「ちょっと前から、◯◯さんがよそよそしい」
「なんだか◯◯さんに嫌われているかもしれない」
そんなときは、もしかすると相手の「地雷」を踏んでしまったのかもしれません。意図して悪意のある言葉を投げかけるのは、当然、勧められる行為ではありませんが、そうでなくても無意識に相手を傷つけてしまうことがありえます。
無意識だったから、悪意がなかったからといっても、相手が不快感を抱いたり、相手の尊厳を傷つけたりする言動は「ハラスメント」に該当する可能性があります。
知らず知らずに目の前の誰かを傷つけてしまわないため、また、傷つけられたと感じたときに、必要であれば毅然とした態度をとるために、どのような行為がハラスメントに当たるのかを知っておくことが、とても大切です。
株式会社エージェントのみんなのキャリア相談室が公開した「ハラスメントカオスマップ2021年版」をもとに、[前編]と[後編]に分けて、さまざまなハラスメント用語を紹介しています。
前回の[前編]では、会社などで発生しやすいハラスメントを紹介しました。
本日は[後編]として、ビジネスにもプライベートにも役立つハラスメント知識をご紹介します。
ぜひ新生活に生かしてください。
ハラスメントカオスマップ(2021年版)
まず、ハラスメントカオスマップを確認しておきましょう。
全47項目のうち、知らないものはいくつありますか?
ぜひ探してみてください。
人によっては「これはハラスメントとは感じない」と思う項目があるかもしれません。
また、数の多さに圧倒された人も少なくないと思いますが、ここで大切なのは「知らない用語を確認し、中身を知っておく」ということです。知らなかった用語に目を通して「こういった言動を不快に感じる人がいる」という想像力を養うことが、円滑なコミュニケーションの強い味方になります。
以下、カオスマップにもとづき、
- コミュニケーション
- 飲食
- 環境
- 教育機関
- 医療機関
- SNS
- その他
の7ジャンルの用語を紹介します。
また、各用語に参考となる記事へのリンクを用意しましたので、該当するハラスメントで困っている人もお役立てください。
※「職場」「ライフステージ」「性別・国境・宗教」の3ジャンルについては[前編]をご覧ください。
ハラスメント用語集〜私生活・学校生活編〜
コミュニケーション
コミュニケーションに関するハラスメント用語を5個、解説します。
コミュハラ(コミュニケーションハラスメント)
- コミュニケーションが苦手な相手に対し、場を盛り上げるような発言を強要する
- 大人しい性格の相手に対し、あまり話さないことを揶揄したり嫌味をいったりする
など、コミュニケーションが苦手な相手に、何らかのコミュニケーションを強要し、精神的苦痛を与えることを指します。
また、「もう一度お願いします」「ゆっくり喋っていただけませんか」「メモをとってもよろしいでしょうか」などのお願いに対して、呆れた態度をとったり、能力を疑うような発言をしたりすることも、コミュハラに該当します。
コミュニケーションはあまりに日常的なスキルのため、「自分もできるのだから相手もできて当然」と思い込みやすいのですが、コミュニケーションにも得意不得意は存在します。得意な人ほど、苦手な相手に無意識に圧を与えてしまっているかもしれないので注意しましょう。
参考:ガラパゴスタ「コミュハラ(コミュニケーションハラスメント)は2種類ある」
カラハラ(カラオケハラスメント)
歌いたくないという相手に対し、カラオケで強制的に歌わせ、精神的な苦痛を与えることを指します。
デュエットの強要や、本人の意向を無視して勝手に曲を入れるといった行為もハラスメントに該当します。
参考:Agent みんなのキャリア相談室 【カラオケハラスメントとは】意味・具体例・対策方法・対処法
ペットハラ(ペットハラスメント)
ペットへの嫌がらせや、ペットを通しての嫌がらせを指します。
犬・猫だけではなく、うさぎ・ハムスター・鳥・爬虫類など、ペットとして飼育されているすべての動物が該当します。
ペットへの直接的な嫌がらせは、動物愛護管理法(動物の愛護及び管理に関する法律)で罰せられる可能性があります。
ペットを通しての嫌がらせは、長すぎるリードやリードなしでの散歩、トイレのマナー違反、無駄吠えの放置、野良犬・野良猫へのエサやりなども該当するので注意しましょう。
