会議やカラオケで録音した自分の声を聞いてみたとき、「なんだか気持ち悪いな」と違和感を抱いたことがある人も少なくないはず。
筆者もその一人で、議事録用の録音データで、自分の声を聞くのが憂鬱でなりませんでした。
そもそも、なぜ自分の声が違って聞こえるのでしょうか?
そのしくみと、自分の声を改善する方法をご紹介します。
自分の声が違って聞こえる理由
自分の声は、他人が耳にするのと同様、空気の振動で伝わる「気導音」のほかに、声帯の振動が頭蓋骨などを通して「蝸牛」という聴覚器官に伝わる「骨伝導」(骨導音)と混ざり合って聞こえています。
骨伝導イヤホンや骨伝導補聴器は、文字どおり「骨伝導」によって聴覚器官に音を伝えるしくみです。通常のイヤホンと異なり、骨伝導振動子という部品が使われており、耳の近くの皮膚の上から骨を振動させ、音を伝えます。
さて、骨伝導では、振動が聴覚器官に達するまでに高周波の損失が多く、低周波の音が強調されて伝わる性質があるため、自分の声は低く、太く聞こえるといわれています。
多くの人が抱く、録音した自分の声に対する違和感の正体は、気導音と骨伝導のギャップによるものです。

イラスト出典:https://www.sankei.com/economy/news/191028/prl1910280216-n1.html
声を改善する5つのステップ
自分の声を聞いたときの違和感はひとまず置いておいて、率直にどのような声だと感じましたか?
「思ったよりも高い」
「なんだか軽そうな声だ」
「ごにょごにょと聞き取りにくい」
……などなど、どちらかというとネガティブな印象を抱いた人が多いはずです。
でも、自分の声を聞いてショックを受けた人、安心してください。
理想の声に近づけることは可能ですので、これから説明する方法で声を改善していきましょう。
1. 理想の声を見つける
まずは、自分が素敵だと思う声の主を見つけてみましょう。身近な人でも芸能人でも、「声が素敵だな」と思う人を思い浮かべてみてください。
芸能人であれば、ドラマや映画、CMの名台詞を思い出したり、インターネットで検索してみるとよいでしょう。最近では、男性のよい声を「イケボ」(イケメンボイス)と表現することもあります。
話し声であったり、歌声であったりと、目的に応じて別々の人で構いません。当然ながら、同性のほうが声を似せやすいので、基本的には同性の人を対象としてください。
理想の声の主が決まったら、その声のどこが好きなのかを具体的にリストアップしていきましょう。きっと、声質だけでなく、話し方、スピード、言葉の選び方など、いくつかの要素があなたの琴線に触れたのではないでしょうか?
自分にとって「よい声」という判断は、実は声質だけではなく、総合的な理由でそう思っていることが多いのです。
つまり、それらの要素をできるだけ近づけることが、自分の声を理想に近づけることとイコールです。
実は、モノマネの上手な人は、声だけを似せようとしているわけではなく、口の動かし方、呼吸の仕方、間のとり方、表情や仕草をよく観察し、総合的に似せていることが多いものです。
2. 理想の声と自分の声の違いを見つける
勇気を出して、ここでもう一度、録音した声を聞きなおしてみましょう。
理想の声の主の好きなポイントと、現状の自分の声との違いはどのようなところにあったでしょうか?
違いすぎるという人もさじを投げずに、リストの横に自分との違いをメモしてみましょう。
また、声質のほか、「落ち着いてる声」や「かわいい声」といった印象については、その要素を分解して考えてみましょう。「低く、ゆっくりと話すから落ち着いて聞こえる」「高く、会話の合間によく笑うからかわいく聞こえる」など、なぜそう感じたのかを分析し、取り入れることが、理想の声になるための近道です。
3. 真似をしてみる
次に、先ほどの分析にもとづいて、理想の声を真似して話してみましょう。
まずは、理想としている人のだいたいの声の高さや、声の発し方といった部分から。次に、その人の言い回し、速さ、トーンを真似て話してみましょう。
慣れるまではすぐに自分の声や話し方に戻ってしまいますが、続けて意識をしていくことで染みついていきます。学生時代の友だちと話すとき、家族と話すとき、職場で話すときなど、それぞれの場で話し方が微妙に異なるように、話し方は意識と習慣で作られていくものですので、変えられるのです。
4. 滑舌と姿勢に気をつける
滑舌がよいほうがよい声に聞こえるものです。
自分の声が「ごにょごにょとしていて聞き取りにくい」と感じた人は、滑舌が原因ということが少なくありません。滑舌は、文字どおり「舌」の動かし方がポイントです。舌回しや早口言葉のトレーニングなどをするとよいでしょう。
また、猫背になっているなど、姿勢が悪いと声がこもり気味になるので、背筋を伸ばして声を出すようにしてみましょう。
5. 再度聞いてみる(を繰り返す)
ここまで練習を続けたら、自分の話し声をボイスレコーダーで録音して聞いてみましょう。
練習の前と後では、格段に印象が変わっているはずです。それでも理想と差がある場合には、2から4を繰り返し、差を埋めていきましょう。
とはいえ、理想の人の声に似せることがゴールではありません。自分の声の改善を実感できればOK、という気持ちで取り組みましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?
自分の声に対する違和感は、声が聴覚器官に伝わるしくみが異なることが理由であり、誰にでも大なり小なりあるものです。
周りが聞いているのは、いつものあなたの声です。きっとあなたの素の声や話し方が好きという人もいるはず。一方で、「会議で相手が聞き取りやすい声で話したい」「カラオケで上手に歌って場を盛り上げたい」といったポジティブな気持ちで声の改善に取り組むのは、とてもよいことだと思うのです。
あなたの声のよさを生かしつつ、いっそう素敵な声を目指してくださいね。