第49回衆議院議員選挙が10月19日に公示されました。投開票日は10月31日です。新型コロナウィルス対策をはじめ、経済政策や安全保障、ジェンダー、多様性に向けた取り組みなどさまざまな争点がありますが、投票の準備はできましたか?
多様性のある社会のためには、さまざまな立場の人の意見や視点が必要不可欠です。
国際的な議員交流団体「列国議会同盟(IPU、本部スイス・ジュネーブ)」の発表では、2020年の世界の国会議員で女性が占める割合は平均25.5%だったと報告されています。
日本の女性議員の割合は何%で、世界で何位かをご存知でしょうか?
実は、日本は9.9%(世界166位)で、G7諸国では最低の順位です。
もちろん、数字だけですべてを測ることはできませんが、国や地方の舵取りを行う場所で女性が働きにくいとすれば、そこから生まれる政策は果たして多様性に対応できるものになるのかは疑問です。
令和になった現代の日本で、これほどまでに女性の政界進出が難航しているのはなぜでしょうか?
選挙活動中、握手中に体を触られ、陳情を口実に2人きりで会うことをせがまれる
内閣府男女共同参画局では、立候補を検討しているとき、または立候補準備中に、有権者や支援者、議員などからいずれかのハラスメントを受けたと回答した人は、全体で61.8%、男性で58.0%、女性で65.5%であると発表しました。
議員活動や選挙活動中に受けたハラスメント行為
順位 | 項目 | 女性 | 男性 |
---|---|---|---|
1 | 性的、もしくは暴力的な言葉(ヤジを含む)による嫌がらせ | 26.8% | 8.1%(3位) |
2 | 性別に基づく侮辱的な態度や発言 | 23.9% | 0.7%(8位) |
3 | SNS、メール等による中傷、嫌がらせ | 22.9% | 15.7%(1位) |
4 | 身体的暴力やハラスメント(殴る、触る、抱きつくなど) | 16.6% | 1.6%(7位) |
5 | 年齢、婚姻状況、出産や育児などプライベートな事柄についての批判や中傷 | 12.2% | 4.3%(5位) |
※ 女性の上位5項目
引用:男女共同参画局『共同参画』2021年6月号
特に、政党に属しておらず秘書などもいない地方議員の場合ほど、有権者と立候補者の立場の差を利用されてしまうことが多いようです。
たとえば、一部で「票ハラスメント」と呼ばれるような行為や、一般的なセクハラやパワハラ、ストーカーに類する次のような行為があったとの声があがっており、女性の政治参画の大きな障壁が伺えます。
- キスをしたら投票するからと言われた
- シングルマザーで子育て中に夜の会合に誘われ「子供を置いて来れないのか」と言われた
- 「今から俺のところに来い。じゃないともう二度と支援はしない」と脅された
- 握手中や人混みの中や写真を一緒に撮るときにお尻を触られる
- 性的、もしくは暴力的なヤジを浴びせられた
- SNSなどインターネット上で性的な画像が送られてくる
- 家までつきまとわれた
- 年齢、婚姻状況、出産や育児などプライベートな事柄について批判や中傷をされた
こういった悪質なハラスメント行為によって、身の危険を感じ、活動を断念せざるをえなくなったというケースも少なくないようです。
参考:朝日新聞デジタル 「票ハラスメント」を知っていますか?
参考:J-CASTニュース 「票ハラスメント」酷すぎる!女性議員に「投票してやるからいまから来い」夜遅く呼び出し
参考:読売新聞オンライン 女性候補、有権者から「デートして」・宴席で有力者に体触られ…「票ハラ」に悩む
国政選挙の女性候補者比率の目標は「2025年までに35%」
平成15年から男女共同参画推進本部によって掲げられていた「2020年までに政治家・管理職の女性割合30%」という目標は未達のまま、昨年末に閣議決定した「第5次男女共同参画基本計画」では「2020年代の可能な限り早期」にと下方修正されています。
さらに「国政選挙の女性候補者比率についても2025年までに35%」という目標になっていますが、今回(第49回)の選挙でも女性の割合は2割にも届いていません。
参考:日本経済新聞 衆院選公示、候補者の多様化遠く 20~30代初の1割未満1051人立候補
当選後、議員になってからも続くハラスメント被害の現状
選挙活動中からハラスメントに晒され、無事に当選をした後も戦いは続きます。
2014年には東京都議会で女性議員が議会で質問していたときに、「結婚しろ」「子どもを産め」といったセクハラヤジが投げかけられ大きな問題になりましたが、あれから社会全体として前に進めているのでしょうか?
議会でのヤジだけではなく、議員控室での会話や飲みの席でも当たり前にセクハラ・パワハラ言動が横行しているとの声もあります。特に年配の議員などの価値観が前時代的のままアップデートがされておらず、無意識にそのような発言や行動を繰り返しているのでしょう。
参考:NHK政治マガジン セクハラ、ひどすぎ!怒りの女性議員体験談
昨年から、職場におけるパワーハラスメント対策が義務付けられましたが(改正労働施策総合推進法の施行)、前掲の男女共同参画の地方議員へのアンケートでは、議会にも通報窓口を設けるなどの対策が有効なのではないか、という声もあがっています。
ハラスメントをなくすために有効な取組み
順位 | 実施主体 | 項目 | 女性 | 男性 |
---|---|---|---|---|
1 | 議会 | 議員向け研修 | 69.3% | 61.3% (1位) |
2 | 議会 | ハラスメント防止のための倫理規定等の整備 | 66.6% | 57.6% (2位) |
3 | 議会 | 相談窓口の設置 | 63.1% | 52.0% (3位) |
※ 女性の上位3項目
※ 全6項目について、実施主体(議会または政党・会派)ごとに、それぞれ「有効」「どちらともいえない」「有効でない」から選択。
議会での対応も急務として、有権者のセクハラやパワハラに対する意識、票ハラスメントの事実認識と防止のための相互理解など、社会全体で意識改革を進めていくことも必要です。
まとめ
大きなスキャンダルや暴言・失言問題があれば、メディアで取り沙汰される可能性が高い一方、選挙活動中からハラスメントと戦い続けている候補者がいることも認識したいところです。
このような話題は「ハラスメントで傷つくようでは政治家はつとまらない」「覚悟の上で議員になるべき」「女性の政治進出にハラスメントはつきもの」と軽視されてきたようですが、これらはまさに古い価値観であり、プライベートへの干渉や性的な要求に晒される必要性はどこにもないはずです。
また、女性の視点を中心に書きましたが、男性議員や候補者に対する(特に年上の女性からの)「結婚しないの?」「子どもは作らないの?」といった言葉も、適否を慎重に考えたいところです。
あなた自身の一票を大切にするのはもちろん、選挙や議会運営の場でも、候補者と有権者、そして議員同士がハラスメントに悩まされない社会を作っていけるとよいですね。