参考:Agent「みんなのキャリア相談室 【ペットハラスメントとは】意味・具体例・対策方法・対処法」
パーハラ(パーソナルハラスメント)
外見・性格・癖など、個人の特徴をからかうなどで、相手に不快な思いをさせること。
具体的には、外見的特徴や相手が気に入らないあだ名で呼ぶ、出身校や出身地をからかう、普段の行動から「オカマ」「ホモ」「レズ」などとからかうといった行為が該当します。
パーソナルハラスメントは上下関係のない親しい間柄でも発生しやすく、職場や学校だけではなく家庭などでも起こります。
また、自身が尊敬している相手に「髪が薄いですね」などという人はほとんどいないように、パーハラは加害者が自分の優位性を示したい場合に、自分より下だと(無意識にでも)認識してる相手に対して起こりがちです。時に「イジり」として流されてしまいがちですが、放っておくとそのような扱いに乗っかる人が増え、パーハラが拡大化する可能性があります。
不快に感じた場合には、早い段階で「その言い方はやめてほしい」と伝えることが大切です。
参考:Raorsh「パーソナルハラスメントとは?定義・種類・判断基準などを解説」
エアハラ(エアーハラスメント)
自己中心的な言動で場の空気を壊し、その場にいる人に精神的な苦痛を与えること。いわゆるKY(空気が読めない)が発展し、エアーハラスメントと呼ばれるようになりました。
今まで生活してきた環境や文化などが異なれば、感じ方や考え方が異なります。また、単なる性格の問題ではなく、大人の発達障害を抱えている場合もあるため、一概にエアーハラスメントと責めてしまうことにはリスクがあります。
日ごろからコミュニケーションを多くとることで、相手の発言の意図をより深く理解することができます。「エアハラと決めつけない」「エアハラと思われない」ためにも、コミュニケーションを積極的にとることがおすすめです。
参考:Agent「みんなのキャリア相談室 【エアーハラスメント】空気読めないは危険!?意味・事例・対処法・対策」
※ エアコンの温度に関する「エアハラ」は、環境の項目で扱っています。
飲食
飲食に関するハラスメント用語を4個、解説します。
アルハラ(アルコールハラスメント)
飲酒の強要や、飲みの席で行われる迷惑行為を指します。
特定非営利活動法人アスク(アルコール薬物問題全国市民協会)が定める「アルハラの定義」は以下の5項目です。
- 飲酒の強要
- イッキ飲ませ
- 意図的な酔いつぶし
- 飲めない人への配慮を欠くこと
- 酔ったうえでの迷惑行為
過去記事:コロナ禍の忘年会・新年会でも厄介! アルハラの傾向と対策を押さえて、快適な年末年始を
お菓ハラ(お菓子ハラスメント)
お菓子にまつわる嫌がらせを指します。
- 職場やグループなどで、自分だけお菓子が配られない
- お菓子を食べることを強要される
- 嫌いなお菓子を渡される
- お菓子を食べる音がうるさい
- ダイエットを妨害される
などが該当します。
参考:デンブログ「お菓子ハラスメントって何?職場で起こりがちなオカハラパターン8選」
グルハラ(グルメハラスメント)
「◯◯は塩で食べるのが当たり前」
「よくそんなものが食べられるね」
「その食べ方は間違ってる」
など、食事にまつわる強要や揶揄などの嫌がらせを指します。
また、無意識に行われがちな行為として、音を立てて食べる、食事の席で匂いの強い香水をつけてくる、といったものがあります。
参考:Agent みんなのキャリア相談室【グルメハラスメントとは】楽しい時間が台無し!意味・具体例・対策
ヌーハラ(ヌードルハラスメント)
ラーメンや蕎麦をはじめとした麺類をすする音で周りに不快感を与えることを指し丸。
日本では麺類をすすって食べることが伝統的な文化として認められていますが、海外では食事中に音を立てる行為がマナー違反とされる国も多く、不快感を抱く人も少なくありません。
参考:社会人の教科書「ヌードルハラスメントとは?嫌われるヌーハラの正体」
環境
環境に関するハラスメント用語を3個、解説します。
スメハラ(スメルハラスメント)
体臭や口臭など、匂いによって周囲に不快感を抱かせることを指します。本人には自覚がない場合が多く、周りの人も指摘をしにくいのが特徴です。
