尋問者(質問者)が回答者に対し、答えてほしい内容を暗示しながら行う尋問(質問)の方法のこと。
刑事訴訟では、主尋問や再主尋問における誘導尋問が、原則として禁止されている。弁護人と弁護側証人のように、尋問者と証人とが友好的な関係にあるからである。一方、反対当事者(被告人側に対する検察側、または、検索側に対する被告人側)は友好的な関係にはなく、誘導尋問の暗示のとおりに証言する可能性は低いので、証人の記憶を喚起する場合などには誘導尋問が許されている(刑事訴訟規則 第199条の3、第199条の4) 。
また、民事訴訟でも、当事者や鑑定人に対する質問における誘導質問が、原則として禁止されている(民事訴訟規則 第115条、第132条の4)。
誘導尋問に関する法規制
日本では刑事訴訟規則や民事訴訟規則で、誘導尋問(誘導質問)が規制されている。
刑事訴訟規則
刑事訴訟規則 第199条の3(主尋問)
主尋問は、立証すべき事項及びこれに関連する事項について行う。
2 主尋問においては、証人の供述の証明力を争うために必要な事項についても尋問することができる。
3 主尋問においては、誘導尋問をしてはならない。ただし、次の場合には、誘導尋問をすることができる。
一 証人の身分、経歴、交友関係等で、実質的な尋問に入るに先だつて明らかにする必要のある準備的な事項に関するとき。
二 訴訟関係人に争のないことが明らかな事項に関するとき。
三 証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるとき。
四 証人が主尋問者に対して敵意又は反感を示すとき。
五 証人が証言を避けようとする事項に関するとき。
六 証人が前の供述と相反するか又は実質的に異なる供述をした場合において、その供述した事項に関するとき。
七 その他誘導尋問を必要とする特別の事情があるとき。
4 誘導尋問をするについては、書面の朗読その他証人の供述に不当な影響を及ぼすおそれのある方法を避けるように注意しなければならない。
5 裁判長は、誘導尋問を相当でないと認めるときは、これを制限することができる。
刑事訴訟規則 第199条の4(反対尋問)
反対尋問は、主尋問に現われた事項及びこれに関連する事項並びに証人の供述の証明力を争うために必要な事項について行う。
2 反対尋問は、特段の事情のない限り、主尋問終了後直ちに行わなければならない。
3 反対尋問においては、必要があるときは、誘導尋問をすることができる。
4 裁判長は、誘導尋問を相当でないと認めるときは、これを制限することができる。
民事訴訟規則
民事訴訟規則 第115条(質問の制限)
質問は、できる限り、個別的かつ具体的にしなければならない。
2 当事者は、次に掲げる質問をしてはならない。ただし、第二号から第六号までに掲げる質問については、正当な理由がある場合は、この限りでない。
一 証人を侮辱し、又は困惑させる質問
二 誘導質問
三 既にした質問と重複する質問
四 争点に関係のない質問
五 意見の陳述を求める質問
六 証人が直接経験しなかった事実についての陳述を求める質問
3 裁判長は、質問が前項の規定に違反するものであると認めるときは、申立てにより又は職権で、これを制限することができる。
民事訴訟規則 第132条の4(質問の制限・法第215条の2)
鑑定人に対する質問は、鑑定人の意見の内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するために必要な事項について行うものとする。
2 質問は、できる限り、具体的にしなければならない。
3 当事者は、次に掲げる質問をしてはならない。ただし、第二号及び第三号に掲げる質問については、正当な理由がある場合は、この限りでない。
一 鑑定人を侮辱し、又は困惑させる質問
二 誘導質問
三 既にした質問と重複する質問
四 第一項に規定する事項に関係のない質問
4 裁判長は、質問が前項の規定に違反するものであると認めるときは、申立てにより又は職権で、これを制限することができる。