ホーム ビジネス 賃貸契約前の「重要事項説明」とは? トラブル回避のためには会話の録音を

賃貸契約前の「重要事項説明」とは? トラブル回避のためには会話の録音を

この記事のサマリー

  • 宅建士による重要事項説明は、宅建業法で義務づけられいる
  • 主に物件に関する事項と取引に関する事項が示され、マンションは追加事項あり
  • 重要事項説明では、メモをとるのはもちろん、会話全体を録音をするのが確実

目次

重要事項説明とは、不動産(土地や建物など)の売買契約や貸借契約をする前に、不動産会社の宅地建物取引士(宅建士)が買主や借主に対して、不動産に関する重要事項を説明することで、「重説」と略されます。

宅建士による重要事項説明は、宅地建物取引業法(宅建業法)で義務づけられています(第35条)。

重要事項説明の目的は、買主や借主の保護です。買主や借主は不動産会社に比べて圧倒的に知識や経験が少なく、買う場合は当然、借りる場合もまとまった金額が必要であるため、何か問題があったときに受ける損害が大きいからです。買主や借主は、購入する不動産に関する重要事項を十分に理解した上で取引をすることが、重要事項説明が必須とされる理由です。

重要事項を書面にしたものを「重要事項説明書」といい、これは契約書とは異なります。重要事項説明書には宅建士と買主・借主双方の署名・捺印がなされますが、買主や借主が重要事項の説明を受けたことが証明されるだけであり、契約そのものの証明にはならない点に注意が必要です。

重要事項説明は多岐にわたり、マンションの場合は追加事項も

重要事項説明では、主に物件に関する事項取引に関する事項が示されます。

マンションやアパート(区分所有建物)の場合には、共用部分や専有部分、修繕積立金や管理費など、追加で説明される事項があります。

なお、令和2年(2020年)8月28日から、水害ハザードマップにおける所在地の説明が義務化されています。

1. 物件に関する権利関係の明示

  • 登記された権利の種類、内容等
  • 私道に関する負担
  • 定地借家権又は高齢者居住法の終身建物賃貸借の適用を受ける場合(賃貸の代理・媒介を行う場合)

2. 物件に関する権利制限内容の明示

  • 都市計画法、建築基準法等の法令に基づく制限の概要
  • 用途その他の利用に係る制限に関する事項(賃貸の代理・媒介を行う場合)

3. 物件の属性の明示

  • 飲用水・電気・ガスの供給・排水施設の整備状況またはその見通し
  • 宅地造成又は建物建築の工事完了時における形状、構造等(未完成物件のとき)
  • 建物状況調査の結果の概要(既存の建物のとき)
  • 建物の建築及び維持保全の状況に関する書類の保存状況(既存の建物のとき)
  • 当該宅地建物が造成宅地防災区域内か否か
  • 当該宅地建物が土砂災害警戒区域内か否か
  • 当該宅地建物が津波災害警戒区域内か否か
  • 石綿(アスベスト)使用調査結果の内容
  • 耐震診断の内容
  • 住宅性能評価を受けた新築住宅である場合(住宅性能評価書の交付の有無)
  • 台所、浴室、便所その他の当該建物の設備の整備の状況(賃貸の代理・媒介を行う場合)
  • 管理の委託先(賃貸の代理・媒介を行う場合)
  • 水害ハザードマップにおける所在地【令和2年8月28日より】

4. 取引条件(契約上の権利義務関係)の明示

  • 代金、交換差金以外に授受される金額及びその目的
  • 契約の解除に関する事項
  • 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項
  • 契約期間及び契約の更新に関する事項(賃貸の代理・媒介を行う場合)
  • 敷金等契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項(賃貸の代理・媒介を行う場合)
  • 契約終了時における建物の取壊しに関する事項(賃貸の代理・媒介を行う場合)

5. 取引に当たって宅地建物取引業者が講じる措置

  • 手付金等の保全措置の概要(業者が自ら売主の場合)
  • 支払金又は預り金の保全措置の概要
  • 金銭の賃借のあっせん
  • 担保責任の履行に関して講ずる措置の内容

6. マンション(区分所有建物)の場合に必要となる事項

  • 敷地に関する権利の種類及び内容
  • 共用部分に関する規約等の定め
  • 専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約等の定め
  • 専用使用権に関する規約等の定め
  • 所有者が負担すべき費用を特定の者にのみ減免する旨の規約等の定め
  • 修繕積立金等に関する規約等の定め
  • 通常の管理費用の額
  • マンション管理の委託先
  • 建物の維持修繕の実施状況の記録

参考:国土交通省「重要事項説明・書面交付制度の概要」(PDF)