香水や柔軟剤といった本人にとって「いい香り」の人工的な匂いも、匂いに敏感な人や過剰な使用の場合はスメハラになってしまうことに注意しましょう。あとで解説する「スモハラ(スモークハラスメント)」も、スメハラに当たる場合があります。
当人同士では解決するのが難しい問題ですが、職場などで業務に支障をきたすほどの場合には、上司や会社の人事課に相談するなど、第三者から指摘してもらうのがよいでしょう。
参考:Cheer「体臭、口臭、たばこ、香水など職場のニオイ、どうしてる?ストレスを溜めないスメハラ対策とは?」
エアハラ(エアーハラスメント)
エアコンの使用や温度による嫌がらせを指します。
体格や体質によって、快適に感じる温度は人それぞれです。男女で比較すると、筋肉量が多い男性の方が暑さを感じやすく、筋肉量の少ない女性は寒さを感じやすいといわれています。
体調不良やうつ病につながる可能性もあるため、特にオフィスなどでは、職場環境配慮義務の一環としても対処が必要です。
参考:Jcast 「人によって感じ方が違う」では済まされない! 「エアハラ」って、ご存知ですか?(篠原あかね)
※ 場の空気に関する「エアハラ」は、コミュニケーションの項目で扱っています。
スモハラ(スモークハラスメント)
喫煙者の非喫煙者への喫煙強制、煙を吹きかける、意図的にたばこの煙を嗅がせるといった行為を指します。
喫煙者の服や持ち物に染み付いた匂いも、非喫煙者からすると気になるもので、スモークハラスメントに該当する場合もあります。
受動喫煙で健康を害する可能性もあり、安全衛生法や健康増進法によって企業の受動喫煙対策が義務化されている点に留意しましょう。
参考:弁護士法人キャストグローバル「ハラスメント対策 スモハラ(スモーク・ハラスメント)」
教育機関
教育機関に関するハラスメント用語を2個、解説します。
スクハラ(スクールハラスメント)
学校で起こる嫌がらせの総称(先生から生徒へ、生徒間、教員間で起こったものすべて)です。
- 宿題をしてこなかった生徒を長時間立たせる
- 時間内に給食を食べ終えられなかった生徒に対して、次の授業時間中も食べさせる
- 生理が始まった生徒の体育見学を認めない
- 忘れ物をした生徒のことを一日中無視をする
- 生徒の容姿や出身地を馬鹿にする
など、先生から生徒へ行われるパワーハラスメントやセクシャルハラスメントのケースが多いようです。
公立校の場合は地域の教育委員会などに訴えることが可能です。窓口が設けられていない私立校の場合には、評判を落としたくないという学校側の動機と相まって、問題が闇に葬られがちである一方、親が一定の学費を払って通わせているため、相応の要求はしやすいともいえます。
参考:日本教育新聞「スクールハラスメントの課題と求められている対策」
キャンハラ/アカハラ(キャンパスハラスメント/アカデミックハラスメント)
大学などをはじめ教育機関での力関係を利用し、理不尽な要求を行う嫌がらせを指します。
- 授業、ゼミ、学会など研究活動への参加を妨害する
- 学習や研究をさせず雑用を押し付ける
- 自分の手伝いをしないと卒業させないなどと脅す
- 正当な理由なく就職活動を妨害する。必要な推薦状に応じない
- 命じた作業についてその手順や理由を説明しない
- 理由もなく人前で大声で怒鳴りつける
- 2人きりでの食事やドライブ
など、大学や高等教育機関で行われるパワーハラスメントやセクシャルハラスメントとイメージするとわかりやすいでしょう。
参考:LEGAL MALL「アカデミックハラスメントとは?具体例や訴えるなどの対処法について」
医療機関
医療機関に関するハラスメント用語を2個、解説します。
ドクハラ(ドクターハラスメント)
「病気になったのはあなたの日ごろの行いのせい」
「手術のことなど患者が知る必要はない」
「このまま退院したら、7、8ヶ月で死ぬ」
など、医師による患者への暴言や嫌がらせを指します。
もしドクハラかなと思ったら、治療に専念し、病気やケガを早く治すためにも、病院の相談窓口や地域の医療安全支援センターに相談をしてみましょう。
参考:LEGAL MALL「ドクターハラスメントとは?対策のポイントを弁護士が解説」
ペイハラ(ペイシェントハラスメント)
ドクターハラスメントの逆で、患者から医師や医療従事者、病院への暴言や暴行といった嫌がらせを指します。
