回復したあと、検査を2回実施して陰性反応を示した(陰転化した)場合に自宅などで経過観察となるが、その後、再び症状を発症し、PCR検査で陽性反応を示すことを指す。
自己隔離
感染症が流行している地域に行った人や、新型コロナウイルスの感染が確認された人との濃厚接触者が、自宅などで14日間待機すること(その地域からの出発日または濃厚接触日から起算)。新型コロナウイルスの症状を発症するまでの潜伏期間が、最大14日程度と考えられるためである。
自粛要請
外出自粛要請とも。政府が発令した緊急事態宣言にもとづく都道府県の緊急事態措置として、不要不急の外出、帰省、旅行の自粛を個人(都道府県民)に要請すること。
死亡率
新型コロナウイルスについては、次の2つの死亡率がよく問題になる。
- 感染者のうち死亡者の割合(死亡者数÷感染者数)
致死率とも。2020年4月22日現在、世界的には6.9%。ただし、国によって大きな違いがあり、アメリカが5.5%、スペインが10.4%、イタリアが13.4%、フランスが13.2%、ドイツが3.4%、イギリスが13.4%、トルコが2.4%、日本が2.4%。
データ元:Worldmeter「COVID-19 Virus Pandemic」 - ある国の人口あたりの死亡者の割合(死亡者数÷国民人口)
人口100万人あたりの死亡率は、2020年4月23日現在、世界的には23.6人。ただし、これも国によって大きな違いがあり、アメリカが144人、スペインが464人、イタリアが415人、フランスが327人、ドイツが63人、イギリスが267人、トルコが28人、日本が2人。
データ元:Worldmeter「COVID-19 Virus Pandemic」
また、個人の死亡率として、当初から基礎疾患のある人や高齢者は重症化や死亡のリスクが高いことが知られている。また、中国やイタリアのでデータでは、男性の死亡率が高いとされる。
日本の年代別死亡率について、2020年4月19日18時時点での厚生労働省のまとめによると、30代は0.1%、40代は0.1%、50代は0.4%、60代は1.7%、70代は5.2%、80代以上は11.1%である。
ジャパン・パラドックス
Japan Paradox。今回の新型コロナウイルスについて、日本は発生源とされる中国と物理的に近く、当初は厳しい入国制限などはなかったにも関わらず、感染者数が少なく、死亡率が低いことを指した言葉。ただし、2020年4月22日現在、感染者数や死亡者数の増加が続いており、各国と同様、予断を許さない状況である。
なお、「国名+Paradox」という表現は、French Paradox(フランスでは喫煙率が高く、肉や乳製品、アルコールをよく摂取するのに、心臓病に罹患する人が少ないこと。あるいは、スタイルのよい女性が多いこと)が元になっている。
集近閉
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、個人が避けるべき3密(密集、密接、密閉)を、「集合」「近接」「閉鎖」として表現し直したもの。「しゅうきんぺい」または「しゅうきんへい」と読むとされる。
集団免疫
ある感染症に対して多くの人が免疫を獲得した状態のこと。免疫を獲得した人が増えれば増えるほど、感染を広げる人が減ることになり、次第に感染者が減っていくとする考え方である。免疫の獲得には、感染またはワクチン接種という2つの方法がある。
新型コロナウイルスの再生産数(一人の感染者が二次感染させる人数の平均値)は1.4~2.5とされる。したがって、人口の60〜70%が新型コロナウイルスの免疫を獲得すれば、一人の感染者から一人以下の二次感染者しか出さないため、流行が終息することになる。
新型インフルエンザ等対策特別措置法
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2020年3月13日に改正された法律。もともとは、2009年に世界的に流行した新型インフルエンザへの対応が混乱したことを受けて、対策の実施計画、発生時の措置、緊急事態措置などを定める目的で、2012年に成立した法律である。
