いつのころからか、日常的に上司に怒鳴られたり、罵られたりするようになった。
これ見よがしに嫌味を言われるようになった。
たまたま機嫌が悪かったでは済まされない。
自分はパワハラを受けているのだ――。
そう気づいてしまったとき、どうすればよいのでしょうか。
明らかにパワハラと思われる状態が続くようであれば、心身の不調をきたすなど、深刻な健康被害が出てくるかもしれません。もしこのような不安を感じたら、あるいは、実際に心身の不調が現れているのなら、断固として闘う決意をしましょう。
そして、すぐにでも、パワハラを立証するための証拠集めを始めましょう。
今回は、以前ブラック企業での経験談についてインタビューを受けていただいたYさんの協力を得て、パワハラの立証に有効な音声の録音方法について解説します。
Yさんは過去に、上司からパワハラを受けており、実際に会話を録音していた経験があります。ご自身の体験をもとに、押さえるべきコツを教えていただきました。
Yさんによると、ボイスレコーダーで音声を録音する方法には、次の3パターンがあるそうです。
- 職場の目立たないところに置く
- 身に着ける
- 自分のカバンに忍ばせる
それでは、順番にポイントを詳しく見ていきましょう。
1. 職場にひそかに置くなら、見つかりにくい場所を考えぬこう
ボイスレコーダーを職場の目立たないところに置く目的は、自分が不在の間に交わされる会話を録音するためです。
パワハラにありがちな「会議に呼ばれない」「業務上の重要な決定事項が共有されない」など、社内で孤立させられているときに役立つ方法です。
目立たない場所としては、
- 自分の机に積んでいる書類の束の中
- 常に置かれているモノの陰
などが挙げられます。
Yさんのコメント
オフィスの間取りや、棚や机などの配置によっては、これら以外にも最適な隠し場所が見つかると思います。
ちなみに、エアコンの上はお勧めできません。見つかる可能性は確かに低いのですが、試してみたところ、動作音が入ってしまって、ほとんど使い物にならない音声データしか録れませんでした。
エアコンに限らず、動作音がするような機器の近くは避けましょう。
また、ボイスレコーダーを回収するときの注意点も教えてくれました。
Yさんのコメント
万が一、回収する様子を社内の人に見られたら、のちのち面倒なことになります。くれぐれも人がいないタイミングを見計らって回収しましょう。
私の場合は、社長によけいな仕事まで押しつけられて、毎日遅くまで残業をしていたので、回収のタイミングはいくらでもありました。
2. 決定的な証拠を手に入れたいのなら、ボイスレコーダーを身に着けよう
自分が受けた暴言を録音したいのなら、常にボイスレコーダーを身に着けておくのが一番です。たとえば、次のような衣服のポケットを活用しましょう。
- Yシャツの胸ポケット
- ジャケットの内ポケット
- パンツやスカートのポケット
ただし、外から見えるポケットの場合は、ボイスレコーダーによる膨らみが目立たないように配慮する必要があります。
Yさんのコメント
最近のボイスレコーダーは小型のものが揃っていますから、身に着けていても目立ちにくいと思います。
ポケットからのぞいても自然に見せたいなら、ペン型のボイスレコーダーを使ってもよいでしょう。腕時計型のICレコーダーを使う手もあります。
※ ペン型ボイスレコーダーについては、こちらのレビュー記事を参照。
また、どのようなタイプのボイスレコーダーを使うとしても、ポケットに入れて録音する場合は、衣擦れの音が入らないように注意したいところです。
Yさんのコメント
私の経験上、ボイスレコーダーのマイク部分を粗めのスポンジで包んでおくと、衣擦れの音が入りにくいですよ。
意外と見落としがちなのが、録音中に点灯するランプです。特にワイシャツのポケットに入れる場合は、ランプが透けて見える可能性があるので気をつけて。ランプの部分に色つきのテープを貼るなどの工夫をしましょう。
3. カバンの中に忍ばせれば、移動中や外出先でのパワハラ発言も逃さず録れる
取引先に向かっている間など、周りに誰もいない移動中にパワハラを受けるなら、自分のカバンの中にボイスレコーダーを忍ばせておきましょう。
人は、他人のカバンの中を覗き込もうとしないものです。録音がバレるリスクは、ポケットに入れているときよりも低くなります。
Yさんのコメント
カバンに忍ばせると、ポケットに入れたときよりも音を遮断しやすくなりますが、音声を録音することは可能です。ただし、マイク部分がカバンの中で上を向くように入れましょう。あらかじめ自分でテストをして、きちんと録音できるかどうか確認しておくと完璧です。ポケットに入れるときと同様に、衣擦れの音を防止する対策も忘れないでください。
カバンはファスナーで閉じられるタイプでも、オープンタイプでもかまいません。オープンタイプで外からランプが見えるのが心配ならば、Yシャツのポケットのときと同様、ランプの部分に色つきのテープを貼っておきましょう。
なお、身に着ける方法やカバンに忍ばせる方法では、ボイスレコーダーではなくスマートフォン(スマホ)の録音アプリを利用することもできます。
Yさんのコメント
スマホで録音するなら、ケースは手帳型に限ります。言うまでもないく、とっさのときでも画面を隠せますからね。
録音アプリは、バックグラウンドで録音できるものにしましょう。ロック画面やスリープ画面のときでも、きちんと録音しつづけられるようにです。録音の開始時や起動時にフィードバック音が鳴るアプリが多いので、タイミングを合わせて咳払いをするとよいでしょう。
まとめ
〜録音すると決めたら絶対に守るべきこと〜
パワハラ経験者のYさんからアドバイスをいただきながら、証拠集めのために音声を録音する方法と具体的なコツを解説しました。
いま、まさにパワハラに悩んでいる方に、この記事が届けば幸いです。
最後にもうひとつ、Yさんが教えてくれたとても大切なことを、みなさんにお伝えしましょう。
Yさんのコメント
音声を録音したいと思ったとき、けっして誰にも相談してはいけません。実際に録音を実行してからも、誰かに打ち明けようなどと絶対に考えないでください。
社内の人はもちろん、あなたが勤めている会社とは関係のない人、どんなに信頼している友人であってもです。
誰かに話すことで、あなたが録音していることが本人の耳に入る可能性が、確実に高まります。
後ろめたさに耐えられないときがあるかもしれませんが、誰かに話したところで、あなたにとってリスクにしかなりません。充分な証拠を集めるまでは、冷静に、着実に、録音を実行しつづける必要があるのです。
自分は探偵につけられているかも――という気持ちで、気を引き締めていきましょう。