2021年に大阪のクリニックで25人が犠牲になった放火殺人や、2022年初頭に埼玉県での医師を人質とした立てこもり事件など、病院と患者間での深刻な事件が起こっています。
「医師は診療を求められた際、正当な理由なく拒否できない(応召義務)」が定められていますが、「患者の命に関わる場合を除き、医療従事者らの命や精神を脅かしたり、業務妨害したりする明確なペイハラは、診療拒否の理由となり、脅迫や威力業務妨害の罪に問われることもある」という弁護士の見解もあります。
参考:東京新聞「ペイシェントハラスメント もう我慢しない 患者や家族から医師らへの暴力、暴言」
SNS
SNSに関するハラスメント用語を2個、解説します。
近年大幅に増えているハラスメントですので、特に注意しましょう。
ソーハラ(ソーシャルメディアハラスメント)
LINE・Twitter・Instagram・Facebookなどをはじめとした各種SNSを利用した嫌がらせを指します。
SNSのフォローやコメントなどのリアクションを強要したり、SNS上のプライベートな情報を、会社や公の場でばらす、写真や動画の無断投稿、SNSストーカーなどが該当します。
もちろん、SNSを通して悪質なメッセージやコメントを送ることもハラスメントに該当します。
参考:あしたの人事「ソーハラ(ソーシャルメディア・ハラスメント)とは?具体例と取るべき対策」
フォトハラ(フォトハラスメント)
無断で他者を写真や動画で撮影したり、撮影した写真や動画を許可なく公開することにより、相手に精神的苦痛を与えることを指します。
スマホで撮影した写真には位置情報を付与できるため、位置情報つきの写真が公開された場合、「いつ、どこに、誰といたのか」「どこに住んでいるのか」などが第三者に特定されてしまう恐れがあります。
また、無断で公開された写真が、アダルトサイトや出会い系サイトなどに転用されてしまうといった事件も起きているため、写真の取り扱いには十分注意しましょう。
参考:社会人の教科書「フォトハラとは?フォトハラスメントは罪になる?」
その他
その他のハラスメント用語を2個、解説します。
ハラハラ(ハラスメントハラスメン)
他社の言動に対し「ハラスメントだ」と過剰に主張することによる嫌がらせを指します。
たしかに、何でもハラスメントといわれてしまうご時世には疑問があります。一方、ハラスメントという言葉を使うかどうかに関わらず、冒頭で書いたとおり「こういった言動を不快に感じる人がいる」という想像力を養うことが肝要です。
参考:en 人事の味方「ハラスメント・ハラスメント(ハラハラ)とはなんですか?」
セカハラ(セカンドハラスメント)
「あなたが誘惑をしたのではないか」
「辛くても私は耐えた」
「お金が目的なのではないか」
「相手は悪気があったわけじゃない」
など、ハラスメントを受けた人が被害について相談したにもかかわらず、バッシングや嫌がらせを受けるなど次なるハラスメントにつながることを指します。
まとめ
以上、[後編]では計20個のハラスメントを解説しました。
今回は私生活や学校生活の中で起こりやすいハラスメントを紹介しました。
ご紹介したハラスメントの中でも「この話題は自分もいやだな」「そういわれても自分は気にしない」など、さまざまな感想があったのではないでしょうか?
あなたがそう感じたように、別の方はあなたとは別の点で気にしたり気にしなかったりするでしょう。「このような話題が、誰かを不快にするかも」と知っておくだけでも、適切な話題選びや、相手の異変に気づきやすくなるはずです。
また、もしあなたの尊厳が傷つけられるようなことがあった場合には、「自分が気にしすぎている」と蓋をするのではなく、相手にはっきりと伝えたり、周囲の方に相談したりしてよいのです。
現在、継続的なハラスメントで悩んでいる人や、「これってハラスメント?」と感じている人は、ボイスレコーダー(録音アプリなど)を活用してみるとよいでしょう。第三者への相談の際に録音データを役立てる、いざというときの証拠にできるなど、心強い味方になります。
過去記事:パワハラにはボイスレコーダーを盾に対抗。経験者がパワハラの証拠集めに有効な録音方法を教えます
過去記事:Google カレンダーと連携して録音! 音声データが探しやすい「Voistand」がおすすめ
まだ[前編]を読んでいない方はこちら
過去記事:【新入社員必見】いくつ知ってる? 最新◯◯ハラスメント用語[前編]