政府対策本部長である安倍晋三首相が2020年4月7日夜に発令した緊急事態宣言や、その後の都道府県による緊急事態措置(外出自粛要請、休業要請など)は、この法律にもとづいて行われているものである。
新型コロナウイルス感染症
厚生労働省をはじめ、政府機関や官公庁が使っている新型コロナウイルスの正式な呼称。英語ではCOVID-19、感染症の原因となるウイルスはSARS-CoV-2と呼ばれる。
新型コロナウイルスの症状
現状では、次のような症状が報告されている。
- 初期症状 …… 鼻水、咳、発熱(37.5℃程度)、頭痛、軽い喉の痛み、痰、血痰、筋肉痛や体のだるさ、下痢、嗅覚障害、味覚障害など。これらが5日から7日ほど続き、重症化しなければ次第に改善していく。
- 重症 …… 肺炎、呼吸困難、上気道炎、気管支炎など。
なお、広く使われている言葉として「重篤」があるが、これは「症状が非常に重く、生命に危険が及ぶ状態」であり、重症の中でも生命の危機が迫っている状態と考えてよい。
新型コロナウイルスによって発症する肺炎は間質性肺炎である。約80%が軽症までで済むとされる一方、基礎疾患のある人や高齢者は重症化のリスクが高いとされる。また、肺炎などの呼吸器系の症状以外にも、サイトカインストームによって死亡したという指摘もある。
人工ウイルス
人工的に開発されたウイルスのこと。すでに存在するウイルスの遺伝子操作などによって開発する。ワクチンや免疫が存在しないことから、人びとの間で感染が拡大する可能性がある。
新型コロナウイルスの存在が世界的に明らかになった当初から、発生源とされる中国湖北省武漢市の武漢研究所から、生物兵器として開発中の人工ウイルスが流出した可能性が指摘されている。
そのことを裏づけるように、2020年1月31日にインドのデリー大学とインド理工学院の研究者が、bioRxivで研究論文を発表。新型コロナウイルスとSARSウイルスの棘突起状のタンパク質(スパイク)の配列を比較し、新型コロナウイルスのタンパク質には4つの新しい挿入配列があることを発見した(しかし、現在ではこの研究論文は撤回されている)。台湾出身でアメリカの化学者である杜祖健氏や、フランスのノーベル賞学者であるリュック・モンタニエ氏なども人工ウイルス説をとなえている。
現在、真偽についてアメリカの情報機関が調査しているところである。
スペインかぜ
新型コロナウイルスの世界的な流行を説明する際に、よく例として出されるインフルエンザ感染症。「スペイン風邪」とも。
1918年から1920年までの感染者数は世界人口の25〜30%(約5億人)、致死率は2.5%以上、死亡者数は全世界で4,000万〜5,000万人といわれる。日本については、内務省統計によると、国内で約2,300万人の感染者と約38万人の死亡者が出たとされる。
なお、スペインかぜという名前は、第一次世界大戦時に中立国で情報統制がされていなかったスペインでの流行が、世界的に大きく報じられたことに由来する。発生源はアメリカのカンザス州といわれているが、中国とする説もある。
生物兵器
ウイルスや細菌、それらが作り出す毒素などを利用したり、遺伝子操作によって感染力を強めるなどをして新たな病原体を開発し、人や動物を殺傷する目的で使われる兵器のこと。炭疽菌、天然痘、ペスト菌、人工ウイルスなどが例。
新型コロナウイルスの発生当初から、発生源とされる中国湖北省武漢市の武漢研究所から、生物兵器として開発中の人工ウイルスが流出した可能性が指摘されており、アメリカが本格的な調査に乗り出している。
なお、1925年のジュネーブ議定書にもとづく多国間条約として、1975年3月に発効した「生物兵器禁止条約」(Biological Weapons Convention、BWC)がある。生物兵器の開発、生産、貯蔵などを禁止するとともに、すでに保有している生物兵器を廃棄することを目的とした条約であり、日本も1982年に批准。国内法として「細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約等の実施に関する法律」を同年に制定した。
咳エチケット
感染症を他人に感染させないために、個人が咳やくしゃみをする際に、マスク、ティッシュやハンカチ、袖で口や鼻をおさえることで、飛沫の発生を防止すること。特に電車などの公共交通機関の中、職場や学校など人が集まるところで実践することが重要とされる。
