近年、職場の安全を見直す際に対応が急務とされる問題のひとつとして、「ハラスメント対策」が挙げられるのではないでしょうか?
2024年は、ハラスメントが大きく知られるきっかけとなったセクハラやパワハラに留まらず、顧客による悪質なクレームや迷惑行為に悩まされるカスハラ(カスタマーハラスメント)問題が大きく取り上げられた年でした。自治体のカスハラ防止条例にはじまり、従業員の氏名の取り扱いを見直すといった対応をはじめた企業や団体もありました。
2020年(中小企業では2022年)からパワハラ防止法(労働施策総合推進法の一部改正)が義務化されており、未対応の場合には「安全配慮義務違反」とされてしまうケースもあります。
2024年の全国的なハラスメント対応の変化を知り、ぜひ来年のビジネスライフにお役立てください。
1. 自治体で広がるカスハラ防止条例の成立。東京都は2025年4月施行
顧客による著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)の防止を目的とした、カスハラ防止条例の制定が全国自治体で広がっています。東京都は全国初のカスハラ防止条例(正式名称「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」)を成立させ、2025年4月から施行されます。
「社会全体でカスタマー・ハラスメントの防止を図るとともに、その防止に当たっては、顧客等と就業者とが対等の立場において相互に尊重」という基本理念の下、カスハラ用語の定義や、都・顧客等・就業者・事業者に対するそれぞれ責務を定めています。
2024年は、東京都に続いて全国の自治体でもカスハラ防止条例の協議が始まり、社会問題となっているカススタマーハラスメントにようやくメスが入った年でした。
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2. 「育休取ったら殺す」全国市町村のハラスメント問題が次々と露呈
地方自治体のカスハラ防止条例の制定が進む一方で、市町村によるハラスメント問題が目立った年でもありました。
愛知県東郷町では、2018年から町長を務めていた井俣憲治町長(57)による数々のパワハラやセクハラ行為が問題となりました。記者会見で謝罪の言葉を述べたものの、記者から各事案についての具体的な説明を求められると「誰かわかってしまうけど言いますか。それハラスメントですよ」とドヤ顔で返答したことが大きな批判を呼びました。
沖縄県南城市では、4期に渡り市長を勤めている古謝(こざ)景春氏(69歳)の元運転手や女性市職員へのセクハラ疑惑が浮上。セクハラについては「一切やっていない」と否定した上で「女性としての魅力も見ていないのに、触るわけがない」と発言。女性に対する尊厳を傷つけるハラスメント発言であると炎上しました。
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3. ハラスメントと匿名性の問題。従業員の名札廃止、加害者の氏名公表との二極化
2024年は、SNSなどによるインターネットを通じたハラスメントやプライバシーの侵害から働き手を守るべく、従業員や職員の名札を廃止する企業や自治体が増えた年でした。苗字のみ、イニシャル表記、ビジネスネームの導入などによって、インターネットでの個人情報の特定、晒し行為、ストーキングなどのハラスメントを防ぐという狙いがあるようです。
一方で、三重県桑名市が市議会へ提出したカスハラ防止条例案では、カスハラを繰り返した場合は「市のウェブサイトなどで氏名公表を行う」という制裁措置が盛り込まれていることが話題になりました。一度だけの迷惑行為で氏名公表にいたることはなく、警告を無視し、なおカスハラを繰り返した場合の限定的な罰則ではありますが、条例案が可決された場合には大きな抑止力となるのではないかと注目が集まっています。
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まとめ
昨年(2023年)は、宝塚や旧ジャニーズといった芸能界のハラスメント問題、ビッグモーターのパワハラ問題など、テレビでパワハラ・セクハラ問題が大きく取り上げた年でした。そのためか、今年はハラスメントに対する問題意識がより一般に浸透し、顧客と従業員や自治体といった生活に根づいた部分にスポットライトが当たり始めたのではないかと思います。
ハラスメントに対する視線がより厳しいものとなりつつある中で、今回したニュースを通して、所属する組織や周囲の労働環境、自身の振る舞いについて振り返るきっかけにしましょう。
今年もVoista Mediaをお読みいただきありがとうございました。
2025年がみなさまにとってよりよい年になりますように、編集部一同お祈り申し上げます。