ホーム ハラスメント うつなどの精神障害の労災基準、「カスタマーハラスメント」「感染症リスク」について見直し

うつなどの精神障害の労災基準、「カスタマーハラスメント」「感染症リスク」について見直し

この記事のサマリー

  • 労災認定の際、心理的負荷の基準におけるカスハラ項目が見直される
  • 感染症リスクの大きな業務に従事に関する項目が追加される見通し
  • 厚生労働省では、労災認定の具体例とともに心理的負荷の強度を規定
  • 心理的負荷の強度が「強」の場合に労災が認(複数の場合は合算)
  • 心理的負荷の労災申請は第三者判断。パワハラなどには録音が証拠として最適

目次

コロナ禍の影響もあり、増加の一途をたどっている「カスタマーハラスメント(通称:カスハラ)」

今年6月20日に開催された厚生労働省の有識者検討会では、精神障害を労災認定する際の心理的負荷の基準でカスハラ項目の見直しや、感染症リスクの大きな業務に従事している場合の項目の追加を行う見通しだと発表しました。

新しい基準は早ければ年内に見直される予定です。
今回は労災についての基本知識と、現在の精神障害の労災基準はどうなっているのかをまとめました。

精神障害は命の危険にもつながる病です。日々忙しさに負われて心が疲弊したときに、うまく回避する方法があるかを事前に知っているかどうかは重要な別れ道になります。

あなたや周りの人がいつか困ったときのために、ぜひ一読してみてください。

画像・文章引用厚生労働省「精神障害の労災認定」

労災とは?

労災は「労働災害」の略で、労働者の業務上や通勤中にこうむった災害を指します。労働者には全員、労災保険が適用されます(アルバイト・パートタイマーなどの雇用形態に関係なく全労働者)。労災保険は事業者の負担する保険料によってまかなわれており、もし労災に遭った際には申請を行い、認定されると保険給付がなされます

【労災に該当する災害】

  • 業務上の怪我・病気
  • 通勤中の怪我
  • 業務・通勤中の病気・怪我によっての死亡

業務上の病気には、うつなどの精神障害も含まれているのですが精神障害の発病の場合は、その原因が明確に仕事によるストレスである場合に限られます

厚生労働省が発表している「精神障害の労災認定」の資料では、

仕事によるストレス(業務による心理的負荷)が強かった場合でも、同時に私生活でのストレス(業務以外の心理的負荷)が強かったり、その人の既往症(過去にかかったことのある病気)やアルコール依存など(個体側要因)が関係している場合には、どれが発病の原因なのかを医学的に慎重に判断しなければなりません。

と、されています。

精神障害の労災認定要件は3つの原則があります。

  1. 認定基準の対象となる精神障害を発病していること。
  2. 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること。
  3. 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと。

また、「業務による強い心理的負荷」が認められるかどうかについては、「業務による心理的負荷評表」というものがあり、各例に負荷「強」「中」「弱」というレベルが制定されており、負荷が「強」とされた場合に認定されます。
※ 要因が複数ある場合には、各要因を足して負荷が算出されます。

現状の精神障害の労災基準

前述のとおり、「業務による心理的負荷」には具体的な基準が設けられており、「特別な出来事があった場合(主に生死に関わるもの)」とそれ以外に分けられています。

特別な出来事があった場合

  • 生死に関わる業務上の怪我や病気に陥った。
  • 永久に労働不能となる後遺症を残す業務上の怪我があった。
  • 業務に関連し誰かを死亡させた、または生死に関わる重大な怪我を負わせた(故意を除く)。
  • 強姦や、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為やセクハラを受けた。
  • 発病直前の1か月におおむね160時間を超える(または「3週間に120時間以上」など、より短期間に同程度の)時間外労働を行った

など、これらの特別な出来事があった場合に関しては、「業務による心理的負荷」に認められます。

特別な出来事以外

特別な出来事以外については、かなり細かく具体例があり、それぞれに負荷「強」「中」「弱」が定められています。

心理的負荷「強」の一例

  • 会社の経営に影響するような重大な仕事上のミスをし、事後対応にも当たった。
  • 退職を強要された。
  • 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃などによるパワーハラスメントを受けた。
  • 同僚等から、暴行又はひどいいじめや嫌がらせを受けた。