接触感染
感染症の感染経路のひとつ。皮膚や粘膜の直接的な接触や、医療従事者の手や医療器具、手すりやタオルなどのような物体の表面を介した間接的な接触により、ウイルスや細菌(病原体)が付着することによって生じる感染経路のこと。
潜伏期間
潜伏期とも。ウイルスや細菌(病原体)に感染してから発症するまでの期間のこと。
通常の季節性インフルエンザは1〜3日、風疹は14日、結核は4〜8週間とされる。新型コロナウイルスは最大14日程度と考えられている。
専門家会議
新型コロナウイルス感染症対策本部に設置された「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」の略称。医学的な見地から、対策について助言などを行う。座長は脇田隆字氏(国立感染症研究所所長)、副座長は尾身茂氏(独立行政法人地域医療機能推進機構理事長)。
ソーシャルディスタンシング
social distancing。社会的距離。感染症などの感染拡大防止のために、人と人の間に物理的な距離をとること。具体的には、1.8メートル(約6フィート)から2メートル以上の距離が必要といわれている。
た行
致死率
→ 死亡率
突然変異
mutation。ある生物やウイルスの遺伝物質が変化することで、親(複製元)になかった新しい形質が現れること。特に、DNAやRNA上の塩基配列に変化が生じることを遺伝子突然変異、染色体の数や構造に変化が生じることを染色体突然変異という。
新型コロナウイルスは、突然変異を繰り返し、病毒性や複製能力を変化させているという説がある(ウイルスのRNAは一本鎖であり、二本鎖のDNAと比べて突然変異が起こりやすいとされる)。
イギリスのケンブリッジ大学の研究チームが2020年4月9日に発表した論文によれば、新型コロナウイルスはABCの3パターンに大別され、中国のコウモリが保有宿主(感染源動物)とみられるAは中国や日本、アメリカ、オーストラリア、Aから変異したBは武漢市を中心とした中国や近隣諸国、Bから変異したCはイタリア、フランス、イギリスなどヨーロッパで感染が広がったとされる。
ドライブスルー方式(検査)
新型コロナウイルスへの感染を確認するPCR検査を、自家用車などに乗ったままで受けられる方式。窓越しに検体を採取する方法であり、院内感染の防止や医療従事者の負担を減らす目的で実施される。韓国で早くから行われ、日本では鳥取県が2020年4月17日から開始した。
な行
ニューノーマル
new normal。新型コロナウイルスの感染拡大が終息して以降の、世界の「新たな常識・常態」。
濃厚接触
新型コロナウイルスの感染者と同居や長時間の接触を行うこと。たとえば、家族などで同一空間での生活はもとより、長時間の会食や身体的な接触などが該当する。
国立感染症研究所 感染症疫学センターでは、濃厚接触者を次のように定義している。
- 世帯内接触者
「患者」と同一住所に居住する者 - 医療関係者等
個人防護具を装着しなかった又は正しく着用しないなど、必要な感染予防策なしで、「患者」の診察、処置、搬送等に直接係わった医療関係者や搬送担当者 - 汚染物質の接触者
「患者」由来の体液、分泌物(痰など(汗を除く))などに、必要な感染予防策なしで接触した者 - その他
手で触れること又は対面で会話することが可能な距離(目安として2メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者」と接触があった者(患者の症状やマスクの使用状況などから患者の感染性を総合的に判断する)
は行
パンデミック
pandemic。ある感染症が世界的な流行になること。語源は、ギリシア語のpandēmos (pan-「すべて」+ dēmos「人々」)。
疫学用語としては、特定地域での流行をエンデミック(endemic)、複数地域での流行をエピデミック(epidemic)、世界的な流行をパンデミックという。
ピークアウト
peak out。頂点(ピーク)に達したあと、下降や衰退に向かいはじめること。今回の新型コロナウイルスをはじめ、感染症に関する用語としては、感染者の増加がおさまり、減少に転じることを指す。
