ホーム ハラスメント 名札の表記見直し企業が続々……SNS時代のカスハラ対策事例と今後の動き

名札の表記見直し企業が続々……SNS時代のカスハラ対策事例と今後の動き

この記事のサマリー

  • カスハラや顧客のストーカー化防止の観点で個人を守る企業が増えている
  • 名札の表記を苗字のみやビジネスネームなどに変更する企業も
  • 大手企業はカスハラに対してウェブサイトで方針を打ち出す企業も
  • カスハラの放置は離職や休職につながる懸念
  • 政府によるカスハラ対策義務化の動きもありそう

目次

2024年10月4日、東京都で全国初のカスハラ防止条例が可決され、2025年4月から施行されることとなりました。

お隣の神奈川県では、県庁での2023年のカスハラ事案は2,300件、対応時間は6,300時間にも及んでいたという発表もあり、理不尽な要求を行う「カスタマーハラスメント(通称カスハラ)」が社会問題となっています。

東京都をはじめ、各自治体がカスハラ防止条例などの制定する中、民間企業でもカスハラへの取り組みを始めている企業が多数あります。

特にSNSでの口コミが企業の評価を左右するようになりつつある昨今では、問題を抱えた顧客に対して真摯に対応できる企業やサービス、店舗は、「安全性の高い企業」「安心できるサービス」「居心地のよい店舗」として、求職者や従業員だけではなく消費者からも高く評価される傾向もあるようです。

 名札表記変更やビジネスネーム導入を決めた企業

以前、2023年からバス・タクシーなどの乗務員等の氏名表示の義務が廃止され、京王バスをはじめタクシーやトラック運転手など運送業を中心にビジネスネームの導入が広まりつつあることを紹介しました。

名札を通じたフルネームの公表は、カスタマーハラスメントでの個人攻撃を防止するほか、Instagram、Twitter、FacebookなどのSNSで個人情報を探られるなど、ストーカー行為や迷惑行為の危険性から従業員を守るという側面もあるようです。

名札の見直しを公表している企業(一部)

企業名 対応時期 対応内容
セブンイレブン 2022年7月〜 名札をひらがなで名字のみに
タリーズコーヒー 2023年5月〜 名札をイニシャル表記に
レシートに記載されていた名前を社員番号に
ファミリーマート 2024年5月〜 名札の氏名をひらがな・カタカナ表記にする、苗字・名前のみの表記、ビジネスネームなどスタッフが選ぶことが可能に
ローソン
※店舗の判断による
2024年6月〜 名札をイニシャル表記に
エア・ドゥ 2024年8月〜 名札の廃止

ウェブサイトなどでカスハラに対する方針を示している企業

大企業が中心ですが、ウェブサイトなどを通して方針を打ち出している企業もあります。

人手不足が大きな課題となっている今、カスハラが理由で辞めてしまう、つまり働き手が奪われてしまうことは大きな損失です。また、求職者にとってもカスハラは身近な問題であり、対応方針がしっかりと示されているかは応募意欲にも影響を与えることがあるでしょう。

カスハラに対する方針を打ち出している企業(一部)

企業 業種 リンク

日本電信電話株式会社(NTT)

通信事業 NTTグループ カスタマーハラスメントに対する基本方針

株式会社松屋フーズホールディングス

飲食事業 カスタマーハラスメントに対する方針

株式会社髙島屋

百貨店事業 カスタマーハラスメントに対する基本方針(PDF)

株式会社ツルハホールディングス

ドラッグストア事業など カスタマーハラスメントに対する基本方針

株式会社アシックス

各種スポーツ用品等の製造および販売 カスタマーハラスメントに対する基本方針

アオキスーパー

小売業 カスタマーハラスメントに対する基本方針

都内企業の7割は「未対応」、被害は「宿泊業・飲食店」が多い

2024年8月に東京商工リサーチが行った「都内の企業にカスハラに関する調査」では、回答のあった1172社のうち約7割にあたる822社が「特に対策は講じていない」回答したようです。

カスハラを受けたことがある企業は約2割(19.1%)で、業種別では「宿泊業72.0%(25社中18社)」、「飲食店64.8%(37社中24社)」が上位という結果だったようです。

厚生労働省は「顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)に関して、事業主は、相談に応じ、適切に対応するための体制の整備や被害者への配慮の取組を行うことが望ましい」としており(「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」より)、企業側が何も対策をしないと安全配慮義務違反となる(違反した場合には損害賠償請求に応じなくてはならない)可能性があるようです。

また、カスハラ対策を義務化するといった政府の動きもあるようで、今後は全ての企業においてカスハラ対策が急務となりそうです。

カスハラによる従業員の「休職・退職」リスク

2023年には、労災の認定基準の原因としてカスタマーハラスメントに関する項目が盛り込まれました。

昨今のカスハラで多い被害は「攻撃的・威圧的な口調」「長時間(期間)にわたる対応」「怒鳴りつけられる」「過度な謝罪の要求」「人格否定」といったものが多いほか、「暴力を振るわれる」「録音・録画」などもあるようです。

度が過ぎれば侮辱罪暴行罪業務妨害罪強要罪などの犯罪に当たるカスハラは、従業員にとって大きなストレスになることは違いありません。前述の東京商工リサーチが行った「都内の企業にカスハラに関する調査」でも、「カスハラ」を受けたことがある企業のうち13.5%の企業で、従業員の休職や退職が発生しているようです。

まとめ

人手不足が加速している中小企業では、ゼロベースから対応を検討するのはとても大変なことだと思います。もしまだ未対応という企業の方は、近い業種の対応例を参考に対策を進めてみてはいかがでしょうか?

厚生労働省の「あかるい職場応援団」というサイトでは、対策企業事例などがまとめられているのでおすすめです。また、Voista Mediaでも「過去記事」でカスハラに関するさまざまな情報を紹介しています。

悪質なカスハラから働き手や組織を守るため、ぜひとも参考にしてみてくださいね。

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