心理的負荷「中」の一例

  • 悲惨な事故や災害を目撃、体験をした。
  • 会社で起きた事件や事故について責任を問われた。
  • 自分の関係する仕事で多額の損失が生じた。
  • 業務に関連し違法行為を強要された。
  • 達成困難なノルマが課された。
  • ノルマが達成できなかった。
  • 新規事業の担当になった、会社の立て直しの担当になった。
  • 顧客や取引先から無理な注文を受けた。(※今回見直しが検討されているカスハラに関する項目)
  • 顧客や取引先からクレームを受けた。(※今回見直しが検討されているカスハラに関する項目)
  • 仕事内容、仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった。
  • 1か月に80時間以上の時間外労働を行なった。
  • 2週間(12日)以上にわたって連続勤務を行なった。
  • 配置転換があった。
  • 転勤をした。
  • 複数名で担当していた業務を一人で担当するようになった。
  • 非正規社員であるとの理由等により、仕事上の差別、不利益な取り扱いを受けた。
  • 上司や同僚や部下とのトラブルがあった。

心理的負荷「弱」の一例

  • 大きな説明会や公式の場での発表を強いられた。
  • 上司が不在になることにより、その代行を任された。
  • 勤務形態に変化があった。
  • 仕事のペース、活動の変化があった。
  • 自分の昇格、昇進があった。
  • 部下が減った。
  • 早期退職制度の対象となった。
  • 非正規社員である自分の契約満了が迫った。
  • 理解してくれていた人の異動があった。
  • 上司が替わった。
  • 同僚等の昇進・昇格があり、昇進で先を越された。

すでにカスハラの項目は心理的負荷「中」とされていますが、今回の見直しでは、具体的な内容が増えるか(長時間の拘束や、暴言・暴力に関する記述がないため)、内容によっては心理的負荷「強」とされるのではないかと思います。

また、今後追加される感染症リスクに関する項目について強度がどう判断されるかは気になるところです。

また、厚生労働省「精神障害の労災認定」の書類では、各項目の心理的負荷の強度が変わる場合の具体例も掲載されています。気になる項目がありましたら、ぜひ合わせてご覧ください。

労災の申請方法

労災から補償を受けるには、申請手続きが必要です。

おおまかな流れは以下のとおりで、怪我や病気による給付の場合は、請求受付から給付まではおおむね1か月ほどかかるようです。

  1. まず労災にあった従業員は、会社に報告します。
  2. 会社か従業員が、労災の請求書を労働基準監督署長(労基署)へ提出
  3. 労働基準監督署長において労災認定となるかが調査されます。
  4. 調査により、労災に認定されると保険給付を受け取れます

より詳しい流れや、必要な書類は厚生労働省のサイト「労働災害が発生したとき」に記載されています。
必要に感じた方は、ぜひそちらをご覧ください。

もし労災の可能性があるパワハラやセクハラを受けていると感じた場合、客観的な証拠としては録音や録画が一番確実といえますが、相手にバレずに動画を撮影するのはかなり難しいかもしれません。

現在では、長時間録音が可能なボイスレコーダーやスマートフォンアプリがあるため、いつ起こるかわからないハラスメントへの対抗策としては音声データの録音がおすすめです。

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など、他人からの暴言やハラスメントに悩まされている人に寄り添った機能が充実しています。

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Voistandをさらに詳しく知りたい人は、ぜひ以下の過去記事をご覧ください。

過去記事:録音や音声メモに無料スマホアプリ「Voistand」を使おう。その7つのメリットとは?

まとめ

いかがだったでしょうか?

心理的負荷の採点は、人によって思うところがあるかもしれません。渦中で悩まれてい人には、採点されることすら無力感を感じてしまうかもしれません。厚生労働省の精神障害の労災認定を読んでみることで、あなたや大切な人の現在のストレスを知ることができるかもしれません。

もし頑張りすぎてしまっているのであればぜひ「ひと休み」をしてください。

そして、もし休むことも叶わない状況であれば、労災申請も視野にいれながら、まずは心療内科や精神科を受診してみるのがよいでしょう。

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