非常事態宣言
一般的には緊急事態宣言と同様のものと解釈されている。
今回の新型コロナウイルスについては、2020年3月13日に交付された「新型インフルエンザ等対策特別措置法」にもとづき、政府対策本部長である安倍晋三首相が発令したものを「緊急事態宣言」と呼び、アメリカのドナルド・トランプ大統領による国家非常事態宣言(2020年3月13日)をはじめ、各国政府が発令したものを「非常事態宣言」と呼ぶことが多い。
また、政府の緊急事態宣言とは別に、法的拘束力のない要請や注意喚起を目的として、独自に非常事態宣言を発令した都道府県や市町村もある(北海道、愛知県、栃木県栃木市・那須塩原市・大田原市・那須町など)。
ビフォーコロナ
before Corona。新型コロナウイルスが発生する前の世界。
飛沫感染
感染症の感染経路のひとつ。感染者の咳やくしゃみなどの飛沫に含まれるウイルスや細菌(病原体)を吸い込むことによって生じる感染経路のこと。
不活化
ウイルスや細菌(病原体)の働きを失わせること。不活性化とも。
脂質やタンパク質の膜を持つエンベロープウイルス(コロナウイルス、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルスなど)については、アルコールや次亜塩素酸などによってエンベロープを破壊することで不活化できる。
一方、脂質やタンパク質の膜を持たないノンエンベロープウイルス(ノロウイルス、アデノウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーなど)については、アルコールによって不活化しにくいが、次亜塩素酸は不活化の効果があるとされる。
したがって、新型コロナウイルスの感染予防には、アルコールや次亜塩素酸水(次亜塩素酸に水を加えたもの)による消毒が有効とされる。また、石鹸を使った手洗いが推奨されるのも、流水によってウイルスを洗い流すことに加えて、石鹸に含まれる成分がウイルスのエンベロープを溶解させるからである。
なお、2020年4月23日、アメリカの国土安全保障省長官の科学技術顧問、ウィリアム・ブライアン氏が、ホワイトハウスで記者団に対し、「太陽光には、物質の表面と空気中の両方に存在するウイルスを不活化する作用があるとみられる」と述べた。これが正しければ、北半球では夏の感染拡大の抑制が期待できるが、現状、南半球でも一定の感染拡大があることから、楽観はできないと考えられる。
武漢ウイルス
新型コロナウイルスの別称。英語では「Wuhan virus」。発生源とされる中国湖北省武漢市の名前をとってつけられた。
武漢研究所
正式名称は「中国科学院武漢病毒研究所」。新型コロナウイルスを人工的に開発し、流出させたとされる、中国湖北省武漢市にあるウイルス研究所のこと。1956年設立。
武漢ウイルス研究所、武漢P4研究所とも呼ばれる。「P4」は「病原体(pathogen)レベル4」の意味であり、研究所や施設の格付けで使われる言葉である。
ただし、人工ウイルス説や生物兵器説の真偽はいまだに定かではなく、アメリカの情報当局が調査を開始するなど、今後の情報が待たれる状況である。
なお、この研究所はすでに爆破されており、調査を困難にしている。これが中国政府による証拠隠滅かどうかもまた、定かではない。
武漢肺炎
新型コロナウイルスを原因とする肺炎の別称。英語では「Wuhan pneumonia」。発生源とされる中国湖北省武漢市の名前をとってつけられた。
不顕性感染
→ 無症状感染
不要不急の外出
重要ではなく、急ぎでもない外出のこと。食料品や医薬品などの生活必需品を買うための外出、持病のある患者の通院、健康維持のための散歩やジョギングなどは該当しない。
ペスト
ペスト菌(Yersinia pestis)の感染が原因で起こる感染症のこと。ドイツ語で「Pest」、英語で「plague」。感染者の皮膚が内出血によって紫黒色になることから「黒死病」とも呼ばれる。14世紀後半から15世紀前半にヨーロッパで流行し、致命率は30%から60%、当時の世界人口4億5000万人の22%にあたる1億人が死亡したと推計される。
