Voista Mediaでもたびたび取り上げているカスタマーハラスメント(カスハラ)問題。
東京都の小池百合子知事は、2月20日に開会した都議会定例会の施政方針演説で、客から従業員への暴言や不当な要求などの迷惑行為「カスタマーハラスメント」の防止に向けた条例を制定する方針を明らかにしました。
小池知事は「カスハラは都内の企業でも深刻化している。東京ならではのルール作りが強く求められている」とし、定例会後、記者団に対して「どの分野でも人が足りない中でいろいろな対応を迫られている。早期に対応したい」と年内の都議会への条例案提出を目指すと述べました。
どのようなカスハラ防止条例になるのか?
カスハラ対策に関して、都は昨年10月に、有識者による検討部会を設置(メンバーは経済団体や労働組合の代表者、大学教授、都幹部など)。今年2月6日の部会では、経済団体から「事業だけでなく従業員の心身の健康に影響」「事業継続の意味でも必要」などの意見が出され、
- 都独自の条例化が有効
- 罰則のない理念型の条例が適当
- ガイドラインにより実効性を高めることが必要
とすることで一致したとのことです。
ご存知のとおり、カスハラは接客業で広く問題化しており、タクシーやバス運転手が名札義務化をやめるなどの動きがあります。また、コンビニでの店員に対する長時間にわたる暴言や土下座の強要、飲食店での料理に対する説教、閉店時間を超える居座り、備品の持ち去り、悪意のあるドタキャンなどなど。
回転寿司チェーンでは、若者が醤油差しや湯呑みを舐めたり、他の客が注文したお寿司の皿に大量のワサビを乗せた動画をSNSに投稿し、テレビが大きく取り上げ、結果的に裁判沙汰になるなど、大きな社会問題にもなりました。
このような状況を受け、東京都が全国に先駆けてカスハラ防止条例の制定に向けて取り組むのは、大いに意義のあることだと考えます。
Voista Mediaで取り上げてきたカスハラ問題
Voista Mediaでは、カスハラ事例や実態調査などを幅広く取り上げてきました。
興味のある記事をお読みいただき、カスハラをあらためて考えるきっかけにしてください。
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まとめ
以上、東京都によるカスハラ防止条例制定の動きを、速報的にお伝えしました。
これは都内で起こったことではありませんが、つい先日、札幌市のコンビニで3人が死傷するという痛ましい事件が起こりました。逮捕されたのは43歳(無職)の男性。強い殺意があったことは認めていますが、怨恨などではなく、通り魔的な犯行だったとされています。
このように、接客業には時に命まで奪われかねないリスクがあります。
従業員やスタッフの働く意欲やメンタルヘルスの面でも、カスタマーハラスメントに対する体制整備は、企業・法人にとって急務です。働く人びとを悪質なカスハラから守るためにも、今後も東京都のカスハラ防止条例の動向に注目しておきましょう。