音声を録音するデバイスとしてはICレコーダーがすぐに思い浮かびますが、現在ではスマートフォン(スマホ)のボイスアプリを使って録音するのも一般的になっています。
iPhoneには標準で「ボイスメモ」というアプリがインストールされています。また、App Storeから好きなアプリをインストールできます。一方、Androidには標準アプリはありませんが、Google Play ストアから好きなアプリをインストールできます(一部の機種では、ボイスアプリがあらかじめインストールされている場合もあります)。
なお、
- iPhone標準のボイスメモの詳しい使い方は、iPhoneの録音アプリ「ボイスメモ」を徹底解説! ボイスレコーダーを便利に使おう【完全版】
- iOS、Android向けで定評のあるボイスレコーダーアプリについては、おすすめアプリ
を参考にしてください。
さて、スマホのボイスアプリとICレコーダーにはどのような特徴があり、どのように使い分けるのがよいのでしょうか?
それぞれの全般的な特徴を見たあと、用途に合わせた注意点を解説します。
スマートフォンのボイスアプリの特徴
スマホのボイスアプリの特徴をまとめると、次のとおりです。
- 比較的安価(無料〜数百円)
- バッテリーはスマートフォン本体
- 多くの人が、常に持ち歩くデバイス
- ある程度の重さがある(スマートフォン本体の重さ)
- 机に置いたり、手に持ったりしても目立たない
- メモリの容量が大きい(スマートフォン本体の残容量による)
- 電話などの着信があると録音が中断されてしまう
- トリミングなどの編集ができる(アプリやプランによる)
- クラウドストレージと同期できる(アプリやプランによる)
- 音質はスマートフォン本体の内蔵マイクの性能による(別途、外部マイクの利用は可能)
ICレコーダーの特徴
ICレコーダーの特徴をまとめると、次のとおりです。
- 比較的高価(数千円〜数万円)
- バッテリーは電池式と充電式がある
- 常に持ち歩くのは、ライターや記者など少数派
- 軽量で操作性が高い
- 机に置いたり、手に持ったりすると目立つ
- メモリーの容量が小さい(メモリーカードを増設できるものもあり)
- 自分で操作したり、電池が切れたりしない限り、録音が中断されない
- トリミングなどの編集ができない
- クラウドストレージと同期できない
- モノラル録音の製品から、高音質(ステレオ録音やリニアPCM録音など)の製品まであり
ボイスアプリは一般向け、ICレコーダーはプロ向け
スマホのボイスアプリは、比較的安価であること(無料アプリも多数あり)、トリミングやクラウド同期ができることがメリットです。
机に置いたり、手に持ったりしても違和感がないので、たとえばインタビューなどを録音していても、相手があまり気にならないという利点もあります。パワハラやセクハラ、DVの証拠を押さえるための秘密録音、といった自己防衛や緊急の用途では、この点が大きな力を発揮するかもしれません(詳しくは、秘密録音と盗聴の違いとは? 違法性や音声データの証拠能力など、気になる点を解説を参照)。
ただし、電話などの着信があると、録音が中断されてしまうのが難点。どうしても中断を避けたい場合は、機内モードにしてから録音を開始するなど、ひと工夫が必要です。
一方、ICレコーダーは、自分で操作したり、電池が切れたりしない限り、録音が中断されないのが最大のメリット。録音機能に特化した軽量なデバイスであり、瞬時に録音が開始できるなど、操作性にも優れています。ステレオ録音やリニアPCM録音(ハイレゾ対応)のハイスペックな製品もあり、日常的な会話の録音を超えた用途にも対応できます。
したがって、一般的な利用にはスマホのボイスアプリで充分ですが、プロの現場を考えると、ある程度のスペックを備えたICレコーダーがあると安心です(詳しくは、インタビューや対談・座談会をどう仕切る? プロのライターが進行や録音のコツを教えますを参照)。
通話を録音するには、どうしたらよいか?
通常のボイスアプリやICレコーダーでは、電話などの通話を直接録音することはできません。
物理的にデバイスを口元に近づけて録音する方法が思い浮かびますが、自分の声は録音できても、相手方の声をクリアに録音できる保証はありません。また、ボイスアプリの場合は、そもそも通話のためにスマホを使っているので、録音そのものの実施が困難です。
そのため、スマートフォンでの通話を録音したい場合は、次の3つの方法を検討しましょう。
1. 通話録音に対応したアプリを使う方法
別途、通話録音に対応したアプリを使う方法を検討しましょう。
iPhone向けにもAndroid向けにもアプリがいくつかありますので、それぞれのストアで探してみてください。というのも、筆者が調べた限りでは、会員登録後の無料トライアルから自動的に月額課金に移行したり、そもそもが国際電話のような通話サービスだったり、三者通話サービス(au)やグループ通話(ソフトバンク)の機能が必須だったりするので、ご自身でよく調べてから利用してほしいからです。
2. 外付けマイクを使うアナログな方法
アナログな方法としては、「通話録音用マイク」「テレフォンピックアップマイク」と呼ばれるイヤホン型のマイクを耳に装着し、その上から受話器を当てて通話を録音する方法があります。
思ったよりも複雑ではなく、安価で確実に実施できる方法です。
詳しくは、企業が電話の録音データを改ざん!? 消費者の対抗手段として「通話録音」を試してみる を参考にしてみてください。
3. その他の方法
外付けのガジェットやBluetoothレコーダーを使う方法もあります。こちらも、機種やOS、OSのバージョンへの対応状況、口コミや評価などをご自身で調べてから利用を検討してください。
また、最近のGalaxyシリーズ(Android端末)の多くの機種では、通話画面のメニューに「録音」という項目があり、通話を直接録音できるようです。通話を確実に録音したいならば、Galaxyシリーズの利用を検討してもよさそうです。
まとめ
以上、音声の録音に使うデバイスとして、スマホ(ボイスアプリ)とICレコーダーを比較して説明しました。
多くの人にとって、スマホを使って録音できれば充分です。
もちろん、プロユースでは、ICレコーダーが大いに活用できます。バックアップ的にスマホのボイスアプリを併用したり、カジュアルな用途にはスマホを使う、とするのもよいでしょう。
筆者はプロのライターとして、インタビューや対談を録音し、記事としてまとめる仕事にも関わっています。
現場ではスマホのボイスアプリとICレコーダーの両方で録音することにしていますが、ほとんどの場合、ボイスアプリの録音データを聞きながら原稿を書くスタイルです(ICレコーダーの録音データを聞くことは、まったくといってよいくらいありません)。
というのも、ボイスアプリの録音データであれば、Bluetoothのワイヤレスヘッドホンで聞けるので、電話がかかってきたときでもシームレスに対応でき、その後、すぐに録音データの聞く作業に戻れるからです。
このように、プロであっても快適な作業スタイルは人それぞれ。自分にとってストレスの少ない方法が一番よい、とお考えください。