ノーベル文学賞受賞者であるフランスの作家、アルベール・カミュによる1947年発表の小説『ペスト(La Peste)』で描かれた世界が、新型コロナウイルスの感染拡大の状況と似ていることで話題になった。
また、17世紀のイギリスの著名な作家、ダニエル・デフォーの『ペスト(A Journal of the Plague Year)』では、1665年から1666年のロンドンでペストが大流行し(ロンドンの大疫病)、当時のロンドンの人口の4分の1(約10万人)ほどが死亡した状況が克明に描かれている。
変異株(変異種)
ウイルスが複製を繰り返す過程で、新しい性質を持った子孫ができることがあり、この子孫のことを変異株と呼ぶ。変異株は、変化した遺伝情報の影響を受けた一部の性質が変化するが、もともとの生物の種類は変化していないため、ウイルスの名称は変化しない。
2020年12月19日、イギリスのボリス・ジョンソン首相から、感染力が7割強くなった新型コロナウイルスの変異株(B.1.1.7株)が出現し、急速にイギリス国内で拡大している声明が出されたことから、その存在が注目。その後、各国からも変異株の感染例が報告され、すでに日本国内でも感染例が出ている。
なお、日本感染症学会によれば、変異株ではなく「変異種」という呼称は、学術的には誤りとされる。
ポストコロナ
post Corona。さまざまな意見があるが、アフターコロナのあと、新型コロナウイルスの存在がインフルエンザウイルス並みになった世界を指すとされる。
ま行
まん延防止等重点措置
新型コロナウイルスの感染再拡大にともない、2021年3月29日に大阪府の吉村洋文知事が国に対して適用を要請する考えを示した、緊急事態宣言が出されていなくても市町村レベルで集中的な対策を可能にする措置。
緊急事態宣言では、対象地域が都道府県単位である一方、まん延防止等重点措置では、政府が対象とした都道府県知事が市町村など特定の地域を指定できるとされる。また、適用の目安について、緊急事態宣言では、感染拡大の状況がもっとも深刻な「ステージ4」に相当するかどうかであるが、まん延防止等重点措置では、「ステージ3」や「ステージ2」での適用もありうるとされる。
たとえば、飲食店などに行える措置の例として、従業員への検査受診の推奨、入場者の整理、発熱などの症状がある人の入場禁止、感染防止に非協力的な人の入場禁止などが挙げられている。
2021年4月5日から5月5日までの31日間、大阪府(大阪市)、兵庫県(神戸市、尼崎市、西宮市、芦屋市)、宮城県(仙台市)の3府県の計6市に適用されることとなった。
また、
無症状感染
不顕性感染とも。ウイルスや細菌(病原体)に感染したにもかかわらず、症状を発症していない状態のこと。発症までの潜伏期間にある場合と発症しない場合の両方があり、本人も周囲も感染の事実認識や行動制限が難しく、知らない間に感染を広げる可能性がある。
新型コロナウイルスの感染の有無はPCR検査で確認される。厚生労働省の発表資料などでは、症状はないがPCR検査で陽性だった者を「無症状病原体保有者」と表現している。
や行
予防接種
感染症などに対する免疫を獲得するために、ワクチン(抗原)を投与すること。投与(接種)により、体内に病原体に対する抗体産生を促し、感染症に対する免疫を獲得することで、ウイルスや細菌(病原体)の感染による発病や障害、死亡を防止したり、症状を和らげたりできる。
日本の予防接種法では、予防接種について「疾病に対して免疫の効果を得させるため、疾病の予防に有効であることが確認されているワクチンを、人体に注射し、又は接種すること」と定義している(予防接種法第2条第1項)。
ら行
臨時休校
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、大学などを一定期間、休校すること。「一斉休校」や「一斉臨時休校」とも呼ばれる。
当初は、私立学校を中心とした任意の休校であったが、2020年3月2日から4日の間に東京都内の都立学校が臨時休校を開始(4月1日には、休校期間を5月6日まで延長することが決定)。4月7日の緊急事態宣言によって7都府県の、4月16日には全国の学校が、臨時休校の要請対象となった。その後、緊急事態宣言の効力が5月31日まで延長されたことにともない、臨時休校も5月31日までとされた。
