あなたの会社では、ハラスメント防止の取り組みはもうはじめていますか?
2022年4月から、改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)にもとづき、中小企業に対してもパワーハラスメント防止措置が義務付けられます。しかし、日本商工会議所の2021年7〜8月の調査では、パワハラ防止法の名称・内容を知っている企業はわずか42.5%に止まっており、まだまだ認知がされていない状況のようです。
「パワハラ」「セクハラ」「マタハラ」などハラスメントの種類は多岐に渡り、ハラスメント防止措置といっても、何からどのように手をつければ良いのか困惑しているという企業の方も多いのではないでしょうか?
そんな企業の強い味方となってくれる、「ハラスメント対策BOOK」が日本商工会議所から発表されました。
事業主に義務付けられるハラスメント防止対策の内容や、ハラスメント対策BOOKのおすすめポイントについて簡単にご紹介いたします。
どのような対策が必要なのか?
事業主はハラスメント防止の措置を必ず行わなければならず、罰則規定は見送られていますが企業名が公表される可能性があります。
厚生労働省が提唱する具体的な防止措置としての取り組みは、次の通りです。
事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
- パワーハラスメントの内容
- パワーハラスメントを⾏ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること
- パワーハラスメントの⾏為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に 規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 相談窓⼝をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
- 相談窓⼝担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
- パワーハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、パワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応すること。
職場におけるパワーハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
- 事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
- 事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に⾏うこと。
- 事実関係の確認ができた場合には、⾏為者に対する措置を適正に⾏うこと。
- 再発防止に向けた措置を講ずること。
併せて講ずべき措置
- 相談者・⾏為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知
- 事業主に相談したこと、事実関係の確認に協⼒したこと、都道府県労働局の援助制度を利⽤したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発
事業主が行うべきハラスメント対策のポイントとしては
- 相談窓口の設置
- ハラスメントに対する企業のスタンスや方針の明確化
- 就業規則内や社内規定でのハラスメントの取り扱いの明記
- 全社員への周知
といった措置が必要となります。
上記では、パワーハラスメント(パワハラ)にスポットが当てられている措置例ですが、セクシャルハラスメント(セクハラ)妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(マタハラ)についても記載があり、同様に取り組みが義務付けられています。
業務上必要な指導との区別が難しいと悩みの声に「ハラスメント対策BOOK」
ハラスメントは人と人の間で起こる問題の上、働き方も価値観も多様化する昨今では起こりうる状況や立場があまりに多岐に渡るため、想定されるシチュエーションが膨大です。いざ就業規則に組み込むにも、ハラスメントの対処を行うにも、企業で0から取り組みを行うのはあまりにも大変で、後回しにしてしまっている企業も多いのではないでしょうか?
そんな中小企業の悩みを解決してくれる、ハラスメント防止措置の虎の巻ともいえるのが、先に紹介した日本商工会議所の発表した「ハラスメント対策BOOK」です。
ハラスメント対策の必要性から、職場で発生しやすいハラスメントの具体例だけではなく、指導者側がハラスメントととられないためにはどうすべきかなども非常にわかりやすく記載されています。
ハラスメント対策BOOKのおすすめポイント
- 的確なindexで確認したい項目をスピーディーに読むことができる
- 誰が呼んでもわかりやすい文章で記載されている
- ハラスメントの判断基準や抵触理由が明記されている
- ハラスメントと思われないためにどうすべきかの改善点が記載されている
- 事業主側が対応すべき事項についてわかりやすく要点がまとめられている
すでにハラスメント防止対策を始めているという企業でも、ケアが不足しているポイントはないかを確認できる一冊になるのではないでしょうか。
ハラスメント対策BOOKは、日本商工会議所ならびに東京商工会議所のホームページで公開されており、1月下旬以降は日本商工会議所の主催セミナーや各地商工会議所の窓口、経営指導員による巡回指導等で会員事業者等に配布されるようです。
まとめ
いかがだったでしょうか?年度末に向かう慌ただしい中ですが、2022年4月の義務化に向けて一社でも多くの企業がハラスメント防止の取り組みをはじめ、一人でも多くの働き手が安心して働ける環境になるとよいですね。
Voista Mediaでも、ハラスメントに関する事例や取り組みについて紹介しています。ぜひこちらも参考にしてくださいね。
過去記事:パワハラ防止法で何がどう変わる? 働く人の尊厳や就労環境を守る手立てとなるのか
過去記事:裁判所の判例の探し方と、判例で見る「パワハラ」「セクハラ」事例