以前の記事で、聴覚情報処理障害について取り上げました。
今回は、聴覚障害の種類や特徴などの基礎知識と、AI録音アプリ「Voistand」の自動文字起こしを有効活用する方法を解説します。
聴覚障害の定義
聴覚障害は、外部の音声情報を大脳に送るための部位(外耳、中耳、内耳、聴神経など)のいずれかに障害があるために、聞こえにくい、あるいは聞こえなくなっている状態のことをいいます。
聴覚障害の原因は、障害になった時期によって先天的と後天的に分けられます。
- 先天的
聴覚組織の奇形や、妊娠中に風疹などのウイルス感染が原因で聴神経系などが侵された場合 - 後天的
突発性の疾患や薬の副作用、頭部外傷、高齢化などが原因で聴覚組織に損傷を受けた場合
正常な聴力の人が感じる音の強さは0dB(デシベル)前後です。数値が大きくなるごとに難聴の程度が強くなり、30dB以上が「軽度難聴」、50dB以上が「中度難聴」、70dB以上が「高度難聴」、100dB以上が「ろう(聾)」とされます(70dB以上から身体障害者手帳の交付を受けられます)。
聴覚障害の種類
聴覚障害には大きく分けて3つの種類があるとされています。
- 伝音性難聴
外耳から中耳に障害があり、音が聞こえにくい難聴です。常に耳栓をしているような、音が聞こえにくい状態が続いています。 - 感音性難聴
内耳から聴神経、脳にかけて障害がある難聴です。音だけでなく言葉も聞こえづらくなります。加齢のために起こる老人性難聴は感音性難聴に該当します。 - 混合性難聴
伝音難聴と感音難聴の両方をあわせ持つ難聴です。
イラスト出典:NHK
聴覚障害者の種類
聴覚障害者には大きく分けて3つの種類があるとされています。
- ろう(聾)者
言語習得前に失聴した人。完全に聞こえない、ほとんど聞こえない、機器を使っても聞き取りが難しい、発話が難しいなど。
手話(日本手話)を第一言語としている人が多い。 - 難聴者
ある程度は聞こえるが、健常者に比べると聞き取りに困難がある人。発話がある程度できるなど。人工内耳などの機器を使うことで聞き取り能力を補っている人、口話で生活している人が多い。 - 中途失聴者
言語習得後に、病気やケガなど何らかの理由で聞こえなくなった人。完全に失聴しても話すことができる人が多い。
聴覚障害者を示すマーク
聴覚障害者を示すマークとして、次の2つがあります。
聴覚障害者標識
道路交通法に基づく標識のひとつです。円形で緑地に黄色の2つの耳の図案を配し、全体として蝶のように見えるデザインです。2008年(平成20年)6月1日の道路交通法改正による聴覚障害者に係る免許の欠格事由の見直しに伴って導入されました。
聴覚障害者で車を運転する人は、車に特定後写鏡(ワイドミラー)を取り付け、この標識を付ける義務があります。
周囲の運転者は、この標識を付けた車に、幅寄せや割り込みなどの行為を行ってはなりません。
耳マーク
聴覚障害者の「耳が不自由」という自己表示と、周囲からの配慮をうながすために、一般社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会(全難聴)が考案したマークです。
耳に音が入ってくる様子を矢印で示し、一心に聞き取ろうとする姿を表したものとされています。
聴覚障害者は、見た目には障害がわからないため、誤解されたり、危険にさらされたりするなど、生活上の不安や不便が少なくありません。耳マークによって「聞こえない」「聞こえにくい」ことを周囲が理解し、配慮しやすくなります。
聴覚障害者が困ることと、周囲からの配慮
すでに触れたとおり、聴覚障害は外見では判断しづらく、周囲に気づいてもらえないことが多くあります。生活上でよくある困りごとと、周囲はどのように配慮すべきかを解説します。
手話ができると思われる
特に難聴者や中途失聴者は手話ができるとは限りません。どのような方法でコミュニケーションをとればよいかを、聴覚障害者本人に聞きましょう。
たとえば、手話以外の手段としては、筆談が代表的です(後述参照)。
大きな声は聞き取れると思われる
音を感じる器官(内耳)に障害がある人も多く、大きな声でも聞き取れない場合があります。やや大きな声で話しても聞き取れていない場合は、筆談などで伝えてください。
会話が矢継ぎ早だと困る
難聴者が補聴器を使用していても、声がはっきりと聞き取れない場合があります。また、雑音が大きな環境でも声が聞き取りにくくなります。
相手が聞き取りやすいように、ゆっくりと文節(言葉のかたまり)で区切って話す、相手の顔を見ながら口を大きく開けて話す、といった工夫をしましょう。
複数の人が同時に話すと聞き取れない
聴覚障害者にとって、複数の人が同時に話す会話の聞き取りは、一人が話すとき以上に困難です。
できるだけ一人ずつ、ゆっくりと発言しましょう。
事故などの緊急時の状況がわからない
聴覚障害者は、駅や公共の場でのアナウンスや警告音などを聞き取れず、状況が把握できない場合があります。
もし困っていることがわかったら、できるだけサポートをしましょう。
筆談のときに長い文章で説明される
視覚障害者とのコミュニケーションでは、筆談は有効な手段ですが、長い文章では内容を理解しにくい場合があります。
筆談をするときは、端的に内容を示しましょう。簡単な図などでわかりやすく示すことも大切です。
AI録音アプリ「Voistand」を
コミュニケーションに役立てる
聴覚障害者と健常者とのコミュニケーションは、
- 筆談
お互いに、伝えたいことを文字や図で書く - 空書
お互いに、空中にゆっくりと文字を書く - 読話
聴覚障害者が、話し手の口の形や動きで話を読み取る
といった方法があります。
ただし、筆談に適した筆記用具を常に携帯しているとは限りませんし、空書や読話では正しく意思疎通がはかれない場合があります。
AI録音アプリ「Voistand」は、録音しながら自動文字起こしを行いますので、健常者がVoistandに向かって話し、テキストを聴覚障害者に見せることで、発した言葉をかなり正確に伝えることができるでしょう。
たとえば、聴覚障害者が駅の緊急アナウンスを聞き取れずに困っている場合、Voistandで直接録音・自動文字起こしをして、テキストを見せてあげましょう。雑音や騒音などでクリアに録音できなければ、Voistandに要点だけを短く話すといった工夫もできます。
中途失聴者であれば、聞き取りは困難でも発話が可能な人が多いので、自分の発話のフィードバックとして、Voistandの自動文字起こし機能を使うこともできます。
また、聴覚障害者がセミナーなどに参加した際、話されている内容をVoistandでリアルタイムに文字起こしすれば、言葉を目で見て確認でき、大いに理解の助けになるはずです。
まとめ
以上、視覚障害に関する基本的な情報をまとめました。
コロナ禍でマスクをするのが当たり前になっている中、聴覚障害者にとっては「読話」(話し手の口の形や動きで話を読み取ること)ができないなど、コミュニケーションがしにくくなっている状況です。
この記事が、聴覚障害の理解、聴覚障害者への周囲からの配慮、Voistandなど音声・録音アプリによるコミュニケーション支援に役立てば幸いです。