レムデシビル
エボラ出血熱の治療薬候補としてギリアド・サイエンシズが開発した薬。新型コロナウイルスの治療効果が期待できる薬として、中国やアメリカで臨床試験を開始。その後、2020年5月1日にアメリカで、重症患者に対する緊急的な使用が認められた。
日本では5月7日に、新型コロナウイルスの治療薬としてはじめて特例承認され、重症患者(人工心肺装置や人工呼吸器の使用者)に限って投与されることとなった。重大な副作用として、腎障害や肝機能障害が生じる恐れがあるとされる。
ロックダウン
lockdown。いわゆる「都市封鎖」と呼ばれる措置や状態のこと。ある地域の人びとの移動や物流を停止し、他の地域との接触を断つことで、ウイルスや細菌による被害の拡大を抑えること。
日本においては、ロックダウンの根拠となる法律がない。今回の新型コロナウイルスの感染拡大については、政府による緊急事態宣言と都道府県による緊急事態措置にもとづき、外出自粛や営業自粛の要請または指示というかたちで運用がなされている。
わ行
ワクチン
vaccine。抗原。感染症予防のために接種する医療品。ウイルスや細菌(病原体)から作られた無毒化・弱毒化された抗原を人体に投与することで、体内に病原体に対する抗体産生を促し、感染症に対する免疫を獲得することが目的。このことを予防接種という。
大きく分けて、次の2つがある。
- 生ワクチン …… 生きたウイルスや細菌の病原性(毒性)を弱めたもの。予防接種などによって、その病気に自然に感染したときとほぼ同じ免疫力がつく。弱毒化された病原体が体内で増殖するため、ワクチン接種後に発熱や発疹などの症状が出る場合がある。
例としては、MR(麻疹風疹混合)、麻疹(はしか)、風疹、水痘(みずほうそう)、BCG(結核)、おたふくかぜなどがある。 - 不活化ワクチン …… 病原性をなくしたウイルスや細菌を使ったもの。生ワクチンに比べて安全性は高いが、免疫力がつきにくいため、何回かに分けて接種する。
例としては、DPT-IPV四種混合(D:ジフテリア、P:百日せき、T:破傷風、IPV:不活化ポリオ)、DT二種混合(D:ジフテリア、T:破傷風)、日本脳炎、インフルエンザ、A型肝炎、B型肝炎、肺炎球菌、不活化ポリオなどがある。
なお、新型コロナウイルスのワクチンは、まだ存在していない。世界保健機関(WHO)の発表によれば、2020年4月上旬時点で62件のワクチン研究が進行中とされる。
アルファベット
BCG
フランス語の「Bacille de Calmette et Guérin」(カルメット・ゲラン桿菌)の略。結核を予防するための生ワクチン(BCGワクチン)を指すのが一般的。
日本では、ワクチン接種の際に腕に残る管針(かんしん)の跡から「はんこ注射」とも呼ばれる。また、BCGワクチンの接種によって起こるツベルクリン反応から「ツベルクリン」と呼ばれることもある。
BCGワクチンを接種した人は、新型コロナウイルスに感染しても重症化しにくいといわれる。国民に接種を義務化している(または、近年まで義務化していた)日本、ポルトガル、ロシアなどの重症化率が低さが注目されているためである。しかし、明確な因果関係は立証されておらず、今後の情報が待たれる状況である。
China Virus
中国ウイルスのこと。アメリカのトランプ大統領が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を指すときに使う言葉。COVID-19が中国の武漢から発生したとされる中、中国政府によるアメリカを発生源とする発言への対抗と考えられる。
COVID-19
コビッドナインティーンと読む。世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症につけた名称。コロナ(corona)、ウイルス(virus)、病気(disease)を組み合わせた「COVID」に、感染が報告された2019年の末尾の数字二桁を加えた言葉。原因となるウイルスはSARS-CoV-2と呼ばれる。
ICU
Intensive Care Unit。医療機関における集中治療室のこと。