重要事項説明に関するトラブル7選

以下、マンションの賃貸契約を念頭に置き、重要事項説明にまつわる入居後のトラブルを7つ見ていきましょう。

1. 敷金が思ったよりも戻ってこなかった

マンションやアパートの敷金は、家賃1か月または2か月分が一般的でしょう。重要事項説明では「敷金返還に関する特約がどうなっているのか」を確認しておきましょう。

一般的に、入居者には退去時の原状回復が義務づけられます。原状回復は「完全に入居前の状態に戻す」というわけではなく、普通に暮らしていれば生じる程度の汚れは貸主(大家さん)が負担するのが原則と、国土交通省のガイドラインでも定められています。

しかし、原則以上の負担を入居者に求める「特約」を設けているケースがあり、たとえば「退去時のハウスクリーニング代は敷金から補てんする」「(貸主の負担なしに)すべて敷金から補てんする」などと記載されています。この特約を必ず確認し、疑問点は担当者に聞いておきましょう。

2. 更新時の更新料、更新手数料、保証料が高い

更新料は、契約更新時(通常2年ごと)にかかる費用で、家賃1か月分が一般的です。また、貸主に払う更新料とは別に、不動産会社に支払う更新手数料がかかる場合があります。さらに、賃貸保証会社に支払う保証料やその更新料がかかる場合まであり、更新時の費用負担が思ったよりも大きいかもしれません。

そのマンションやアパートに長く住み続けるつもりであれば、きちんと確認しておきたい事項です。

3. 急な転勤が決まったけど、退去予告が2か月前という契約だった

契約期間中の中途解約の申し出、つまり退去予告は1か月または2か月前が一般的です。「2か月前」という契約の場合は、貸主に退去を連絡してから2か月間は家賃を払わなければなりません。さらに新居の費用もかかるので、相当な負担となるでしょう。

急な転勤の可能性がある職業の方は、その物件の退去予告が何か月前かを確認しておきましょう。

4. 備え付けのエアコンが故障したけど、修理代が借主負担だった

エアコンなどの備え付けの設備は、通常の利用で壊れてしまった場合、貸主が修理代を負担すると考えるのが一般的でしょう。ただし、重要事項説明に「借主負担」と示されている場合は、借主が負担しなくてはなりません。

また、事前の内見でエアコンがついていたので備え付けだと思っていたけど、実は前の居住者が置いていったもの(残置物)で、重要事項説明にもエアコンが備え付けである旨の記載がなかった(結局、借主が修理代を負担した)というケースもあるそうです。

このようなことは、エアコンだけでなく、システムキッチンやコンロ、給湯器などでも起こりえます。

備え付け設備は何か、もし故障した場合、貸主と借主のどちらが修理・交換の費用を負担するのかを確認しておきましょう。

5. 猫を飼っているけど、実はペットNGの物件だった

専有部分(室内)であっても、犬や猫などのペットの飼育、楽器演奏、喫煙、石油ストーブの利用、事務所利用、又貸し、ルームシェアなどは不可の物件があります。これらは、重要事項説明の中でも特記事項容認事項で示されることが多い事柄です。

ペットNGの物件で猫を飼っているのであれば当然、契約違反となり、退去事由になります。ただし、敷金を◯か月分(通常1か月または2か月分)追加すればペットを飼えるとしている場合もあるので、貸主に確認しましょう。

6. 共用部分で子どもがよくボール遊びをしているけど…

マンションやアパートでは、エントランス、エレベーター、通路など、専有部分以外はすべて共用部分です。また、ベランダやルーフバルコニー、集合ポスト、駐輪場や駐車場なども、あくまで専用使用権が認められた共用部分です。

共用部分でのボール遊びは、通路であれば玄関ドアにぶつかったり、振動が部屋に伝わったり、設置されている消火器を倒すなどの可能性があります。駐車場であれば車との接触や、ボールが道路に飛び出すなどの危険が伴いますし、最悪の場合は事故につながりかねません

もちろん、同じ建物の住人同士、ある程度までは目をつぶるとしても、迷惑や危険を伴う場合は看過できません。直接伝えられれば子どもや親御さんに伝えるか、貸主や管理会社に相談しましょう。

重要事項説明では「共用部分に関する規約等の定め」で「ボール遊びの禁止」が明記されているケースもあれば、(他の住人に対する)迷惑行為と解釈するケースもありえます。人それぞれ、モラルやマナーに対する考え方は異なるとはいえ、「心配している」「迷惑を受けている」という事実を伝えることで、状況が改善される可能性があります。

7. 実はマンションが事故物件だった

自分が借りたマンションの一室が、実は過去に自殺者を出した物件だったケースです。このような物件を、専門用語で「心理的瑕疵物件」、俗に「事故物件」と呼びます。

心理的瑕疵とは「借主・買主に心理的な抵抗が生じる恐れのある事柄」を指します。このような事実を知っていれば、借主や買主がこの部屋を借りるか買うことはなかったかもしれず、事前に説明しなかった場合は貸主や売主の告知義務違反となります。