日本集中治療医学会では、集中治療を「生命の危機にある重症患者を、24時間の濃密な観察のもとに、先進医療技術を駆使して集中的に治療するもの」、集中治療室を「集中治療のために濃密な診療体制とモニタリング用機器、ならびに生命維持装置などの高度の診療機器を整備した診療単位」と定義している。
MERS
マーズ。中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory Syndrome)。2012年から現在まで流行している感染症であり、コロナウイルスを原因としている。サウジアラビアが発生源であり、ヒトコブラクダが保有宿主(感染源動物)とされる。
ヨーロッパ地域を中心に、現在も患者が断続的に報告されている。感染経路は明らかになっておらず、潜伏期間は2~14日程度。急性の重い呼吸器症状で、発熱や咳、息切れや呼吸困難をともなう。感染者のほとんどが肺炎や下痢などの消化器症状を発症する。
世界保健機関(WHO)によると、致死率は34.4%と非常に高い。治療法は確立されておらず、対症療法となる。
PCR検査
Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)検査のこと。微量の検体を高感度で検出する検査手法であり、「核酸増幅法」とも呼ばれる。
被検者の口や鼻(鼻咽頭)の粘液を綿棒で擦り取り、PCR検査をすることによって、ウイルスの感染の有無が明らかにできるとされる。
PCR検査で陽性の結果が出れば、新型コロナウイルスに感染していることになる。ただし、検査の精度は約70%程度といわれる。誤って陽性の結果が出た場合を「偽陽性」、誤って陰性の結果が出た場合を「偽陰性」という。また、正確に陽性の結果が出る(感染者のうち、検査結果が陽性となる)確率を「感度」、正確に陰性の結果が出る(非感染者のうち、検査結果が陰性となる)確率を「特異度」という。
発熱や咳、肺炎の症状がある人だけでなく、これらの症状がまったくない人でも陽性の結果が出ることがあり、これを無症状感染(不顕性感染)という。感染者の症状の程度によって、次のように分けられる。
- 無症状
- 軽症 …… 発熱、咳、倦怠感、呼吸のしづらさなどがある状態
- 中等症 …… 酸素吸入をしないと命に危険がある状態
- 重症 …… 集中治療室(ICU)での治療、または、人工呼吸器の装着を必要とする状態
新型コロナウイルスについては、約80%が軽症までで済むとされる一方、基礎疾患のある人や高齢者は重症化や死亡のリスクが高いとされる。
PCR検査は口や鼻(鼻咽頭)の粘液を綿棒で擦り取る検査方法であり、被検者への負担が大きく、医療従事者の感染リスクが高い。さらに、検査結果が出るまでに、最低でも数時間を要する。一方、抗体検査は採血による検査方法のため、被検者への負担減や医療従事者の感染リスク減につながり、10〜20分程度で検査結果が出るとされる(ただし、検査精度はPCR検査よりは低いとされる)。
SARS
サーズ。重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome)。2002年から2003年にかけて特に流行した感染症であり、コロナウイルスを原因としている。発生源は中国広東省とされ、コウモリが保有宿主(感染源動物)とされる。
アジアやカナダを中心に感染が拡大(日本では感染例なし)。感染経路は主に飛沫感染であり、潜伏期間は2~7日間(最長10日間程度)。発熱や筋肉痛など、インフルエンザに似た症状を発症後、肺炎などに進行し、咳や呼吸困難、下痢などをともなう。
世界保健機関(WHO)によると、致死率は9.6%とされる。治療法は確立されておらず、対症療法となる。
SARS-CoV-2
新型コロナウイルス(COVID-19)の原因となるウイルスのこと。Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)の略。
Wuhan Virus
武漢(Wuhan)ウイルスのこと。発生源とされる中国湖北省武漢市の地域名が由来であり、特に海外メディアの一部ではこの言葉を使っている。
数字
2009年新型インフルエンザ
2009年春から2010年春にかけて世界的に流行した、豚由来のインフルエンザウイルス(豚インフルエンザ)の人への感染症。農場などで豚から人に直接感染し、新型ウイルスとして広まったとされる。特にアメリカやメキシコで感染が拡大。
日本での感染者数は不明とされているが、甚大な被害はなく、2011年4月1日に厚生労働大臣によって、「新型インフルエンザ」ではなく、通常の季節性インフルエンザになったことが宣言された。
この感染症の治療薬として、タミフル(オセルタミビル)が注目された。
3密(さんみつ)
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、個人が避けるべき「密閉」「密集」「密接」の3つのこと。首相官邸と厚生労働省が作成した資料では、
- 換気の悪い「密閉」空間
- 多数が集まる「密集」場所
- 間近で会話や発声をする「密接」場面
の3つと説明される。
これらが揃う環境で、感染者が他者と居合わせた場合、クラスター感染が発生するリスクが高いとされる。
人物
テドロス・アダノム・ゲブレイェソス
Tedros Adhanom Ghebreyesus。世界保健機関(WHO)の事務局長(Director-General)。エチオピア出身。エチオピアの保健大臣や外務大臣を歴任し、2017年にアフリカ人として初めてWHO事務局長に就任。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大への不十分な対応や、発生源である中国への過剰な配慮などをめぐり、ドナルド・トランプ米大統領が数度にわたって批判。2020年4月14日の記者会見で、アメリカ政府がWHOへの資金拠出を停止する旨を明らかにした。
オンライン署名サイト「Change.org」では、テドロス事務局長の辞任を求める署名が100万件近く集まるなど(2020年4月現在)、去就が注目されている。
杜祖健(と・そけん)
英語名はアンソニー・トゥ(Anthony Tu)。アメリカの化学者。コロラド州立大学名誉教授。毒性学、生物兵器・化学兵器研究の世界的権威。日本統治下の台湾出身であり、日本語も堪能。1994年、松本サリン事件解明のきっかけを作り、オウム真理教による一連のサリン事件では、警察当局にサリンの分析方法を指導するなど、解決に向けて尽力した。
2020年3月、新型コロナウイルスが武漢研究所から流出した人工ウイルスの可能性を示唆。
李文亮(り・ぶんりょう)
武漢市中心医院の眼科医。新型コロナウイルスの武漢での蔓延を早期から告発。2019年12月30日に「華南海鮮市場で7名がSARS(重症急性呼吸器症候群)に感染し、自分の病院の救急科に隔離されている」と、約150人が参加する微信(ウィーチャット)のグループに実名と職業を隠さずに投稿した。
地元警察からデマを流布したとして訓戒処分を受けたが、李医師の勇気ある行動に対して下された処分について、市民から怒りの声が上がっていた。李医師自身は、女性患者から新型ウイルスに感染、2020年2月7日に死亡(享年34歳)。
李医師の処遇について、中国政府の最高の監察機関である国家監察委員会の調査チームは「警察が訓戒書を作ったことは不当であり、法執行の手順も規範に合っていなかった」と結論づけ、警察に対して訓戒書の取り消しと関係者の責任追及などを求めた。2020年3月5日、新型肺炎の抑制に模範的な役割を果たしたとして中国政府に表彰された。
リュック・モンタニエ
Luc Antoine Montagnier。フランスのウイルス学者。エイズウイルス(HIV)を発見したことで2008年にノーベル生理学・医学賞を受賞。
2020年4月、新型コロナウイルスが「中国武漢にあるウイルス研究所から事故的に漏洩してしまった。人工操作されたウイルスだ」「新型コロナウイルスSARS-CoV-2の中にエイズウイルス(HIV)が含まれている」と、人工ウイルスと考えている旨を発言した。
武漢研究所は、フランス政府と中国政府の共同事業として誕生した施設であること、モンタニエ博士もフランスのパスツール研究所のあと、上海交通大学で研究をしていた経験があり、発言には一定の信憑性があると考えられている。