ただし、 賃貸物件の場合はすべてのケースで「告知がなされるか」というと、そうではありません

国土交通省が2021年10月に発表した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、告知義務について次のように示されています。

告知義務なし 告知義務あり
① 老衰、病死(自然死)
② 日常生活での不慮の事故死(自宅の階段からの転落死、入浴中の溺死、転倒事故、食事中の誤嚥など日常生活の中で生じた事故)
③ 隣接住戸や通常使用しない集合住宅の共用部での死亡(自殺・他殺を含む)
① 自殺、他殺、火災による死亡
② 特殊清掃や大規模リフォームなどが行われた場合
※ 賃貸借取引の場合、上記①②の死が発生もしくは発覚してからおおむね3年間告知し、以降は原則として告知の義務はない
※ 売買取引については告知義務が継続する
③ 借主・買主から問われた場合
④ 社会的な影響の大きさなどから、借主・買主が把握しておくべき特段の事情があると宅建業者が判断した場合

参考:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」

上記からわかるとおり、賃貸物件では、もし自殺や他殺、火災による死亡があった場合でも、告知義務は3年間しかありません。つまり、その事実が3年以上前に起こったことであれば、不動産会社が借主にその事実を説明しなくてもよいのです(売買物件の場合は告知義務の期限は設定されていないため、必ず告知しなければなりません)。

しかし、「借主・買主から問われた場合」は告知義務が発生することになりますので、気になる場合は重要事項説明の際に、事故物件でないかどうかを確認しておきましょう。

なお、室内ではなく通路などの共用部分で自殺や他殺が起こった場合はどうでしょうか。室内で起こった場合の告知義務は、その部屋を借りる人だけが対象です。一方、共用部分で起こった場合の告知義務は、その場所を日常的に使う人が対象です。たとえば、101号室、102号室、103号室がその通路に面していれば、それらの住人が対象となります。

重要事項説明の際は、ぜひ録音を

重要事項説明は、そもそも「言った、言わない」の問題を未然に防ぐことも目的のひとつです。

しかし、説明の際は書面に盛り込まれない「口約束」もありえます。たとえば、内見の際に部屋が汚れていたので掃除をお願いしたのに、入居の際に掃除がなされていなかったというケースです。営業担当者が安請け合いをしたものの忘れてしまったか、業者に頼むと思ったよりも費用がかかることがわかり、簡単に済ませたか、あえてそのままにしたことも考えられます。

また、上記のトラブル例でも触れましたが、敷金返還について、重要事項説明書や契約書での内容と、実際の返還額とに差を感じた、ということもあるでしょう。契約時からだいぶ時間が経過しており、記憶があいまいなので、引き下がらざるをえないケースが多いようです。

したがって、重要事項説明の際、書面に記載のない内容や自分が特に重要だと思う点は、いつ(日時)、どこで(場所)、誰が(担当者)話したのかをメモするとともに、会話全体を録音をするのが確実です。また、不動産会社と宅建士は重要事項説明書に記載する内容に責任を持ちますので、自分にとって重要な事柄は書面に加えてもらうことも検討しましょう。

録音にあたっては、スマートフォンの無料アプリを使うと便利です。

無料のAI録音アプリ「Voistand」では、録音した音声が自動でカレンダーに紐づけされ、AIによる文字起こしデータや、録音場所の位置情報も記録されるため、データの管理や振り返りがとてもしやすくなります。

iOS(iPhone/iPad)版とAndroid版がありますので、以下からダウンロードをしてお使いください。

iOS版(App Store) https://apps.apple.com/jp/app/id1544230010#?platform=iphone
Android版(Google Play Store) https://play.google.com/store/apps/details?id=com.voistand.app

まとめ

これまでは対面で行われてきた重要事項説明は、賃貸取引については平成29年(2017年)10月1月から、売買取引については令和3年(2021年)3月30日から、オンラインによる説明(「IT重説」)の本格運用が始まっています。

重要事項説明書を事前に送付していれば、パソコンやスマートフォンを使ったウェブ会議などを通じてオンラインで重要事項説明ができるようになったのです。これにより、宅建士と借主が時間を合わせるだけで、重要事項説明ができることになります。特に物件が遠方の場合、不動産会社に何度も足を運ぶのは時間もお金もかかりますので、助かる方が多いでしょう。

さらに、令和4年(2022年)5月18日からは重要事項説明書の電子化がスタートしました。今後は書面(紙)の郵送ではなく、メールやダウンロードによって送付できることになります。

このように不動産取引の利便性が向上しても、重要事項説明の大切さは変わりません。上記で挙げた7つのトラブル以外にも気になることがあれば、宅建士にどんどん質問し、納得した上で物件を選びましょう。

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